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原作のもっとも古い映画化作品。小説の骨子をほぼ忠実になぞっているが、いくつか改変がある。その最も大きなものは、かつての恋人フローラの存在だ。原作にないヒロインの登場によって、映画に深みを与え、悲劇性を演出するのに成功している。ケンプが死んでしまったのは残念だが、あれも映画的恐怖の演出だったのだろう。アーメン。世界名作映画全集 107 透明人間 【DVD】
2018.07.05
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ブログには書いたことがないがこの映画は確かに観たことがある。そう思っていたが、記憶にある映像とは違っていた。ではあれは何だったのだろう。テレビの方か。ということで、借りてよかったDVD。原作になかったパスパルトゥの女好きとか、横浜に鎌倉の大仏があるとか、明治の文明開化の世のはずなのにどうみても江戸時代にしか見えないとか、そういう細かいことを気にしなければ、要所要所で小説の勘所を押さえていて、十分楽しめる映画である。配役について。フォッグス役の英国紳士ぶりが堂に入っているフォッグス役は『ナバロンの要塞』でミラー伍長を演じたデヴィッド・ニーヴン。パスパルトゥ役の俳優カンティンフラスはフランス人ではなくメキシコ人。序盤のスペインでの闘牛士ぶりが素晴らしい。経験者だそうだ。フィクス刑事は『宝島』でシルバーだったロバート・ニュートン。本作が遺作となった。インド人のアウダ姫役は『アパートの鍵貸します』、『あなただけ今晩は』のシャーリー・マクレーン。その他、酒場のピアニストにフランク・シナトラなど、大物俳優があちこちでカメオ出演しているのが特徴。監督はマイケル・トッド。DVD収録の特典映像に彼の伝記が載っている。それを見る限り、ADHDのように精力的で多才で活動的だったようだ。映画はこれ一作である。芸能界では脚本家や作曲家として有名だった。最初の妻はエリザベス・テイラー。何より凄いと思ったのは、後半部分、船を解体するシーンを撮るために自費で船を購入したという逸話だ。まるで黒澤明みたいではないか。【中古】DVD▼80日間世界一周 スペシャル・エディション 2枚組【字幕】▽レンタル落ち【アカデミー賞】
2017.07.10
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ウェルズの原作にわりと忠実な映画。ただし舞台がアメリカ、さらに現代とあって、多少改変されている。軍隊がこれほど闊歩するのはその典型だ。ただし、そのほかの構造は古典的。とくに最初と最後のナレーションはそうだ。全体として家族の物語になっているのはアメリカだからではなく、どこの国が制作してもそうなるだろうと思う。ただ『未知との遭遇』で友好的な宇宙人を描き、さらにそれを『E.T.』で具現化した監督がこういう作品を映画化したのは、やはり9.11の影響だろうか。【10点購入で全品5%OFF】【10月12日10時から10月20日13時まで全品ポイント10倍】【中古】宇宙戦争 / スティーブン・スピルバーグ【監督】 10P12Oct15
2015.10.25
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SF文庫とあるが、これは作者が『海底二万里』などで有名なヴェルヌだからだろう。実際には冒険小説であり、『ロビンソン・クルーソー』以後、もっとも人口に膾炙したこの分野の古典である。初めて読んだのは学校の図書館で、ぞくぞくするほど興奮したのを今でも覚えている。『ロビンソン』とともに10代のうちに出会ってほしい本だと思う。何度か目に読み返すと、いろいろ再発見がある。構成的には特に後半が、ダニエル・デフォーの作に近い。同時に、これは同じ作者による『神秘の島』――『海底二万里』の続編かつ『グラント船長の子供たち』の続編――のジュブナイル版でもある。少年の中で最年長で唯一のアメリカ人ゴードンが、チェアマン島を植民地と考えているのもほほえましかった。もとはアメリカもイギリスの植民地だったのに。翻訳は以下のとおりいろいろあるが、文庫本ではこれが唯一の完訳なのでここに紹介した。十五少年漂流記〔完訳決定版〕-【電子書籍】十五少年漂流記十五少年漂流記十五少年漂流記十五少年漂流記十五少年漂流記十五少年漂流記英語の勉強をしたい人はこちら。十五少年漂流記
2014.11.23
