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著者・編者 | 篠月しのぶ=著 |
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出版情報 | KADOKAWA |
出版年月 | 2023年8月発行 |
統一暦1928年1月15日、参謀本部の ハンス・フォン・ゼートゥーア 大将は、世界を相手に勝てると確信し、気分爽快であった。一方、東部の最前線の塹壕にいる ターニャ・フォン・デグレチャフ 中佐は「 戦争なんて、大嫌いだ 」と心の叫びを上げていた。
1月1日、宮中の新年行司に参列した ゼートゥーア 大将と コンラート 参事官は、表情にこそ出さないものの、周囲から見られていることを意識し、心に余裕がある振りをして回っていた。 ゼートゥーア 大将は傍にあったナプキン紙に「 黎明は近い。されど、払暁あり 」と書いて コンラート 参事官に渡した。このメモが、後世の歴史研究家たちを驚かせることになるとは知るよしもない。
新年行司から帰還した ゼートゥーア
大将、 ターニャ
に「 私ある限り、帝国はまず負けんよ。共産主義者に、イデオロギーを超越する現実があることを、また、教えてやる
」と語る。
ところが、 エーリッヒ・フォン・レルゲン
大佐と マクシミリアン・ヨハン・フォン・ウーガ
大佐は口を揃えて ゼートゥーア
閣下が怖くなくなったと語る。 ターニャ
はその真意を測りかねていたが、2人の大佐の口ぶりから、帝国は、組織の失敗を ゼートゥーア
大将という有能な管理職によって一時的にカバーできてしまい、常にB案が軽んじられてきたことに気付く。これまで ターニャ
が参戦した回転ドア、鉄槌、アンドロメダ作戦のいずれにおいても、プランBの用意が手薄だった。
一方、連邦のモスコーにある最高司令部では、誰の敵意も買わない物腰と手堅い手腕で宿将となった クトゥズ
大将が、帝国への反攻作戦「 黎明
」として2案を提示した。
ターニャ
が率いる サラマンダー戦闘団
は、東部前線へ戻ったが、そこに連邦軍の姿はなく、副官の ヴィクトーリヤ・イヴァーノヴナ・セレブリャコーフ
中尉とともに威力偵察に出るが、練度の低い魔導師に会敵しただけだった。とはいえ、 サラマンダー戦闘団
も要員不足に加え、整備も不十分な状態だった。そんななか、連邦から魔導反応を垂れ流す機械化部隊が接近しているとの報告がもたらされた。これこそ、クトゥズ大将が練りに練った革命的な拠点攻略戦術であった。
1月9日、 レルゲン
大佐は ターニャ
に、皇帝陛下の末娘で、たいへん真面目に軍務をこなす第二十三親衛近衛連隊の連隊長ある アレクサンドラ
皇女殿下(大佐)が東部戦線を視察に来ると告げる。 ターニャ
は視察を断る理由として東部戦線が危険である証拠をつかもうと部下を偵察に飛ばすが、何もない。そこで、1月13日に自らが ヴォーレン・グランツ
中尉をペアに指名し長距離偵察に出たところ、連邦が大規模な補給路を築いていることを発見。急いで サラマンダー戦闘団
駐屯地へ帰還するが、時すでに遅し。連邦の戦略攻勢「 黎明
」がはじまった。東部方面軍の ヨハン・フォン・ラウドン
大将は生死不明。司令部はパニック状態に陥った。
ターニャ
は頭の中であらゆるケースを検討した結果、可及的速やかに戦略的撤退しなければ帝国軍は全滅すると判断。しかし東部方面軍への命令権が無い ターニャ
は、記憶を辿って軍規違反にならないことを確認したうえで、 ゼートゥーア
大将が東部戦線にいたときに残していた暗号を流用し、独断専行で東部方面軍に撤退命令を発する。 ターニャ
は笑う。「 我々で。帝国を救うぞ。絶望するにはまだ早い。息がある限り。希望もある!
」
3年半ぶりの新刊――。
帝国軍は、その攻勢作戦において、常にプランBを実行に移す余力がなかった。現代ビジネスマンである ターニャ
にとって、これはあり得ないことであろう。新規事業計画でプランBを用意しない企業は、まず間違いなくブラックであるのだから。
一方、連邦で粛正もされこともなく無難に宿将を務めている クトゥズ
大将は、黎明作戦に対してハイリスク・ハイリターンのA案とローリスク・ローリターンのB案の2案を提案する。共産主義者が皮肉にも、合理的・組織的な解答を出していくるのが13巻・14巻のバックボーンとなっており、当然、 ターニャ
たち帝国軍は今までにない危機に見舞われる。
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