I love Salzburg

I love Salzburg

2010.03.10
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その一声に顔を上げると、そこには 私と同年代であろうドイツ人カップルの姿がありました。

「こんばんは。はじめまして。^^」
この方達と今宵、私はジルベスターを共にするのです。

*

オペレッタ『こうもり』は、
ヨハン・シュトラウス2世の代表作であるとともに、数あるウィンナー・オペレッタの中でも最高峰とされる作品です。
オペレッタは基本的に喜劇であり、またヨハン・シュトラウスの優雅なウィンナー・ワルツがその陽気さに一層の彩りを添えてくれます。

通常は、3幕からなる2時間半の上演なのだそうですが、


それが一般庶民には少し敷居の高いオペラとは違う、「小さなオペラ」の意味を持つオペレッタの特徴でもあるのですって。


さて、その『こうもり』ですけど、

物語の舞台が大晦日の夜ということで、ウィーンをはじめドイツ語圏の主な歌劇場では大晦日恒例の出し物になっているとのこと。

まして幕中では、登場人物の一人である男爵夫人が仮面を被ってハンガリー伯爵夫人に扮したり、ハンガリー民族舞踊のチャールダーシュまで歌われるのですから、
まさにブダペストのジルベスターにぴったりの演目でした。


「ちゃんと楽しんでるかい?」
時々、隣りのボックスからおじさまが顔を出し、私の様子を窺います。

というのも、こんな夢のような舞台は初めての私ですから、舞台上の喜劇なんて そっちのけだったのです。(笑)

ただただ その豪華絢爛な内装に目を奪われ、
いえ、この貴重なオペラ座での時間をしっかり頭に刷り込もうと、何度も頭をもたげては辺りを見回していたのです。


それでも 言葉は分からなくとも、笑う場面くらいは分かります。^^


「ちゃんと楽しんでるみたいだね。^^」

ええ、おじさまもとても嬉しそうだから、私も本当に幸せだわ!(*^^*)


*

オペラ座内がわっと沸いたところで、『こうもり』は終了。

上演時間はわずか1時間15分と短縮されておりましたが、今宵はなんといってもジルベスターなのですから、そんな 堅っ苦しいことは抜きですよね。^^


ステージ上には多くのテーブルが並べられ、カチャカチャと食器を並べる音が聞こえてきました。


「マダム、、、3人ともこちらでお食事されますね。^^」
蝶ネクタイをしたウェイターさんが、ボックス席にも ディナーの準備にやって来ました。

ステージ上は平土間席の観客用、各ボックスにはそれぞれタキシード姿の給仕が配置されているのです。

「ええ、後の二人ももうすぐ戻ってくるはずよ。」

2010-03-08 18:36:13

小さなテーブルに、前菜が並べられます。

魚のマリネにオレンジとフェンネルで味付けされたサラダ、そして松の実でコーティングされた鹿の肉..etc。


「さぁ、私達も戴きましょう。」 

ベルリンからやって来たという その二人は、この夏にワイマールで結婚したばかりの新婚さんだと話し始めました。

あら、、、私ったらお邪魔虫ね。(実際、本当にお邪魔だったに違いありません。(^^;)
そんな私の表情をとっさにくみ取った その若奥さまは、
「付き合い出してからは、もう7年になるんだけどね。」ですって。^^

「あぁ、自己紹介がまだだったよねぇ。 僕はベルリンの大学で講師をしている○○だよ。」
すでにシャンパンでほろ酔い気分の私は、その若いご主人の名前を聞き洩らしてしまいました。

「こちらが妻のリサ。」
「はじめまして。 私、picchukoと申します。」

「日本の方なのね。 あら、私、中国語なら少しだけ勉強しているのに残念だわ。」
「じゃぁ、せっかくだから ニイハオということで。(笑)」


ステージの前方では、生演奏とともに様々な種類のダンスが披露され始めました。
(ステージ後方はボックス席以外の観客が食事を楽しんでいます。)

ワルツあり、タンゴもあり、次から次へと踊り手が変わります。


私は前菜を口にしながら、そのかなり手の込んだ独特の味付けに舌が慣れてくれず、
半ば水で流しこむように胃の中へと押し込みました。

「ねぇ、picchuko、、知ってた?」 「ん?」
「今日ね、私達 セーチェニ温泉に行ったんだけど、、、」 「セーチェニ温泉?」
「ほら、お風呂の中でチェスをするのが有名な!」

「その温泉の近くに、高級レストランの『グンデル』があって、そこでランチを取ったの。
それがとても美味しかったのよ~。^^

そしてね、picchuko、、、この晩餐もそのグンデルのものなのよ♪」


「グッ、、、!!!」 私は今 飲み込んだばかりの その料理を、喉に詰まらせそうになりました。

『グンデル~~~☆ w(◎◎)w』 
それはハンガリー一の、いや欧州でも名の通った超一流レストランではないですか!?

