Bar UK Official HP & Blog(酒とPianoとエトセトラ)since 2004.11.

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2017/06/25
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 56.ミリオネア(Millionaire)


【レシピ1】 バーボン(またはライ)・ウイスキー(60)、ホワイト(またはオレンジ)・キュラソー2dash、グレナディン・シロップ4dash、卵白(1個分)
【レシピ2】 ラム(15)、スロー・ジン(15)、アプリコット・ブランデー(15)、ライム・ジュース(15)、グレナディン・シロップ1dash
【レシピ3】 ジン(40)、ペルノー(またはアブサン)(20)、アニゼット1dash、卵白(1個分)

 20世紀初め(1900~1910年代)に、英国で誕生したと伝わる代表的な古典的なカクテルの一つです。カクテル名は直訳すれば、「百万長者」というめでたい名前ですが、誕生の詳しい経緯や命名の由来は、残念ながら定かではありません。

 欧米のカクテルブックで「ミリオネア」が紹介されたのは、現時点で確認できた限りでは、英国で1919年に出版された古典的名著「ABC of Mixing Cocktails」(ハリー・マッケルホーン<Harry MacElhone>著)が最初です。そのレシピはウイスキー・ベースで、「ライ・ウイスキー3分の2、卵白1個分、グレナディン・シロップ1tsp、オレンジ・キュラソー2dash(シェイク)」となっています。

 誕生の時期については、米国の禁酒法時代<1920~33>と紹介する海外の専門サイトもいくつか見受けられますが、上記の「ABC of …」に掲載されていることからも、少なくとも1910年代後半には登場していたことは間違いありません。また誕生の場所については、「ロンドンのリッツ・ホテルのバーで考案された」とも言われていますが、裏付ける史料等は伝わっていません。

 著名なカクテル研究家のデヴィッド・ワンドリッチ氏は「1925年までのある時期に(ロンドンの)リッツ・ホテルで考案された」(出典:http://www.esquire.com/food-drink/drinks/recipes/a3759/millionaire-drink-recipe/)と書いています。しかし、マッケルホーン自身が「ABC of …」の中で「ロンドンのリッツ・ホテルのバーのレシピを参考にした」と付記していることからも、少なくとも1910年代後半には、この同ホテルでウイスキー・ベースの「ミリオネア」が提供されていたことは間違いないでしょう。

 さて、この「ミリオネア」は、1920~30年代から、ウイスキー・ベース以外にも、ラム・ベースや、ジン・ベースなど複数の違うベースのレシピが存在してきた変わったカクテルとしても知られています。同じ名前のカクテルなのに、なぜこのように様々なベースを使ったバリエーションが生まれていったのかはよく分かりません(今後の研究課題です)。

 参考までに、「ABC Of …」以外の1920~1950年代の主なカクテルブックで「ミリオネア」のレシピがどうなっているか、ざっと見ておきましょう。

・「Cocktails: How To Mix Them」(Robert Vermeire著、1922年刊)英
 ライ・ウイスキー3分の1ジル(【注】1ジル=120ml)、グレナディン・シロップ6分の1ジル、キュラソー2dash、卵白1個分(シェイク)

・「The Savoy Cocktail Book」(Harry Craddock著、1930年刊)英(ラム・ベース、ジン・ベースの2種を紹介。ウイスキー・ベースのものは収録せず)
 ミリオネアNO.1=ジャマイカ・ラム3分の1、アプリコット・ブランデー3分の1、スロー・ジン3分の1、グレナディン・シロップ1dash、ライム・ジュース1個分(シェイク)
 ミリオネアNO.2=ドライジン3分の2、アブサン3分の1、アニゼット1dash、卵白1個分(シェイク)

・「Cocktails」(Jimmy of the Ciro's Club著、1930年刊)米
 ライ・ウイスキー3分の2、グレナディン・シロップ3分の1、キュラソー2dash、卵白1個分(シェイク)

・「World Drinks and How To Mix Them」(William Boothby著、1934年復刻版)米(ベースの違う「ミリオネア」3種と、「ミリオネア・ロイヤル」と称するカクテルを紹介。スタイルはいずれもシェイク)
 ミリオネアNO.1=ウイスキー2分の1ジガー、グレナディン・シロップ4分の1ジガー、キュラソー2dash、卵白半個分
 ミリオネアNO.2=ジン2分の1ジガー、アブサン4分の1ジガー、アニゼット1dash、卵白半個分
 ミリオネアNO.3=ラム3分の1、アプリコット・ブランデー3分の1、スロー・ジン3分の1、グレナディン・シロップ1dash、レモン・ジュース1tsp
 ミリオネア・ロイヤル=ウイスキー2分の1ジガー、グレナディン・シロップ4分の1ジガー、アブサン2dash、キュラソー1dash、卵白半個分

・「The Artistry of Mixing Drinks」(Frank Meier著、1934年刊)仏
 ライ・ウイスキー2分の1、ペルノー(アブサン)1dash、グレナディン・シロップ1dash、卵白半個分(シェイク)

