東方見雲録

東方見雲録

2024.11.20
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カテゴリ: 政経



G20
 本年のブラジル議長下でのG20においては、(1)飢餓・貧困との闘い、(2)持続可能な開発とエネルギー移行、(3)グローバル・ガバナンス機構改革の3つの優先課題が掲げられ、G20としての取組を進めてきました。ブラジルのリーダーシップに敬意を表します。

二国間関係
 日本の総理大臣のブラジル訪問は、今年2回目となり、昨年のG7広島サミットの際のルーラ大統領の訪日を含め、日本とブラジルの間の首脳の相互訪問が非常に活発となっています。私自身、ブラジルとのご縁は、日本人ブラジル移民80周年にあたる1988年に、慶祝団の一員としてブラジルを訪問したことに遡ります。そして本年、総理に就任してブラジルを再訪することができ、大きな喜びを感じています。この機会に、日伯の長年の友好関係に裏付けられた二国間の協力について触れたいと思います。

 「飢餓・貧困との闘い」に関して、日伯間では長年にわたり取り組んできました。飢餓と貧困の撲滅には、食料供給の安定化は欠かせません。日本は、1979年から始まった「日・ブラジル・セラード農業開発協力事業(PRODECER(プロデセール)」を通じてブラジルと協力し、34.5万haの土壌改良を行い、ブラジルは世界最大の大豆生産国になるなど、世界の食料供給の安定化に貢献してきました。
環境・気候変動対策は喫緊となっています。日本は本年3月にアジアから初となるアマゾン基金への拠出を行いました。また、日本は、JAXAの衛星及びAI(人工知能)技術を用いてアマゾン熱帯雨林の違法森林伐採の管理能力強化においても協力を進めています。

気候変動・エネルギー移行
 また、両国は、20年以上前から毎年東京で開催している「『気候変動に対する更なる行動』に関する非公式会合」の共同議長を務め、気候変動に関する議論をリードしてきました。持続可能な世界の実現に向けて、各国の事情に応じ、あらゆる技術やエネルギー源を活用する多様な道筋の下で、ネット・ゼロという共通のゴールを目指すことが重要です。特にモビリティ分野で高い低炭素化技術を有する日本と、G20の中で最もクリーンなエネルギー・ミックスを有するブラジルは、この分野で世界をリードできるユニークな立場にあります。「持続可能な燃料とモビリティのためのイニシアティブ(Initiative for Sustainable Fuels and Mobility)」のもと、日本とブラジルの強みを活かして世界のカーボンニュートラルの実現に貢献していく所存です。

 防災における協力も重要です。リオ・グランデ・ド・スール州での豪雨被害による被災者の方々を支援するため、日本は緊急援助物資(浄水器)を供与しました。近年、日本各地も記録的豪雨に見舞われています。防災は、両国の共通する課題と言えます。こうした中、ブラジルとの間では、土石流対策構造物の設計、施工、維持管理の実施能力強化に関する技術協力を実施し、土砂災害に対する能力強化を進めています。日本は、防災分野におけるブラジルとの協力を今後も強化していきます。

国際場裡での協力
 そして、現下の国際情勢においては、日本は、世界を分断や対立ではなく、協調に導くことを重視しています。そのためには、主権や領土一体性などの国連憲章の原則をはじめ、国際法を遵守することが不可欠です。今なお続くロシアによるウクライナ侵略は国際法の明白な違反です。一日も早くウクライナにおける公正かつ永続的な平和を実現することが必要です。また、中東情勢のエスカレーションは地域及び国際社会全体の安定と平和を脅かすことは明らかです。日本としては国際社会と協力して、全ての関係者に最大限の自制を働きかけるとともに、ガザを含め中東の人道状況の改善にも取り組んでいく考えです。
 また、世界中のどこであれ、力や威圧による一方的な現状変更の試みを許容してはなりません。法の支配に基づく自由で開かれた国際秩序を維持・強化していくことが不可欠です。厳しい国際情勢の下、来年には国連創設から80年が経ち世界が大きく変わる中で、国連を中核とした多国間主義の重要性は高まっています。日本とブラジルは、国連、中でも安保理の改革のため、共に取り組んで来ました。先般、国連未来サミットで採択された「未来のための約束」で、世界の全首脳が、安保理改革が緊急に必要であると結論づけました。改革実現のためのステップを踏み出すべく、日本は、G4メンバーとしてブラジルと共に、緊密に連携していきます。

周年・人的交流
 日本とブラジルは、価値や原則を共有する「戦略的グローバル・パートナー」です。また、日本にとってブラジルは、世界最大の日系社会を礎として、人と人との間の特別な絆がある友好国です。この日本とブラジルの関係は、来年、日ブラジル外交関係樹立130周年という節目を迎えます。  この節目を捉え、日本とブラジルの間では、来年を「日本ブラジル友好交流年」とすることで一致しており、文化や観光、スポーツ等の様々な分野で協力を促進していきます。人的交流においては、昨年9月からの両国による短期滞在査証の免除を契機として、訪日ブラジル人数は倍増しています。ビジネス関係者の人的往来の活性化にも期待しています。また、これまでの成功を礎に、更に両国の新しい協力のフロンティアを拓いていける年にもしたいと思います。

