月下美人の語り草

月下美人の語り草

らぐなlock 第10話



アイラの回し蹴りがアンデットモンキーの側頭部を強打する!
アンデットモンキーは声もなく倒れた。
・・・うむ、順調だな。今日はこのくらいにしておくか?

アイラ「はぁ・・はぁ・・・ふぅ・・。・・・そうね、もうすぐ日が暮れるし・・・。」

流れる汗を拭いながら答えるアイラ。
彼女の足元には無数のモンスターが倒れている。
初級ではもう敵はいないようだな・・・。

アイラ「明日は中級にしようかな・・・。」

・・・少し早いのではないか?装備を整えてからの方がいいと思うが・・・。

アイラ「・・・・・」

アイラは黙ったまま歩き出した。
どうやら明日は何が何でも中級に行くつもりらしい。
・・・仕方ない、今日はゆっくり休んで明日に備えるといい。


市場での一件があってから、アイラは森でモンスターと戦い続けた。
強くなるには経験を積む。それしかないからだ。
もちろん金を稼ぐ為でもあるが・・・。
とにかく周りにいる者全てが強者であり、自分はその足元にも及ばないという事実。
その状況が彼女に危機感と焦りを与えてしまったようだ。
危機感で気を引き締めるのは良いが、焦ってしまっては本来の自分を出せなくなってしまう。
私が助言しても良いのだが、立場上物語に大きく関わってはいけないのだ。
取り返しのつかないことになる前に、誰かがなだめてくれれば良いが・・・。


街の宿に戻ってきたアイラ。
やはり疲れがあったのだろう、食事を済ませ風呂で汗を流すと早々に眠りについた。
むぅ・・・やはり彼女らしさがない。
本来の彼女であれば戦いの後であろうと「酒だ~~♪」とか言って酒場に繰り出しドンチャン騒ぎをやってるはずだ。
そういえば先日の街のオヤジと知り合ったのも酒場だったな。
オヤジも今頃酒場で寂しく飲んでいるのかも知れない。


翌日、アイラは中級者の訓練場として知られるヨツンヘイムの塔に来ていた。
ここには初級の森とは比べ物にならない程の力を持つモンスターが、数多く生息している。
まだ入口だが、奥からは邪悪な波動が痛いくらいに感じられる。
アイラも少し緊張気味のようだ。

アイラ「よし・・行くわよ・・・。」

唾を飲み込み、意を決して進みだす。
通路沿いには凶悪な顔をした悪魔の石像が建ち並んでいる。
今にも襲ってきそうな気配すらしてしまう。
蝋燭の灯りがゆらゆら揺らめき、照らされた石像が動いているようにも見える。


ズシ・・ン・・・

む?なんだこの音は・・・。

アイラ「・・・・・!!」
ヒュンッ・・ガッ!!

アイラがいきなり後ろに飛んだ!
その一瞬後、アイラがいた場所に何かが突き刺さった!!
刺さった場所を見るがすでに姿を消している。
アイラはナイフを構え、暗闇の奥を睨みつける・・・。

アイラ「・・・・・。」

ズシ・・ン・・・

再びあの音だ・・・。どうやら地響きのようだな・・。
アイラも気配をとらえるのに意識を集中する。
そして・・・。

アイラ「・・・っ!?」
ドガァアアンッッ!!

何かの塊が降ってきた!!それを前転して避けるアイラ。
塊は振り返りアイラと対峙する。

アイラ「・・・!?か・・蛙ッ!?」

そう、塊の正体は蛙。ポイズントードであった。
アイラの背丈くらいはあるだろうか、その巨体を震わせゲコゲコ言っている。
その名の通り毒をもっている為なるべく戦いたくない相手だが・・・。

アイラ「そうもいかないよね・・・。」

うむ。毒をくらう前に早期決着をつけるのがベストだろうな。

アイラ「だね。んじゃぁ・・いきますかぁっ!!」

猛然とダッシュするアイラ。
力よりも速さを重視しているアイラは、風のように敵との間合いを詰め、息つく暇も与えずに連打で敵を仕留めることを得意としている。
今回のような巨体が相手の場合、スピードで相手を翻弄し隙をつく攻撃がもっとも有効なのだ。
近づくアイラに向かっておもむろに口を開ける蛙。そして何かが飛び出してくる!

アイラ「・・・くぅっ!!」

身体をひねりなんとかかわすアイラ。
・・・舌だ。舌を伸ばして攻撃しているのだ。
しかも力強く速い。当たればただでは済みそうもないな。
だがそれでもアイラは足を止めず走り出す。
確かに長引くとこちらが不利。ここは一気に仕留めるべきだろう。
舌を伸ばした瞬間を狙い、アイラは高く跳び蛙の背後を取った。
そして振り返りざまに後ろ回し蹴りを放つ!
避けることができずまともに喰らう蛙。しかしバランスを崩しただけでダメージをさほど受けた様子はない。
しかしアイラは止まらない。遠心力を利用した回し蹴りを続けて叩き込む。

蛙「グェェエエエッ!!」

悲鳴をあげ吹っ飛ぶ蛙。
さらに助走をつけて体重をのせた蹴りを放ち、高く跳ぶ!
宙で一回転すると、そのままの勢いで蛙の頭部にかかと落としを喰らわした!

蛙「グェ・・・!!」

さすがの蛙もたまらず倒れ伏した。
うむ。見事だ!

アイラ「はぁ・・はぁ・・・はぁ・・・。」

アイラは厳しい表情を隠しきれない。
やはり初級と違い、一瞬気を抜けば死が待っている。
そのことをアイラも身をもって実感したようだ。


呼吸を整え先へと進む。
・・・と、奥より剣を切り結ぶような金属音が聞こえる。

アイラ「・・・誰かいるのかな?」

ここは世界中から己を鍛える為に戦士たちが集まってくる。
たとえ人がいたとしても不思議はない。

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