・「Mr Boston Bartender's Guide」(1935年初版刊)米
 ライ(またはバーボン)・ウイスキー45ml、キュラソー15ml、グレナディン・シロップ4分の1tsp、卵白1個分(シェイク)

・「The Waldorf-Astoria Bar Book」(A. S. Crockett著、1935年刊)米(※「マティーニ」のバリエーションとして紹介している珍しい例)
 ジン3分の2、ドライ・ベルモット3分の1、グレナディン・シロップ on Top、レモン・ピール(ステア)

・「The Café Royal Cocktail Book」(W. J. Tarling著、1937年刊)英
 ジャマイカ・ラム3分の1、アプリコット・ブランデー3分の1、スロー・ジン3分の1、グレナディン・シロップ1dash、ライム・ジュース1個分(シェイク)

・「The Stork Club Bar Book」(Lucius Beebe著、1946年刊)米(スロー・ジンをベースとする珍しいレシピ)
 スロー・ジン約53ml(1+4分の3オンス)、ジャマイカ・ラム15ml、アプリコット・ブランデー15ml、グレナディン・シロップ1dash(シェイク)

・「Trader Vic's Bartender's Guide」(Victor Bergeron著、1947年刊)米(※なんと6種類もの「ミリオネア」を収録。スタイルはいずれもシェイク)
 ミリオネアNO.1=バーボン・ウイスキー4分の3オンス、グレナディン・シロップ4分の1オンス、キュラソー2dash、卵白1個分
 ミリオネアNO.2=バーボン・ウイスキー1オンス、ペルノー4分の1オンス、グレナディン・シロップ4分の1オンス、キュラソー1dash、卵白1個分
 ミリオネアNO.3=ジン1オンス、ペルノー(アブサン)0.5オンス、アニゼット1dash、卵白1個分
 ミリオネアNO.4=プリマス・ジン1オンス、スイート・ベルモット0.5オンス、グレナディン・シロップ1tsp、パイナップル・ジュース1tsp、卵白1個分
 ミリオネアNO.5=ジャマイカ・ラム0.5オンス、アプリコット・ブランデー0.5オンス、スロー・ジン0.5オンス、グレナディン・シロップ1dash、ライム・ジュース1個分
 ミリオネアNO.6=スロー・ジン1.5オンス、ジャマイカ・ラム0.5オンス、アプリコット・ブランデー0.5オンス、グレナディン・シロップ1dash

・「The Official Mixer's Manual」(Patrick Gavin Duffy著、1948年刊)米(スタイルはいずれもシェイク)
 ミリオネアNO.1=ジン3分の2、ペルノー(アブサン)3分の1、アニゼット1dash、卵白1個分
 ミリオネアNO.2=ジャマイカ・ラム3分の1、アプリコット・ブランデー3分の1、スロー・ジン3分の1、グレナディン・シロップ1dash、ライム・ジュース1個分
 ミリオネアNO.3=バーボン・ウイスキー1ジガー、キュラソー3分の1ジガー、グレナディン・シロップ1dash、卵白1個分

・「Esquire Drink Book」(Frederic Birmingham著、1956年刊)米
 ウイスキー1.5オンス、キュラソー0.5オンス、グレナディン・シロップ1dash、卵白1個分(シェイク)

 以上のように欧米では歴史的に、「ミリオネア」のベースのお酒はウイスキー・ベース、ラム・ベース、ジン・ベース他のものが乱立してきました。現在、英国や米国で発行されているカクテルブックのみならず、バーの現場でも「ミリオネア」と言えば、この主な3種類をベースにしたものがそれぞれつくられています。

 これも参考までに、グーグルで「Millionaire Cocktail」で検索し1頁目に表示された10件の欧米の専門サイトでは、7件がウイスキー・ベース、3件がラム・ベースでした。しかしカクテルブック等では、今なおジン・ベースのミリオネアも紹介されています。結局のところ、どれが正しく、どれが間違いというものではなく、どのお酒をベースにするかは、そのバーテンダーやお客様の好みによるところが大きいのかもしれません。

 「ミリオネア」は、日本にも比較的早く1920年代には伝わりました。当初はウイスキー・ベースの方が主流でしたが、現在のバー・シーンでは、ラム・ベースの方が比較的多くつくられているようです。

 ちなみに、最新の「NBAオフィシャル・カクテルブック」(柴田書店刊)ではラム・ベースをメインとして紹介していますが、ウイスキー・ベースのものも「主に米国で飲まれている」との付記して収録しています。

【確認できる日本初出資料】 「コクテール」(前田米吉著、1924年刊)。※レシピはウイスキー・ベースで、「ウイスキー3分の2オンス、グレナディン・シロップ3分の1オンス、キュラソー1dash、ガム・シロップ2dash、卵白1個分。シェイクしたる後、グラスに注ぎ、アブサン少々を加えてすすめる」となっています。



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kopn0822 @ 1929年当時のカポネの年収 (1929年当時) 1ドル=2.5円 10ドル=25円 10…
汪(ワン) @ Re:Bar UK写真日記(74)/3月16日(金)(03/16) お久しぶりです。 お身体は引き続き大切に…

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