プレリュード

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2010年10月04日
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「名曲100選」  チャイコフスキー作曲 ヴァイオリン協奏曲 ニ長調

「メン・チャイ」という言葉が生まれた程に有名なヴァイオリン協奏曲が2曲あります。一つはメンデルスゾーンの流麗かつ美しいヴァイオリン協奏曲と、チャイコフスキーのロシアの大地を想像させるヴァイオリン協奏曲の二つを指して言う言葉なんですが、それほどにこの二人の協奏曲はポピュラリティを確立しており、レコード会社も新進気鋭の若手を売り出す録音にはよほど勇気がいる2曲とまで言われているくらいに、名演奏が目白押しのポピュラーな曲になっています。

ところがこの曲の初演当時は、オーケストラの楽員からでさえも不評を買うほど惨めな初演での批評だったそうです。 

チャイコフスキーには、「初演は不評」というジンクスがあったのでしょうか? 「白鳥の湖」や「悲愴」交響曲など、今日のクラシック音楽の大スターとなっている曲は、初演時にはさんざん酷評されたそうです。 この協奏曲もこれら2曲と同じ運命をたどっています。 以下はこの曲にまつわる有名なエピソードです。

1878年、チャイコフスキー38歳の時に書かれたこの曲は、ロシアの大ヴァイオリニストと呼ばれ、ハイフェッツやミルシティンの師匠でもあったレオポルド・アウアーにスコアの草稿を献呈のつもりで送ったのですが、アウアーの返事は冷たいもので「技術的に演奏することは不可能な曲」と言われたのです。 天下の大ヴァイオリニストが「演奏不能」とレッテルを貼ってしまったので、その後陽の目を見るまで3年かかったそうです。

この曲がやっとステージに上ることができたのは、なんとウイーンでした。 そうです、名門ウイーンフィルで、しかも指揮者は当時名指揮者と賞され、後にブラームスとも深い関わりを持つようになったハンス・リヒターでした。 ヴァイオリン独奏はチャイコフスキーの友人のブロッキーでした。

ところが、この当時のリヒターもウイーンフィル団員もこの曲の真価を理解できなかったのか、あるいはこの曲を好きになれなかったのか、演奏は惨憺たる出来に終わり、ウイーンの批評家たちから酷評され「安物のウオッカ」とまで評されたそうです。

しかし、ブロッキーはこれらの酷評にめげず、その後もヨーロッパ各地でこの協奏曲を弾き続けていたおかげで、次第にこの曲の良さを理解されるようになり、3大ヴァイオリン協奏曲の一つとまで呼ばれる名曲の一つとなったのです。

曲は「ロシア」の香りがいっぱいで、開始楽章の冒頭からもうロシアの大地に投げ出されて、その大地に包み込まれるような強烈なチャイコフスキー節満載のスラブ的な甘く、美しい旋律、音楽です。 どうしてこの曲が初演時に不評だったのか不思議です。

第二楽章は「カンツォネッタ」と題されている「歌」の楽章で、哀愁に溢れた美しい旋律が聴く者の心を捉える、チャイコフスキー独特のスラブ的な美しさいっぱいの音楽です。





愛聴盤

(1) ミッシャ・ハイフェッツ(ヴァイオリン)
  フリッツ・ライナー指揮 シカゴ交響楽団

09026.61743 1957年録音
(RCAレーベル 09026.61743 1957年録音 海外盤)

LP時代に購入した録音盤でハイフェッツの技巧がいかに素晴らしいかが、非常によくわかる演奏で、LPを他人に譲った後にすぐに購入したディスク。

(2) キョン・チョン=ファ(ヴァイオリン)
  アンドレ・プレヴィン指揮 ロンドン交響楽団

UCCD4419  1970年録音
(DECCA原盤 ユニヴァーサル・ミュージック UCCD4419 1970年録音)

颯爽とした情熱がこもるキョン・チョン=ファのヴァイオリンは、いつ聴いても「熱」を感じます。この曲も爽やかながらロシアの大地の肌触りを覚えるような感じがします。

(3) オーギュスタン・デュメイ(ヴァイオリン)
  エミール・チャカロフ指揮 ロンドン交響楽団

TOCE14206 1988年録音



(4) ナージャ・サレルノ=ソネンバーグ(ヴァイオリン)
  マリン・オールソップ指揮 コロラド交響楽団

AVCL25111 2004年録音
(Avex レーベル NSSミュージック AVCL25111 2004年録音)

手指を料理中に切ってしまい、再起不能かと囁かれていたソネンバーグですが、妖艶と表現すればいいのか、高音の艶やかな美しさは比類がないほど、そして見事に復活を遂げています。

彼女特有の情熱がこもっており、強弱の付け方などもこの人独特の表現で唸らせてくれる。 息も絶え絶え、泣けるところはしっかりと泣き節で、速いパッセージはこれでもかと聴かせてくれる技巧。



ソネンバーグの自主レーベルの第1枚目となるディスクだそうです。

(5) アンネ=ゾフィ・ムター(Vn)
アンドレ・プレビン指揮 ウイーンフィルハーモニー

474 5152 2003年録音
(ドイツ・グラモフォン 474 5152 2003年9月録音 輸入盤)

持っているディスクで最も好きな演奏がこのCDです。

カラヤンとの共演から15年(この録音当時)、今回は結婚したばかりの夫君(現在は離婚)プレビンとのおしどり共演で、夫婦となってから2枚目のCD(1枚目はプレビン作曲の「愛妻に捧ぐ」Vn協奏曲)です。

第1楽章からムターのVnは、表情づけが濃厚で、熱く歌いこんでいます。 スケールの大きな表現と、スラブ色を超えた、もっと濃厚なロマン的な演奏で、彼女が年を重ねるごとにこの傾向が強く表れており(クルト・マズア指揮ニューヨークフィルの'97年ライブ録音のブラームス、同じ共演で2002年のライブ録音のベートーベン)、今回の演奏では前作のブラームス、ベートーベンを上回るほどの濃厚な表現で、妖艶なまでの美音・表情に圧倒されました。

カップリングはコルンゴルド(1897-1957)のVn協奏曲。 アンドレ・プレビンがぞっこん惚れこんでいる作曲者で、ドイツを追われてアメリカ・ハリウッドで映画音楽に従事した後に書かれた曲で、プレヴィンにとって3回目の録音。 まるで映画音楽の中に入り込んだような曲、演奏で、ムター節全開です。

私はこのコルンゴルドを聴きたくて買ったのですが、チャイコフスキーの素晴らしさに圧倒されました。 この曲を見直したと言っても過言ではない、強烈なインパクトでした。









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最終更新日  2010年10月04日 01時51分14秒 コメントを書く


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