2005.07.22
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テーマ: 海外生活(7776)
カテゴリ: イタリアンなお話
7月11日(月)マッジョ-レ湖

前日はご近所を午後しか散策していないので、母はまだまだ元気いっぱいである。
そこで天気予報の嵐の情報が気になりながらもマッジョ-レ湖へ。

マッジョーレ湖とはイタリア語で「最大の湖」という意味。
そう、スイスにまで鼻を延ばしたイタリア最大の湖である。
この湖の名物は「マードレ島」「ペスカトーレ島」「ベッラ島」の湖の真ん中に浮かぶ3島。
ちなみにこの湖はミラノマルペンサ国際空港からクルマですぐ。ウイリアムの家からもすぐそこだ(どうだっていいけど)。

しかしおっとが出勤したこの日は電車で出かけることとなった。
電車でもミラノから1時間半弱ぐらい。そんなに遠いところではない。


駅は小高い丘の上にぽつんとある。
降り立ったものの、どこに行っていいかわからない。一緒に降りてきたドイツ人旅行者と思えるグループが左に向って歩き出したのでそれに続く。
どんどん坂を下るとやっと大きな湖と停泊する遊覧船が見えてきた。

確か、あれに乗るんだよね?

湖に向ってちょっと早足で歩く。
しかし船は出航してしまった。

あ~あ、行っちゃったよ。

わたしたちは歩く速度を落とし、遊覧船の切符売り場を探した。
やがてたむろって日光浴をしていた何人かの中から船長っぽい白い制服を着たおっさんが「何かご用?」と近づいてきたのである。

わたし「ええ、あの船の(指を差して)乗車券を買いたいんです。」

おっさん「じゃあ、こっちだ。」



中には誰もいなかった。おっさんは中に入って「どこ行きの切符が欲しいの?」と聞く。

わたし「3島の周遊券を2枚ください。」

おっさん「35ユーロ。」

げ?

以前遊覧船に乗ったときこんなに高かったっけ?(最後に乗ったのはもう1年以上も前のことだからちっとも覚えていない。)

ちょっと困って母を見る。

しかし母が「わたしが払いますからね!いくらなの?」とすでに取り出していたエルメスのエナメルの大きな財布から札束を数え始めたのを見て、すでに染み付いてしまっている極貧な根性が恥ずかしくなった。
そして母と一緒にすまして切符を買ったのである。

おっさん「さっそく出発しよう!着いてきて。」とどんどん船着場から離れた方向に歩き出すではないか?

着いたところはレストランの陰に隠れた小さな砂利の浜だった。
古びた白い小さなクルーザーが留まっている。

おっさん「足元に気をつけて乗ってね~。」



うわあああああ!!わたしとしたことがっ!
うっかりして白タクに捕まっちゃったよ!
しかしもう切符を買ってしまった。しかたがない、わたしたちは2人貸し切り状態でこのクルーザーに乗り込んだのであった。

考えれば贅沢なことなのだ。
が、まるで素人のように(←何の?)白タクのおっちゃんにまんまとはめられたことが悔しい。

ちょっと待てよ?島に上陸したときはこのおっさん、どうするつもりだろ?前払いしちゃったから、まさかわたしたちを島に置き去りにして逃げるんじゃないでしょうね。。
考えていると船酔いも手伝い、どんどん気分が悪くなってきた。
ようやくクルーザーはストレーザから一番離れた「マードレ島」に着いたのであった。

おっさん「あと1時間半後に迎えに来ますよ。」と出航しようとする。

待て!逃げるなあっ!!
わたしに大きな不安を残して、おっさんはあっという間に湖の彼方に去っていったのであった。

母「この1時間半の間にまたあなたみたいにおばかさんな、別のカモを探しに行ったのね、きっと。」
とわたしの屈辱感に拍車をかける。

(そ、そうだよ。今のわたしは「極貧」じゃない。もしも置き去りにされたなら、35ユーロは悔しいけれど普通の遊覧船に乗って帰ればいいんだ。)と、自分に言い聞かせてマードレ島に入島する。
ちなみに入島料は後ほど行く予定のベッラ島と2島あわせてひとり15ユーロだったと思う。
観光地はなんでも高いわ!!

島の概要:
この3島はその土地の貴族ボロメオ家の所有物だったものだ。
多くの時をマードレ島の宮殿で過ごし、夏の離宮として建てたものがベッラ島の宮殿だとされる。
残りのペスカトーレ島(漁師の島という意味)はおそらく食料調達用に所有していたものだろうか?


わたしが今まで上陸したことがあるのはベッラ島とペスカトーレ島の2島だけである。
誰に聞いても「マードレ島は入島料の払い損だ、しょぼい。」と言ってたんで。。。
しかし今回パトロンをつけたわたしはせっかくなので、行ったことのないマードレ島にも入島することをためらわなかった。

宮殿に続く庭園に一歩足を踏み入れると。。。

いやいや、入島料の払い損なんかじゃないよ? 
手入れされた広大な庭園には白い孔雀や珍しい紅白のキジが遊び、イヤがおうにもリッチな気分にさせてくれる。
kiji
giardino
湖面沿いに続く断崖の松林を遠くに見える湖畔の町々を見ながらゆっくり歩くと、まるでその当時の貴族になったような優雅な気持ちになる。
madore2
やがて宮殿に着いた。まるで海を眺める高級リゾートホテルのようなたたずまいだ。
madore
(ちなみに左下のちっちゃい白いのは白クジャク)

中はたくさんの肖像画が飾られていた。
全てお抱え画家に描かせていたのだろうが、申し訳ないが、こういうタイプの絵は好みじゃないなあ。。。
と、思いつつ部屋を移動していった。
2番目に入った部屋は「人形の部屋」だった。大きく仕切られたガラスの中に無数のアンティークドールが並んでこちらをみつめている。
わたしははっきりいってアンティークドールは念(?)でもこもってそうで好きになれない。
こんな部屋に夜中にひとりで残されて、やつらが勝手に動き出したら。。。と思うと身震いがして早々にこの部屋を移動した。
次の部屋は「人形劇の部屋 天国編」だった。壁の一面がシアターになっていて、周りの壁にはお世辞でもお上手とは言えない素人が描いたような天国画のフレスコ画で覆い尽くされている。
その次の部屋は「人形劇の部屋 地獄編」。さっきの部屋と同じようなつくりだが、地獄風に仕立てられている。。

ここの城主は人形フェチ?