 今回のG20サミットをきっかけとしたブラジル訪問、そして、友好交流年は、日・ブラジル関係の新たな章の幕開けと言えます。私は、ルーラ大統領を始め、ブラジル政府・議会関係者の皆さんと手を取り合いつつ、二国間関係、国際場裡での協力の一層の強化に尽力してまいります。 

(参考)
 掲載記事(ポルトガル語)(PDF)別ウィンドウで開く
引用サイト:外務省   こちら

関連サイト:石破首相、ウクライナ侵略・ガザ情勢念頭に「国連安保理は課題に対処できていない」 こちら


 パレスチナ自治区ガザの情勢を巡っては、停戦と人質の即時解放を改めて求め、全ての当事者に自制と国際人道法を含む国際法の順守を要求した。

 首相はこれらの問題を念頭に、「国連安全保障理事会は現下の諸課題に対処できていない」とも指摘。常任理事国、非常任理事国双方の拡大を訴え、「日本は国連の機能強化に貢献していく」と述べた。


石破茂首相は18日(日本時間同日)にブラジル・リオデジャネイロで開幕した主要20カ国・地域首脳会議(G20サミット)に初めて臨んだ。初日の討議では、開発支援や気候変動対策、国連改革などを議論し、首相は分断ではなく協調を呼びかけ、G20で課題解決を主導していく必要性を訴えた。
・・・・

引用サイト: こちら


 「飢餓と貧困との闘い」では、政府開発援助(ODA)を通じて長年実施してきたブラジル中西部の農業支援事業「セラード開発」によって世界最大の大豆生産地となった事例などを紹介。日本が過去5年間で約150億ドル(2兆3000億円)の飢餓・貧困対策を実施してきたことを強調しつつ、さらなる農林水産業支援を中南米やアフリカに広げていくとの方針を表明した。

 また、気候変動問題を巡っては「世界の気温を産業革命前から1・5度上昇に抑える」という世界共通目標と整合する「野心的」な次の温室効果ガス排出削減目標を策定し、実行するとの意欲を示した。日本は「2030年度までに13年度比46%減」の現行目標を更新し、35年以降の新たな目標を来年2月までに国連に提出する予定で、さらなる上積みが求められている。ただ首相は「各国の事情に応じた多様な道筋」の下での目標達成を目指す立場で、石炭火力発電への依存度の高い日本の事情への配慮も求めた。

 首相が公約に掲げていた防災庁設置にも言及した。防災対策の強化や避難所の環境改善などで各国と知見の共有を呼びかけた。

 「グローバルガバナンス」の討議では、首相は国連安全保障理事会を「現下の諸課題に対処できていない」と厳しく指摘し、常任・非常任理事国双方の拡大など、具体的議論を早急に進めるよう訴えた。

 ロシアによるウクライナ侵攻は「法の支配に基づく国際秩序に対する明確な挑戦」と位置づけ、北朝鮮との軍事協力の進展に「深刻な懸念」を表明した。パレスチナ自治区ガザ地区をはじめとする中東情勢を巡っては、「危機的な人道状況への強い懸念」と全ての当事者への「最大限の自制」を求めた。

 世界貿易機関(WTO)の改革については、紛争解決機能の回復は「急務」と指摘し、「政治的推進力」を与えるよう各国に協力を呼びかけた。【リオデジャネイロ村尾哲】

気になる見出し:バイデン大統領抜きのG20団体写真撮影…遅刻を待たなかった首脳たち こちら

米国の国際的地位を考慮する時、現職大統領が国際行事の団体写真撮影日程に「意図」しない「遅刻」で参加できなかったのは類例を探しにくい。

今回のG20サミット団体写真撮影が3年ぶりに再開された点を考慮する場合、なんとも言えない微妙な場面が演出された格好だ。これに先立ち、2022年(インドネシア・バリ)と2023年(インド・ニューデリー)サミットの時には、首脳が「ウクライナを侵攻したロシアと肩を並べない」という理由で団体写真を撮らなかった。

来年1月に退任するバイデン大統領はこれに先立ち、ペルーで行われたアジア太平洋経済協力(APEC)首脳会議団体写真でも後列最後の端席を配分されて、フォックス(FOX)ニュースをはじめとする一部の米国メディアから「気まずい位置」という批判混ざりの論評を受けたことがある。

偶然にも当時習主席が前列の中央に立ち、今回のG20首脳会議の写真でも前列に位置していた。


引用サイト: こちら





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Last updated  2024.11.20 06:53:06
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