プレリュード

プレリュード

2010年10月11日
XML
カテゴリ: カテゴリ未分類

「名曲100選」   ベートーベン作曲 ピアノ協奏曲第5番 「皇帝」

ルードヴィッヒ・ヴァン・ベートーベン(1770-1727)は凄いピアノ演奏の名手であったそうな。この曲の作曲当時はウイーンに居たのですが、その頃彼のピアノの名技はヨーロッパ中に広く知れ渡っていたそうです、 彼に対抗できるピアノ演奏家は皆無だったと言われています。 こんなエピソードがあります。

ヒンメルという名ピアニストがいました。 そのヒンメルがベートーベンに即興演奏の腕比べをしたのですが、相当長く時間をかけてヒンメルは演奏をしていたのですが、ベートーベンはそれを聴いていて「ところでヒンメルさん、いつピアノをまともに弾き始めるのかね?」と言ったそうです。 

そんなピアノの名手ベートーベンは、このピアノ協奏曲第5番 変ホ長調 作品73「皇帝」を1809年に完成しています。 その頃はすでに第1番~第6番の交響曲や4曲のピアノ協奏曲、それにおよそ26曲のピアノソナタを書き上げています。

作家ロマン・ロマンに言わしめた「傑作の森」にあたるベートーベン中期の作品で、まさに彼の「怒涛の時代」の中の1曲です。

「怒涛の時代」と言えば、ベートーベンはウイーン時代に2度の戦火に遭遇しています。 1805年と1809年のナポレオンのウイーン侵攻です。ベートーベン35歳から40歳にかけての時代でした。 特に、1809年の戦火はオーストリア軍がひるまずに迎え撃つことになったので、ウイーンは相当な破壊があり、ナポレオン軍占領という事態になりました。

時の貴族たちは我先にとウイーンを逃げ出したのですが、ベートーベンは踏みとどまりました。 彼のパトロンの一人ルドルフ大公も他の貴族たちに漏れず、ウイーンを逃げ出した貴族の一人でした。 ルドルフ大公のウイーン脱出を悲しんで書かれたのがピアノソナタ第26番「告別」だという説もあります。

この「皇帝」協奏曲はその戦火の最中に書かれており、そんな悲惨な状況の中でも悠揚迫らぬ、雄渾で骨太のスケールの大きなピアノ協奏曲が生まれているのです。

ピアノ付き交響曲、あるいはピアノ交響曲と呼んでもおかしくないくらいに管弦楽パートが実に充実した交響的な響きを持ち、ピアノ部もそれに負けない強靭な音を響かせています。 ナポレオン軍の侵攻を思わせるような軍隊行進曲的なところもあり、それは戦争を描こうとしたのではなく、人類の博愛と人間解放を強く願うベートーベンの強靭な精神の表われだろうと思います。 戦火の中にあってもまさに「雄渾無比」なる音楽を鳴り響かせるベートーベンの作曲への執念、作品に没頭する集中力など、その偉大さに感銘を覚えます。

第1楽章冒頭からいきなりピアノのカデンツァが入るところなどは、まさに画期的な作曲手法で、後のシューマンやグリーグのピアノ協奏曲にもそれが見られます。 それにカデンツァは当時はピアニストの即興演奏だったのが、ベートーベンはきっちりとそれを書いて全曲の統一を表現しています。



この曲のウイーン初演では、ベートーベンが指揮棒を握り彼の直弟子チェルリーニが独奏ピアノを受け持ったそうです。


愛聴盤

(1) ウイルヘルム・バックハウス(ピアノ)
   シュミット=イッセルシュテット指揮 ウイーンフィルハーモニー

UCCD7134 1959年録音
(DECCA原盤 ユニヴァーサル・ミュジック UCCD7134 1959年録音)

まるで「ドイツ魂」の化身と呼べそうなごつごつとしたピアノの音、それでいてしっかりとした足取りで、華麗に鍵盤を舞う様は何度聴いても飽きの来ない定番中の定番的名演。

(2) ウイルヘルム・バックハウス(ピアノ)
   カール・シューリヒト指揮 スイス・イタリア語放送管弦楽団

ERM144-2 1961年ライブ
(ERMITAGEレーベル ERM144-2 1961年ライブ録音 海外盤)