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『地底旅行』の映画版。『八十日間世界一周』はそのままでも映画になるが、こちらは難物だ。小説の前半はいかにも昔の読み物らしくまだるっこしい。だから娯楽映画にするために、死火山、分かれ道、迷子、キノコの林、地下の海、恐竜といった要素は残しつつも、かなり大きな改変をしている。……ライバルの教授、生きていたサクヌッセンムの子孫、あひるのゲルトルート、同行する未亡人、到達した地球の中心(!)、アトランティス文明。ことに未亡人の存在は大きく、女っ気に乏しいヴェルヌの原作に華を添えている。なお、小説では誰も死なないが、映画では一人が殺され、一人が疲労で、一人が事故で、一羽が食べられて死んでしまった。現代人の目から見ると特撮がいかにもちゃちだが、物語そのものが時代がかっているし、まあ穏当というべきか。また、邦題は英語のとおり『地底旅行』でよかったと意見もあるかもしれない。しかしこれは語感の問題だろう。【中古】 地底探検 /パット・ブーン,ジェームズ・メイスン,ヘンリー・レヴィン(監督),バーナード・ハーマン(音楽) 【中古】afb
2014.09.07
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ヴェルヌの最高傑作は何だろう。『海底二万里』か『八十日間世界一周』かあるいは永遠の少年文学『十五少年漂流記』か。そのどれもが捨てがたいが、個人的には『地底旅行』を挙げたい。適度に科学的で、適度に幻想的だからである。高校の時は地学を選んだ。当時は意識しなかったが、中学生の時この本を読んだ影響だったかもしれない。当時は確か角川文庫だった。地底旅行 角川文庫 / ヴェルヌ / 石川湧 【文庫】その後創元推理文庫でも読んだ。地底旅行今、ブックオフで105円で買ったなつかしの本をこうして何度目かに読み返してみると、岩波文庫の翻訳に対する姿勢に打たれる。21世紀のこのご時世、どこかの出版社だったら、ハンセン氏病だとかミネラル・ウォーターだとか、現代的な用語に置き換えている…かもしれない。原語に忠実に翻訳し、ことわけひとつしない態度はさすがである。作者及び本の内容については巻末の解説を読むに如くはない。ということで、解説から読み始める癖のある方は、くれぐれもご注意を。【送料無料】 地底旅行 岩波文庫 / ジュール・ヴェルヌ 【文庫】追記:リーデンブロック教授一行の携行食糧は、乾パン、干し肉、ジン、干し魚などだった。地底旅行ゆえ仕方ないともいえるが、よく海に着くまで壊血病にならなかったものだ。せめてジャガイモでも持っていけばよかったのに。
2013.09.16
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多分中学生の頃初めて読んで、ワクワクドキドキした小説。決して楽しいお話ではないが、怪奇幻想小説につながる恐怖があって、しかもその恐怖が解消するという結末がよかったのだろうか。今になって読み返すと、グリフィンは間接的に父親を死に追いやった罪で、あのような報いを受けたのだとも思える。【中古】 透明人間 岩波文庫/H.G.ウエルズ(著者),橋本槇矩(訳者) 【中古】afb
2013.04.12
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ポーの『ナンケット島出身のアーサー・ゴードン・ピムの物語』の贋作続編。欧米ではこういうのは結構ポピュラーで、『レ・ミゼラブル』『風とともに去りぬ』『高慢と偏見』『ハイジ』それぞれに贋作続編があり、質も高い。例外は『ドン・キホーテ』だが、これはまあさて置くとしよう。さて『氷のスフィンクス』だ。ヴェルヌは空想科学小説の祖であると同時に、啓蒙家でもある。作者が失われた兄とかつての友を探すべく南極を探検する男たちを描くこの物語に取り組んだとき、ポーの荒唐無稽な設定をそのまま踏襲するつもりがなかったことは、文庫本で500ページあるこのお話を「読めばわかる」ことだ。確かに贋作続編らしく、原典に登場する人物も一人二人登場するが、いずれもヴェルヌ的に装飾されている。いわゆる「とりつかれた」人々である。しかもうち一人は死人だ。読んで楽しめないことはないが、ヴェルヌの小説の中ではやはりマイナーな方であろう。おとなが読むと途中からネタがばれて、やや興ざめしないこともない。もっとも最後の「スフィンクス」の謎は、さすがヴェルヌならではの発想である。
2009.03.11
