『さらば愛しき女よ』 Farewell, My lovely | Kabu ＋ Plus

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Oct 2, 2006

『さらば愛しき女よ』　Farewell, My lovely

テーマ：おすすめ映画(4072)

カテゴリ： Movie

私立探偵フィリップ・マーロウ（ロバート・ミッチャム）はある晩一人の大男に肩を掴まれた。その男ムース・マロイ（ジャック・オハローラン）は刑務所から出てきたばかりで、かつての恋人ベルマ・バレントを探してほしいというのだ。二人は以前ベルマが働いていたバーを訪れたが、いさかいが起きマロイは黒人のボスを殺してしまう。そのためマロイは姿を隠し、以後はマーロウが調査を進めていくことになった。しかし手掛かりがなく、ベルマ探しは停滞していた。そんな時マリオットという若い男から金銭受渡し時のボディーガードを頼まれる。盗まれた宝石を買戻すというのだ。受渡しの夜、指定の場所へ行くとマーロウは何者かに殴られ気を失う。そして目覚めた時には警察に取り押さえられており、横にはマリオットの死体があった・・・

この二人の魅力に尽きるだろう。（年齢差29歳）
この二つの事件が絡み合いながら、次第に一つの線になっていく。こういう構造の推理小説は多いと思うが、チャンドラーは行きつく先に運命的な一組の夫婦を置き、その回りに欲や権力にまとわりつかれた様々な人間（暗黒街の顔役、娼窟の女主人、警察の本部長など）を配置し、それをこの時代独特のムードで包んでいる。マーロウと彼の友人で新聞スタンドをやっているジョージーとの話題がいつもディマジオの連続安打記録というのが効果的（このジョージーの協力ぶりがナカナカ良い）。

この原作自体は既に映画化されており、これが３度目となる。最初は原作発表（1940年）の僅か２年後で、「The Falcon Takes Over」の題名でアーヴィング・レイスが監督している（主人公の名前はマーロウではなく、舞台もニューヨーク）。次は1944年の「Murder, My Sweet」で、マーロウ役はミュージカルでお馴染みのディック・パウエル。そして本作となる。前２作は観たことはないのだが、どう見てもディック・パウエルよりミッチャムの方が似合っているだろう。チャンドラー原作の映画化には他に『三つ数えろ』(1946年。原作は「大いなる眠り」。監督ハワード・ホークス、主演ハンフリー・ボガート）や『かわいい女』(1969年。原作同じ。監督ポール・ボガート、主演ジェームズ・ガーナー）、『ロング・グッドバイ』（1973年。原作同じ。監督ロバート・アルトマン、主演エリオット・グールド）があるが、一番原作と雰囲気が似ているのは本作だと言われる。

そして本作は主演のミッチャムによるところが大きい。当時58歳だから決して若くはないが、非常に頼もしく、タフ。ユーモアたっぷりでありながら気だるい雰囲気も漂わせており、まさにハマリ役だ。そして魔性の女性ヘレン・グレイルを演じるのがシャーロット・ランプリング。相変わらず目付きが凄く、こちらもピッタリ。大男マロイ役はジャック・オハローランで、『スーパーマン』『スーパーマン２／冒険編』で悪人ゾッド配下の巨漢役だった人。他にジョン・アイアランド、ハリー・ディーン・スタントン、アンソニー・ザーブらも出演。『かわいい女』ではチョイ役でまだ無名のブルース・リーが出ていたが、本作ではチンピラ役でシルベスター・スタローンが登場。もちろんまだ下積みの時代。