バックハウス最晩年の録音。それでも実に堅実に音を刻み、また華麗にピアノを鳴らすその響きはドイツのピアノ音楽の実直で朴訥な響きをもたたえた最高の遺産として残されており、同じく80歳を過ぎたシューリヒトの、スコアが透けて見える程の管弦楽表現が素晴らしい演奏記録です。

(3) エミール・ギレリス(ピアノ)


TOCE91084 1968年録音
(EMI原盤 EMIジャパン TOCE91084 1968年録音)

LP時代から再発売が何度繰り返されてきたか。 上記商品番号であと1週間でまたもや再発売される、鋼鉄の鋼を思わせるような強靭なタッチのピアノ。 セルの完璧無比と呼べそうなオーケストラのアンサンブル。 やはり50年代~70年代は凄い演奏家たちがひしめき合っていた時代なんだなと思います。

(4) アルトュール・ルービンシュティン(ピアノ)
  ダニエル・バレンボイム指揮 シカゴ交響楽団

BVCC37636 1975年録音
(RCA原盤 BMGジャパン BVCC37636 1975年録音)



(5) クラウディオ・アラウ(ピアノ)
  サー・コリン・ディヴィス指揮 シュターツ・カペレ・ドレスデン

464681 1984年録音
(Philips原盤 DECCAレーベル 464 681 1984年録音 海外盤)

これもアラウの最晩年の録音。しかしこの曲にふさわしく華麗に縦横に指は鍵盤を踊り、時には荘重な響きで、支えるオーケストラもいぶし銀のような渋い響きで聴く者を圧倒してくる名演盤。 バックハウス盤と双璧をなす「皇帝」の名演中の名演盤と思って聴いています。


(6) ワルター・ギーゼキング(ピアノ)
   ヘルベルト・フォン・カラヤン指揮 フィルハーモニア管弦楽団

456 811-2 1951年録音
(EMI原盤 456811-2 1951年録音 海外盤)

「20世紀の偉大なピアニストたち」の中の1枚。 ギーゼキングの清澄で透明な響きのピアノが魅力の1枚。 確かウイルヘルム・ケンプで同年生まれだから、61歳で亡くなっている。あと10年生きていて欲しかった。

(7) ウラディミール・ホロヴィッツ(ピアノ)
   フリッツ・ライナー指揮 RCAビクター交響楽団

456 841-2 1952年録音
(RCA原盤 456841-2 1952年録音 海外盤)

ホロヴィッツ独特の鋭さと烈しさに溢れたピアノの響き。ステレオ時代に録音された盤を聴いていないので比較は出来ませんが、この独特の響きは健在なのかな? 1980年代の来日公演をTV放映で鑑賞しましたが、刀で言えば刃がボロボロになっていたという印象だったので。









お気に入りの記事を「いいね!」で応援しよう

最終更新日  2010年10月11日 00時09分11秒 コメントを書く


【毎日開催】
15記事にいいね!で1ポイント
10秒滞在
いいね! -- / --
おめでとうございます!
ミッションを達成しました。
※「ポイントを獲得する」ボタンを押すと広告が表示されます。
x
X

PR

キーワードサーチ

▼キーワード検索

プロフィール

とも4768

とも4768

コメント新着

http://buycialisky.com/@ Re:ドニゼッティ 弦楽四重奏曲/オキザリス(08/31) cialis in der apotheke ohne rezeptcost …
http://viagravipsale.com/@ Re:ドニゼッティ 弦楽四重奏曲/オキザリス(08/31) interacoes medicamentosas viagra <a…
shoko@ Re:デュカス ピアノソナタ/初雪草(08/29) 初めまして。 デュカスのピアノソナタを聴…
ifJU8X Really enjoyed this blog article.Much thank@ ifJU8X Really enjoyed this blog article.Much thanks again. Great. ifJU8X Really enjoyed this blog article…
ONY72s I cannot thank you enough for the post. Wil@ ONY72s I cannot thank you enough for the post. Will read on... ONY72s I cannot thank you enough for th…

フリーページ


© Rakuten Group, Inc.
X
Design a Mobile Website
スマートフォン版を閲覧 | PC版を閲覧
Share by: