ヨカッタ探し

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October 24, 2006
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カテゴリ: 読書ろぐ
米原万里『ロシアは今日も荒れ模様』
『ロシアは今日も荒れ模様』 (講談社文庫、2001)



今年5月に亡くなった米原万里さんのエッセイです。
以前『不実な美女か貞淑な醜女(ブス)か』を読んで( 2005/11/08の日記 )、
とても面白かったので、古本屋さんでこれを見つけて、買ってみました。
本当は、最近出たばかりの書評エッセイ集『打ちのめされるようなすごい本』
を読んでみたいんだけど、さすがにこれは新刊じゃないと出会えない。
うーん、図書館に行ってみようかなぁ~。


『不実な…』は、翻訳家・通訳者としての経験から得たことが中心で、
こちらはロシア語通訳としての彼女が見たロシアとロシア人に関するもの。
勿論、ロシア語の通訳という経験はどちらにも共通するものなので、
例えば、訪日したエリツィンに通訳として随行した経験など、
どちらにも出てくるエピソードもあるけれど、切り口が違うし、
そこから得る結論も違うので、「あぁ、またか」という気分にはならない。
知らなかった!とかなるほど!!というエピソードもいっぱいで、
特にロシアに関心がなかったわたしも、終始、面白く読めました。

特に面白かったのが、第5章肖像画コレクション。
政治家もよいけど、相撲好きの音楽家ロストロポービッチの部分が印象的。
文庫P176で著者は、

だかの言葉を”至言”としてとりあげてるんだけど、
それの米原流表現が
”絵描きは絵で、舞踏家は踊りで、音楽家は音楽で勝負するのだから、
 さらにそのうえ作品の構造や技術について言葉を弄してアレコレ云々する能力
 なんてのは、なくても十分、良くて付録、悪くて蛇足。”

面白いのが、そんなふうに言いつつも、実際に会った一流の芸術家は
”芸を語る言葉の豊かなこと、的確なこと、巷の評論かもマッツァオの腕前”
と舌を巻く。そこで、音楽を言葉で表現させたらピカイチの音楽家として、
ロストロポービッチのエピソードが紹介されている。

この辺のことは、作家以外の人のエッセイを読んでいて思う。
この人は文筆業ではない、いわば文章の素人なのに、どうしてこんなに
面白く美しい文章がかけるんだろう??って。
もちろん、全部が全部そうなわけではなくて、何かの専門家であったり、
何かを極めた人のを読んでいるとよく感じることで、
そういうエッセイを読んでいると、具体的な方法は全然違うんだけど、
言わんとすることはけっこう似通っていたりして、道を極めるって
方法は人それぞれだけれども、究極的にはその結果得るものって
共通する部分があるんじゃないかな、なんてことを思う。

そんなわけで、わたしは作家以外の人のエッセイを読むのが
割りと好きで、米原さんのエッセイもその1つなんだけれども。
彼女の残したエッセイが、もうこれ以上増えることがないっていうのが、
やっぱりとても残念に、そして、淋しく思われます。





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最終更新日  October 24, 2006 11:57:21 PM
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