下々の街と切り離された湖の真ん中の孤島で、TVもラジオもない時代にさぞやすることがなくて暇だったのだろうが、ここまで人形ばっかり見せられるといい加減、興ざめがしてきてしまった。

入島料の払い損なわけがわかったような気がした。

この島全てを見ると、まさにちょうど1時間半だ。
おっさんは白タクをしているだけあって、さすがの感覚である。
わたしは不安をまたもや膨らませながらさっき船から降ろされたところに行くと、わたしたちと同じような日本人の母娘が木陰に座っていた。
このひとたちも白タクでカモにされて来たんだろうか。。。?と考えているとおっさんのクルーザーがやってくるのが見えてホッとする。置き去りにはされなかった。
やっとわたしは安心してベッラ島に向ったのだ。

ベッラ島はこの3島の中で一番にぎやかな島。
bella2
宮殿に入らなくてもまわりを囲むお土産物屋めぐりだけでも楽しめる。

しかし、ここの庭園はお金を払ってでも入る価値はある。
というのはマードレ島にも共通したことだが、ボロメオさんは芸術の趣味は悪くても一級の庭園デザイナーを抱えていたことだ。

まずはオゲオゲの趣味の悪い宮殿内、何が趣味が悪いって「海底の間」。黒い岩がぼこぼこな壁とへんなサンゴや貝殻で装飾された部屋を最後に通って、またもや人形たちに見送られつつ外に出ると、由に500年は経ったであろうと思われる楠の古木に迎えられて素晴らしい彫刻の壁を正面に見た広い庭園に出るのだ!
bella

壁を登るとスイスまで延びる細長い湖の先の先まで見えるのは豪快そのもの、遥か下を優雅に自家用クルーザーやヨットが走っていく。
出口近くにはその当時では維持が大変だったであろうアールヌーボー風の黒い鉄骨でつくられた熱帯植物園があり、今でもランなどの熱帯植物が花を咲かせている。

庭園の隅の喫茶店で冷たいコーヒーを飲んで眺める湖はなんともここちよい。(アイスコーヒーは思わず「わたしが作ったるやん!」というほど不器用な手で作られたけど。。)

入り口とは裏腹に気も付かない様な小さなしょぼい動物園のそれのような回転式の鉄の出口を出るとそこはお土産物屋がずらりとならぶ路地である。
ベネチアの仮面から、シチリアの陶器までなんでも揃っているマルチな店店だ。
まあ、マッジョ-レ湖土産なんてなんにもないし。

3島の中で1島しか行く時間がない、というあなたはここだけでOKよ。

ここは2時間の滞在時間だったが、そんなものだった。

そしてペスカトーレ島へ。
pescatore
ペスカトーレ島は外観は雰囲気があって美しいのだが、上陸しても漁師の家々しかない。
時計を見るともう帰りの電車の時間がせまっている。なのでこれは湖上から見るだけにとどめたのであった。


またもや、船着場でもなんでもないストレーザの小石の浜にわたしたちは打上げられるかのように到着した。
どうやら、往きはドイツ人のグループと共に間違えて次の船着場に行っていたようだ。
ここで目の前に広がるのは湖畔の高級リゾートホテルばかり。
宝石店やムラーノガラスのギャラリーが並ぶハイソな商店街を通ってわたしたちは国鉄駅に向う。
母はここでゴージャスでシックなムラーノガラスのネックレスを買ってご満悦である。

「マッジョ-レ湖ってステキなところね。また来たいわ。」

ハイソな母はここで数日の彼女にとっての非現実から目が醒めたようであった。

母「もう貧乏なあなたにつきあって2等車ばかりに乗るのはごめんだわ!1等車に変えてちょうだい!!」

わたしはそれまで2等車以外頭の隅にもなかった自分に恥ずかしくなった。
そう、彼女は新幹線も必ず「グリーン車」のお嬢なのだ!

窓口で切符を替えたら、なんとミラノから我が最寄り駅までのローカル線まで1等車になっていた。

へえ~、あんなローカル線に1等車があるなんて知らなかったよ。
と、ミラノに着いて本当に1等車と書かれた車両があったことに驚きながら乗り込むと、全ての車両の中で一番汚いんじゃないかと思うぐらいの薄汚れた車両だった。

もう面倒くさいのでそのまま座っていると車掌が検札に来た。

車掌「へ?1等?あんたら、バッカじゃないの?ハッハッハッハ!!」と切符を切って笑いながら行ってしまったのである。



まったく。お金を余分に払って一番汚い車両に座って笑われていたらざまあないものだ。





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Last updated  2005.07.22 19:52:56
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お目目@ Re:イースターいろいろ。(03/31) いくきーとさん、ご無沙汰しております目…
Hinatabocco@ 大丈夫ですか? いくきーとさん、このブログはもうノータ…
Ikukito @ ごめんなさい。 >shion0851さん そ。。そうです。26歳だ…
かつしちー @ おめでと! 色んな偶然があるんですね。 相変わらず…
shion0851 @ そーなんだ 26歳なんですか、そうですか・・・(-_…

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