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以前にネモ船長と征服者ロビュールをこのブログ上で比べてみたことがある。それに倣って今度は『神秘の島』と本書とを俎上にあげてみたいと思う。どちらも続編である。どちらも謎の人物が影の支配者として現れ、物語世界を左右する。だが共通点はそこまでだ。ロビュールはネモ船長のような複雑な人格者ではない。自己顕示欲の化物であって、そのために最期は嵐に突っ込んで自滅する。作者最晩年の作であり、体力精神力ともに衰えていたのかもしれないが、やや筋書が性急すぎるきらいがあるのをヴェルヌのファンとして残念に思う。ただ作者描くところの自動車兼船兼潜航艇兼飛行機という代物は、科学が未だにフランスSFの祖に追い付いていないことを示すもので、科学的予言者でもあったベルヌの面目躍如というところであろうか。
2009.01.13
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黒いダイヤモンドとは石炭のこと。とうに廃坑となったはずの炭坑が、まだ「生きていた」と知らされた主人公が、かっての昔馴染みと再会する。ところが廃坑をよみがえらそうとすると次々に邪魔が現れて…いつか、本書で紹介されているウォルター・スコットの『ロブ・ロイ』や『湖上の美人』を読んでみよう。
2008.12.27
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ジャンガダとは何か。南米の筏の一種である。先の『動く海上都市』では太平洋を遊覧したが、今度の主人公は動く家に乗って、植村直己よろしくペルーからブラジルまでアマゾン河を下ろうというのである。何のために? 娘のために、そしてわが身と家族の名誉のために! その不撓不屈の精神にもかかわらず、第一部の終わりでとらわれの身となってしまうあたり、『皇帝の密使』のミシェル・ストロゴフを思わせるし、暗号の謎解きのスリルは『地底探検』以上である。そうして毎度のことながら今回も陽気な道化役、しかし物語の中で重要な役割を果たす道化役が出てくる。ラストの小気味よさは、まるで『走れメロス』のようである。物語を! もっと物語を!
2008.12.26
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別名『動く人工島』。一種のユートピア小説だが、外敵の来襲によってではなく、左右両陣営の対立によって理想郷が崩壊するという皮肉は今もなお痛烈である。大平洋諸島とクラシック音楽を愛するすべての人におすすめの本。ただし…人肉食の習慣については決してそのまま鵜呑みにしないこと。また人肉食の背景にある事情についてきちんとおさえておくこと。動く人工島
2008.12.24
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莫大な遺産が仏独双方の相続人のもとに転がりこんだ。二人とも科学者であった。一方はそれを理想都市建設のために遣い、もう一方は大量殺人兵器を製造した。さて善悪大戦の結果は…この作品の半世紀後にヒトラーが登場していなければ、フランス人のドイツ人への偏見に満ちた書物として今日陽の目をみることがなかったかもしれないという傑作(?)です。
2008.12.22
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ヴェルヌの登場人物はしばしば極端である。類型的であり、行動的であり、漫画的なまでの鉄の意志をもって読者を驚かせまた笑わせる。心理小説のような深みはないが、物語としての魅力は100年以上経った今も一向に衰えていない。ロビュールは何を征服したのか。ライト兄弟が空を飛ぶ17年も前に飛行機で空を征服したのである。当時空を飛ぶものといえば気球か飛行船しかなかった。技師ロビュールはエンジンを搭載した飛行機を空想の世界とはいえ、世界ではじめて造ったのだ。ヴェルヌの魅力はまた地誌学的、博物学的な面白さを味わわせてくれることである。『気球に乗って五週間』や『八十日間世界一周』、『地底旅行』などと同じように、本書でもヴェルヌの本領が十分に発揮されている。ただロビュールにはネモ船長のような魅力がなく、しかも『征服者ロビュール』は『海底二万里』の大空版という印象を読者に与えるので、翻訳がそれほど普及していないのかもしれない。ところで、『海底二万里』に『神秘の島』という続編があるように、本書にも『世界の支配者』という続編があるのだけれど、まだ読んだことがない。…どんなものかしら。
2008.11.30