「ね、ナプキンにだってGUNDELって書いてあるでしょ!^^」 とニコニコ顔のリサ。


絶対に縁がないと思っていたグンデルの料理が、知らぬ間に目の前に並べられ、しかも゛美味しくない!"と感じた私の舌って、、、、。(><)

しかし、味覚とは 非常に奇にして妙なもの!
グンデルと知って、その後に出てきたメインディッシュのステーキの柔らかで美味しいことといったら、
デザートのチョコレートケーキの頬がゆるみっぱなしの美味しさといったら、、、

わぁ~、これが有名なグンデルの料理なのねぇ~、さすがだわ~。(^^ゞ)


ただし、極々庶民の私が最も美味しく感じられたものは、何を隠そう「マッシュポテト」なのでした。
ここだけの内緒話(?)、料理全般を絶賛し通しのリサもそうだったみたいです。(爆)


順調に食事と会話が進む中、私はふと気が付きました。
出逢って間もない彼らに対して、どうしてこんなにも親しみが持てるのかということを。。。

それは、彼らが私に声を掛ける度に、必ず「picchuko!」という呼び掛けから始まっていたことだと気付きました。

そういえば、これまで海外で出会った人達は、どの人も私の名前を何度も何度も口にしてくれたように思います。

親しみを込めて相手の名前を呼ぶ、、、
あまりにも簡単なことなのに、私はこれまで「you」で片づけてしまっていたのです。

意外にも、誰とでも仲良くなるコツは、相手が外国人であろうと日本人であろうと、こんな単純なことなのかもしれませんね。^^


*

2010-03-08 18:30:59

とうとう、2009年も残すところ後10分程となりました。

「picchuko、私達 ちょっと階下へ行って来るわね。」 
リサ達はそう言って、席を立ちました。

一段と盛り上がりを見せるステージ上では、一組、また一組と、観客までもがお互い 肩と腰とに手を回し合い、ゆったりとリズムに乗って踊り始めました。

こういうところは、やっぱり恋人同士か夫婦二人で来なくっちゃね。。。
階下には、ご主人と寄り添うリサの姿も見えました。
私、一人ぼっちだ…。

ちょっぴりセンチメンタルになっていると、またも隣りのおじさまと目が合いました。
「おじさまは踊りに行かないの?」

「じゃぁ、僕と一緒に踊るかい?」 
「まさか!(笑)」 私は奥さまに視線を向けて、そう答えました。

私が踊れるのは阿波踊りぐらいでんがな、、、。(笑)
場所が場所ならそんな冗談も言えたのでしょうけど、ここはオペラ座、しかもその時の気分はおセンチな私です。
そして、目の前にいる この方は、本物のヨーロッパ紳士なのですから。


「もう少ししたら、僕達もステージに行って来るよ。」 そう言って、彼は奥さまを指さしました。

*

2010-03-11 22:00:13

カウントダウンまであと3分を切りました。
誰しも、たった今 配られたばかりのシャンパンを片手にステージを見上げます。

私って、カウントダウンを迎える多くのカップル達をただ眺める脇役でしかないのかな。(;_;)
(実際には、おひとりで来られた おばさまや、3人組の若い男性グループなど他にも何人かいましたけれど…。)

やっぱり私の心はおセンチです。。。

ブダペストにいる場合じゃないわ! 
     今すぐザルツブルクまで飛んで行き、急いで婚活しなくっちゃ!!
自分で自分を慰めます。(苦笑)


その瞬間!
私のボックス席の扉がバタンと大きく開かれて、リサのご主人が「picchuko! 急いで!!」と飛び込んできました。

訳も分からず慌てて付いて行くと、
「ほら、ここからの方がステージがよく見えるわ!」 リサがシャンパンを傾けてくれます。

彼らは私を一人ぼっちで年越しさせない為に、
数時間前に知り合ったばかりの可哀想(笑)な日本人と新年の乾杯をする為に、わざわざ私を呼んでくれたのでした。

「A Happy New Year!」 

グラスの向こう、シャンパンの泡越しに、
ゴールドとワインレッドの二色の風船で形作られた『2010』という文字が浮かびあがっていました。


ありがとう。本当にありがとう。 あなた達の優しさは、私 一生忘れないから。。。





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Last updated  2010.03.14 08:20:55
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