I love Salzburg

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2011.05.21
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カテゴリ: 観劇・ライヴ
改めて、クーデンホーフ・ミツコという人物について読んでみたいと思いました。


時に、自分が望まぬとも時代の荒波に揉まれてしまう、そんな人生を歩む人がいます。
そういう人は大抵、ただ時代に流されるだけなく、強い意思を持ち、しっかりと地に足をつけて自分の人生を歩み抜きます。

逆に、そういう人だからこそ選ばれて生まれてきた人。
ミツコは正にその一人だったのだと私は思います。


そして、これまで私はそんな逞しいミツコの姿に憧れを抱き、
また、ミツコのそんな一面しか知ろうとはしませんでした。



とかくミュージカルというものは、ロマンチックにドラマチックに物語が展開していくもの。
そうでなければ、音楽に乗せることも、観客を惹き付けることもなかなか難しいものです。


もちろん、人には到底真似できない努力と涙涙の日々の連続であったに違いないけれど、
それさえもミュージカルで演じられるに相応しいものであったはずでした。


ところが、今回 初めてミツコの人生を一つの流れとして観ていく中で、何よりも強く感じたことは、
選ばれた者としての使命でもなく、憧れに値する姿勢でもなく、それは惨めなほどの「孤独」でした。


それは、選ばれし者ゆえの陰の部分。


愛する夫を亡くした後、莫大な資産を女手ひとつで管理をし、7人の子供を育てあげた彼女に残されていたものが、孤独。

祖国は遠く、子供たちは母から離れ、彼女の晩年はいかに寂しいものであったかを、
ミュージカルを観たことでやっと感じとることができたのでした。

いかに進んだ彼女でも、もとは厳格で古い明治の女性なのですから、
当時の欧州の時代の変化、考え方についていけずに子供たちと溝が深まるのも分かるような気もします。

せめて夫であるハインリッヒ伯爵が共に生きてくれていたなら。



ドラマチックな場面より、私の心に染みてきました。



後半は、どうしても話に盛り上がりを作るため、ミツコよりも次男リヒャルトへと中心が移っていきましたが、
それによって汎ヨーロッパ主義が生まれた背景もきちんと描かれていて、それはそれで良しかな。
汎ヨーロッパ主義にミツコは欠かせませんものね。


あ~。

ミツコとハインリッヒの国境を越えた愛なくして、今のヨーロッパの姿はなかったのだと。

現在のEUを見た時(まだまだ問題点は山積みだとしても)、そこに一人の日本女性の存在があることに誇りを感じます。

彼女の波瀾万丈の人生も、晩年の孤独さえも選ばれた意味のように思えました。




実はこのミュージカル、最初は少し物足りなさを感じていたのです。
私の中に、すでに気高いミツコ像ができていたから。

けれど こんなふうに、気がつけば目頭が熱くなるほどのめり込めたのは、
ミツコを演じた安蘭けいさんのおかげかな。(^^)

彼女が熱唱する「後ろを振り向かずに」を聴いているだけで、色んな意味で泣けてきました。

彼女のミツコは良かったと思います。
リヒャルト役の新人、辛源くんも素敵でしたし!(*^^*)


もちろんミツコの人生を通して、現代に生きる私達への大いなるメッセージにじ~んときます。
この舞台が、「今」演じられる意味も大きいと思います。


*ミツコについては、
過去 ('08.06.25日記) に書いてありますので、宜しければそちらも読んでみてください。^^

2011-05-22 19:49:14



「後ろを振り向かずに」


後ろを振り向かずに  頬を上げて
前を見つめて  歩いてゆくのよ


何を言われても  耳を貸さずに
前を見つめて  歩き続ける


まぶた濡らす雨は  涙洗い流す
頬を焼く日差しに  傷口も乾く

真冬の雪道も  真夏の嵐も
何も恐れずに  大地を踏み締めて


神様は扉を閉める時  窓は開けてゆくのよ


閉ざされた扉など  振り向かず進むの
新しい道は  必ず見つかる

歩いてゆくのよ





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Last updated  2013.03.13 12:39:01
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