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2023.08.05
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カテゴリ: 震災、原発事故

「ウクライナ」戦争開始以降の主な記事(PDF版)

  福島第一原発のタンクに保管されている「処理水( 割は基準に照らしても汚染水)」を八月中にも海洋放出という予定・方針を東電も政府も変更していませんが、どのような問題があるでしょうか。

おもに、 BUSINESS  INSIDER 掲載された 岡田充 記事 を参考にまとめておきます。

まず、反対しているのは地元の漁協や「反原発」の立場の人々、中国などだけではない言うことを確認しておきましょう。上記記事によると、 オーストラリア、ニュージーランド、パプアニューギニアなどの太平洋島しょ国が加盟する『太平洋諸島フォーラム( PIF )』 は、 IAEA が報告書を公表する直前の 6 26 日、プナ事務局長が以下の声明を発表した」ということです。

「放射性廃棄物その他の放射性物質」の海洋投棄は 「太平洋島しょ国にとって、大きな影響と長期的な憂慮をもたらす」ため 、「代替案を含む 新たなアプローチが必要 であり責任ある前進の道である」と、 プナ事務局長は海洋放出に反対する態度を表明した。

また、中国外務省は七月四日、以下の見解を明らかにしています。

1,日本側は周辺近隣国など利害関係者と協議せず、(海洋放出を)一方的に決定したが、 原発事故で生じた汚染水を海に放出した前例はない。

(「各国も原発から汚染水を排出している」と日本政府は主張するが、「排出しているのは冷却水であり、事故で溶けた炉心に接触した汚染水ではない」。)

2, 発生源が異なり、含まれる放射性核種が異なり、処理の難度が異なり、比較にならない。

3, IAEAは日本の浄化設備の有効性と長期的信頼性を評価しておらず 、今後 30 年間、すべての放射能汚染水が処理基準をクリアすることを保証することはできない。

などの根拠をあげ、「日本が原発の正常運転による排水を持ち出し、海洋放出の誤った決定を“白”としようとするのは、科学の看板を掲げて国際社会をミスリードするものだ」としているのです。

 中国の上記見解は簡潔なもので、それについてのコメントは、容易にできます。

 まず、 1については紛れもない事実 です。したがって、 2「含まれる放射性核種が異なり処理の難度が異なる」という見解も全く妥当 です。

 福島第一原発の大事故から 12 年経過した今日も、汚染水(直接核燃料デブリに接触した高濃度の放射能汚染水)の発生は1日当り100トンに達しています。東電は、この汚染水を多核種除去設備= ALPS (アルプス)に送り、沈殿処理や活性炭などの吸着により放射性物質をとり除くとしていますが、実際はどうなのでしょう。

 タンクに溜まった 「処理水」の 割はトリチウム以外の 62 の放射線核種が全体として濃度基準をこえ 、最大で 1 9909 倍になっていることがメディアのスクープで明らかになりました。残っている核種は主に、ストロンチウム 90 、セシウム 137 、セシウム 134 、コバルト 60 、アンチモン 125 、ルテニウム 90 、ヨウ素 129 などです。

東電はそれまで、トリチウム以外の核種はALPSにより除去できているとのデータのみを示していましたが、上記報道後、 東電も日本政府もトリチウム以外の放射性物質を含んだ原発汚染水がタンクに貯蔵されていることを認めざるをえなくなりました
 そもそも「報道されてからようやく『処理水』とされてきたものの70%以上が基準濃度を超えていたことを認める」という現状こそが危険ではないでしょうか。

​ 東電と政府は ​​​ 「​事故発生からしばらくの間、貯蔵されている水が原発敷地外に与える影響を急いで下げるため、処理量を優先して実施したため」 と言い訳を述べていますが、現在も日々 100 トン以上の汚染水が出続けてその処理が必要とされている中、タンクに溜められている 70 %以上の汚染水を「急がずにしっかりと再浄化する」ことが本当に可能なのでしょうか。
 そして、中国の指摘= I AEAは 日本の浄化設備の有効性と長期的信頼性を評価しておらず、 今後30年間、すべての放射能汚染水が処理基準をクリアすることを保証することはできない 」は全く妥当でしょう。IAEAの報告書(日本政府と東電が海洋放出の根拠になると主張している報告書)が、わざわざ
海洋放出の方針を「推奨するものでも承認するものでもない」と記載している ことがその正しさを証明しているように見えます。
海洋放出を実施した場合、 増え続ける汚染水と放射性物質の総量がどこまで膨れ上がるのか、環境への負荷が許容範囲に収まるか、という点についても IAEAは保証できない のです。(汚染水の原因である)核燃料デブリを取り出す見通しなど全くたっていないわけですから。 
 そもそも、 環境汚染に関する規制がなぜ「濃度規制から総量規制に変わっていったのか (例えば水と混ぜれば濃度は薄まるが、環境への負荷は汚染物質の総量によって決まる)」というのは 公害・環境問題の基本 です。

自民党の茂木敏充幹事長は 7 25 日の記者会見で、海洋放出を批判する中国に対して 「科学的根拠に基づいた議論を行うよう強く求めたい」と述べたそうですが、それは日本政府や東京電力にブーメランとして返ってくる言葉 でしょう。
〔それにしても、「処理水問題」に関する報道の多くは「日本政府の発表・主張」の垂れ流しが多く、上記の事実(例えば中国外務省の見解)さえまともに確認しているのか疑わしいのは遺憾です。:8月9日追記〕

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Last updated  2023.09.29 19:14:32
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