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ヴェルヌの小説によくあるマッド・サイエンティストもののヴァリエーション。ただしここでは『悪魔の発明』のような主役ではなく、歌姫の幻影にとりつかれた狂的な男爵を影で支える、研究にとりつかれた科学者として登場する。迷信深い東欧の片田舎に聳え立つ廃墟のような魔法の城の精霊として…大体このような物語は、要塞と悪の主人公の死で幕が下りるのがお定まりだが、この小説ではマッド・サイエンティストは死ななかった。彼の行方は? 誰も知らない。
2008.11.28
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『八十日間世界一周』の三年後に書かれた冒険小説。原題は『ミッシェル・ストロゴフ』だけれど、邦訳の方が小説の内容を直截的に伝えている。いったいにヴェルヌの小説は多かれ少なかれ科学臭いが、『八十日…』と本書にはそれがあまりない。ただ日付変更線のトリックとか、盲目にならなかった理由などに科学的な解説をしているだけだ。恋と冒険とロマンスと、陽気なフランス人が登場してくるという点からも、両書は姉妹本という感じがする。ちなみに、鞭打たれる老母を前にしてストロゴフが思わず立ち上がってしまう場面は芥川の『杜子春』にもみられる。大正の鬼才もまたヴェルヌを愛読したのだろうか?皇帝の密使(上)皇帝の密使(下)ロシアン・レジェンド 皇帝の密使(DVD) ◆20%OFF!
2008.11.26
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ウェルズ原作のこの本は何度か映画化されたらしいのですが、本作に限っていえば、別物と考えたほうがいいでしょう。エロイやモーロックの設定がずいぶん違っていますし、何よりあの程度の月の「事故」で高度に発達した人類文明が崩壊してしまうというのが理解できません。せめて核戦争ならまだしも文明批評的な視点が生かされるのですけれどもね。まあ、映画『猿の惑星』エンターテイメント版というところでしょうか。ただモーロックの統率者の以下の台詞はタイム・パラドックスの説明として大変興味深いものでした。「おまえは死んだ恋人の命を救うためにタイムマシンを発明した。だが過去に戻ってその恋人を助けてしまったら、そもそもおまえがタイムマシンを創る動機がなくなる。したがってタイムマシンはこの世に存在しなかったことになってしまう。そんな矛盾が許されると思うかね?」
2007.08.30
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H・G・ウェルズ原作の『モロー博士の島』の映画版。19世紀のヴィクトリア朝小説が20世紀のマッド・サイエンティストの物語になっているとか、人間に忠実なはずの犬人間が「ご主人様」に牙を向けるなど多少の変更は見られるものの、原作の精神はよく伝えてあると思います。なるほど、小説では、「モロー博士が人間を獣に変えている」と(事実を正反対に)勘違いして語り手の主人公が獣人間相手に演説する場面がみられるが映画ではそれを省いている、という違いはあります。そのかわり監督はほぼ完璧なキャット・ウーマン(猫娘)を創りあげ、原作にはない「嫉妬」というモチーフを打ち出しています。だいたい、ウェルズの小説自体「タイム・マシン」をのぞいてあまり女気がないので映画化に当たっては新たなヒロインを登場させなければならないのです。キリスト教的な創造者と被造物の関係の問題、『ガリバー旅行記』以来の英国の(アンチ)ユートピア小説の伝統、などという七面倒くさいことを抜きにしても、充分楽しめるエンターテイメントになっていると思います。なお、本作は『D.N.A.リローデット・モロー博士の館』とは別作品ですのでご注意を。
2007.02.12
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有名な本。10代の頃に出会って、何度読み返したことでしょう。角川文庫のこの本は、映画『タイム・マシン』の公開に乗じて編まれたアンソロジーなのだけれど、それなりに楽しく読むことができました。表題作の要素をいくつかに分類して、それぞれ編中のどの作品に同じような因子が見出せるかを、試みにやってみましょう。「スピード」…『盗まれた細菌』『新神経促進剤』『奇跡を起こせた男』「二つの種族」…『深海潜航』『みにくい原始人』「帰らざる主人公」…『深海潜航』『くぐり戸』「作者以外の<私>が語る他人の体験談」…『深海潜航』『くぐり戸』なお表題作は、他にも色々な出版社から出ています。
2006.06.01
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