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著者・編者 | 篠月しのぶ=著 |
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出版情報 | KADOKAWA |
出版年月 | 2018年9月発行 |
統一暦1927年7月25日、帝都ベルン滞在中の ターニャ・フォン・デグレチャフ
中佐は帝国の勝利は不可能であり、真剣に転職(亡命)を考えていた。
クルト・フォン・ルーデルドルフ
中将は ターニャ
に封緘書類を持たせ、東部戦線にある ハンス・フォン・ゼートゥーア
中将に届けさせた。
ゼートゥーア
中将は奇策をもって東部戦線での巻き返しをはかるべく、 ターニャ
と ヴィクトーリヤ・イヴァーノヴナ・セレブリャコーフ
中尉に威力偵察を命じる。これを、多国籍義勇軍の ドレイク
中佐と ミケル
大佐が迎え撃つが、父親の敵である ターニャ
に憎悪を燃やす メアリー・スー
中尉が、膨大な魔力を発揮し、見方を誤爆。ドレイク中佐も重傷を負い、 ゼートゥーア
中将の作戦が発動する。
西方戦線の転属となった ターニャ
は、 ロメール
少将から海軍と共同で連合王国本土を強襲する作戦を告げられる。 ターニャ
は、帝国海軍の貧弱な海軍力に加え、制空権もない状況での強襲などあり得ないと抗議するが、 ロメール
少将は聞く耳を持たない。 ターニャ
は心の中で、「頭がどうかしている。戦国有数の頭がどうかしている系で特筆すべき島津ですら、防御は自らの勢力圏でやっているぞ」(164ページ)と叫んだ。
ロメール
少将の強襲作戦の裁可をもらうため帝都ベルンに戻った ターニャ
は、 レルゲン
大佐と外務省の コンラート
参事官の面談を受け、帝国が勝てないことを力説し、講和を求める。だが、 レルゲン
大佐は、「統一された見解などなし。この一点のみで、参謀本部も、最高統帥会議も、政府も、全てが一致していましょうな」(232ページ)と語った。コンラート参事官は、「理屈ではないのだ、中佐。なにしろ、ライヒの問題だ。我らがライヒは、敗北を知らん」(240ページ)とため息を漏らす。
統一暦1927年8月17日、 ロメール
少将の強襲作戦が発動し、第二〇三航空魔導大隊は連合王国本土へ向かって発進した。だが、そこにはドレイク中佐が率いるベテラン魔導師部隊が待ち構えていた。帝国の暗号通信は連合王国に対して筒抜けだったのだ。
強襲作戦に失敗した ターニャ
ら第二〇三航空魔導大隊は、西方占領地帯で休暇を満喫することにした。
一方、 ルーデルドルフ
中将は レルゲン
大佐を呼び出し、イルドア王国に攻撃を加える「予備計画」を検討していた。
いよいよ転職(亡命)を真剣に考えるようになった ターニャ
であるが、その中の人は人事が専門のビジネスマンである。
ゼートゥーア少将のOJTを「ブラック企業が『やりがい』を教え込むようなことじゃないか」(95ページ)とこき下ろし、ロメール少将の無茶な強襲作戦を「頭がどうかしている。戦国有数の頭がどうかしている系で特筆すべき島津ですら、防御は自らの勢力圏でやっているぞ!」(164ページ)と一蹴。最高統帥府と参謀本部が目指す目標がバラバラになっている現状に対し、「ブラック企業は、やる気と現状を打破し得るイノベーションを徹底して求めるが、そもそも論としてイノベーションを解決策として求める時点で敗北している。イノベーションとは、掛け声で完成などしない。反対に、自由と創造性を最大限に活用するものだ」(168ページ)と批判する。
ターニャ
は、すべてを経済活動として冷徹に見ようとするが、だがしかし、帝国が敗北すれば「己のキャリアも、勤労も、サービス残業も、超過労働も、全て『無価値』となってしまう」(243ページ)のも、また厳然たる事実であった。私たちサラリーマンも、企業が倒産する前の絶妙なタイミングで転職しなければ、こうなってしまうだろう。
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