プレリュード

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2007年04月26日
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カテゴリ: クラシック音楽
今日のクラシック音楽

94歳で指揮台に立ったレオポルド・ストコフスキーもいれば、30歳代で亡くなったモーツアルト、ウエーバー、シューベルト、メンデルスゾーンなどのように現在でも人々の心を癒し続けてくれる名作を書き遺した作曲家もいます。 まるで神様のいたずらかと思えるような若死にです。 彼らがせめて20年長く生きてくれていたら、私たちはもっと素晴らしい音楽を聴けたかも知れません。 

珠玉のピアノ作品を残したフレデリック・ショパン(1810-1849)も若き命を散らして39歳で肺結核で亡くなっています。

「ピアノの詩人」とも呼ばれるショパンは自身ピアノの名手だったそうで、演奏会などにひっぱりだこのようでした。 そんな彼が書いた作品は全てピアノ作品と言っても過言ではないでしょう。 3つのソナタ、24の前奏曲、ボロネーズ集、マズルカ集、ワルツ集、20曲を超える夜想曲集、練習曲集など珠玉のピアノ作品を残しています。

そんな彼の作品の中で2曲の協奏曲があります。 この2曲ともが素晴らしい協奏曲なんですが、私の好みからすると第1番の方が聴く機会が多い曲です。 実際はこの第1番は2番目の協奏曲なのですが、楽譜出版の時に2作目より先に出版されたために「第1番」と呼ばれるようになったそうです。

芸術家は人並み外れた「感性」を持っているようで、作品を生み出すエネルギーのような火山のマグマのようなふつふつとした情念が沸き起こっているようです。 それらの「感性」の中でも作曲家に多大な影響を与えた「女性」の存在があります。 

ベルリオーズの舞台女優への激しい思慕が「幻想交響曲」を生み、ヴェルディの「椿姫」が歌手とのパリへの逃避行で観た演劇「椿姫」に触発されて書かれ、ワーグナーの人妻との不倫の恋が「トリスタンとイゾルデ」を書かせたとも言われています。

この「ピアノ協奏曲第1番」もショパンの初恋の女性への思慕から生まれた作品です。 



「なよやかな茎の上に青い花をのせた昼顔のようで、そっと手を触れただけではかなく散ってしまいそうだ」と形容したのはフランツ・リストでした。 まさに言い得て妙なる表現です。 それはショパン像のみならず彼の音楽そのものを語っているように感じられます。

ショパンの生涯に寄り添う3人の女性がいました。  コンスタンチィア・グラドコフスカ、マリア・ヴォジンスカ、それに最も有名なジョルジョ・サンド。

このピアノ協奏曲第1番はそれらの女性の中で、ショパンの初恋の人と言われているコンスタンチア・グラドコフスカという、声楽を勉強していた女性なしに語れない曲です。 

恋と言ってもショパンは自分の想いをとうとう打ち明けることなくポーランドを去り、その後二度と祖国の土を踏むことがなかったのです。 ショパンの友人に宛てた手紙に彼女への想いを綴っているそうです。 「僕は悲しいことに、僕の理想の女性を発見した。 僕はまだその人と一言も話していないのだが、この半年の間、僕は心の中で忠実に仕えてきているのだ」と。 

まさに青年期に誰もが体験するような恋の想いではないでしょうか。

そのグラドコフスカへの想いを綴った曲が2曲のピアノ協奏曲です。  自分の燃え上がる炎のような恋心を音楽にぶつけたのでしょう。 特に第2番の「アダージョ楽章」は明確に彼女への想いだというショパン自筆の手紙に書かれているそうです。

「第1番」は作曲順からすると後になるのですが、この曲には「第2番」のような明確なものが残っていません。 しかし、この曲もグラドコフスカへの想いが込められていることは容易に推察できます。 

音楽活動をもっと盛んにするためにショパンは祖国ポーランドを離れてパリへ旅立つことを決意して、1830年10月11日にワルシャワで「告別演奏会」を開きました。 その演奏会に花を添えたのがグラドコフスカでした。  彼女はこの演奏会でロッシーニのオペラ「湖上の美人」のカヴァティーナを歌ったそうです。 

その演奏会でショパンのピアノで演奏されたのが「ピアノ協奏曲第1番ホ短調 作品11」で、これがこの曲の初演となっています。

ピアノの技巧をあますところなく表現しており、そこへ濃厚なロマンの香りを乗せた甘美な旋律が聴く者をうっとりとさせる名作です。 

第1楽章 の主題などは、こぼれ落ちそうな、したたり落ちそうな濃厚な想いが語られており、ショパンの彼女への想いがこれほどまでかと推測されるほどの、美しい旋律に彩られています。

第2楽章

第3楽章 はロンド形式で、繊細に、愛らしく、それでいて華やかな情緒もある見事な完結楽章です。

この演奏会のあとショパンはフランス・パリへと旅立って、二度と祖国ポーランドの土を踏むことなくパリで39歳の若い命を散らしています。

またコンスタンチィア・グラドコフスカは、こうしたショパンの想いを知らずに、この演奏会の2年後にワルシャワの地主と結婚して5人の子供たちに恵まれたのですが、35歳で失明します。 それでも79歳まで長命で1889年に亡くなったそうです。

愛聴盤

(1) ルービンシュタイン(P) スクロバチェフスキー指揮 ニューロンドン交響楽団

BVCC37446 1961年録音


LP時代に買った初めてこの曲を聴いた演奏。 色々な演奏を聴いたのちに、情緒に流されることなくきれいなピアノタッチで、堂々と弾いている演奏とわかり座右の盤となっており、最近SACD盤で優秀な録音で聴けるようになったの嬉しい。

(2) マリア・ジョアン=ピリス(P) クリヌヴ指揮 ヨーロッパ室内管弦楽団

POCG10124 1997年録音
(グラモフォン原盤 ユニヴァーサル・ミュージック POCG10124 1997年録音)

女性らしい繊細で美しい音色で弾くピリスの名演。

(3) ツィマーマン(ピアノと指揮) ポーランド祝祭管弦楽団

459684 1998年8月録音
(グラモフォン・レーベル 459684 1998年8月録音 海外盤)

これまでにないこの曲の解釈と演奏の可能性を引き出した瞠目すべき演奏。 ツィマーマンとコンドラシン指揮のディスクでも聴いているが、彼が自分で思う通りやりたい通りに演奏するために私財を投じて組織したオーケストラを使い、管弦楽パートにもこれまでの指揮者と違う解釈を繰り広げて、強音・弱音のコントラストやディナミークなどやりたいことを全てヤッテいる感じの演奏に加えて、ピアノの斬新な解釈、まさにこぼれ落ちそうなロマンの香り豊かに、美しい音色で弾いた名演盤。 しかし初めてこの曲を聴かれる方は他の演奏盤を聴いてから、これを聴くことを薦めます。 いかにこの演奏がすごいかをわかっていただくために。

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今日の音楽カレンダー

1899年 初演 シベリウス 交響曲第1番

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ともの『 今日の一花 』     花水木(ハナミズキ)

晩春から初夏にかけて花びらをいっぱいつけて咲いています。 これは開花前の花びらを撮ってみました。 くるくると巻いている花の様子がとても可愛いくて撮ってみました。 昨年4月に大阪市立長居植物園で撮った写真です。


花水木(紅)
4/26


これは白です
4/26撮影地 大阪市立長居植物園 2006年4月21日



















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最終更新日  2007年04月26日 00時50分08秒 コメント(11) | コメントを書く
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