しろねこの足跡

しろねこの足跡

おとうさん


おじょうさんは、寒くて足がかちかちになったり、怪我をして血が流れたときはすぐに泣いてしまいました。

でも、ココロが凍らされたときや、傷つけられたときは決して人前で泣くことはありませんでした。
おじょうさんの涙を見ることができたのはしろだけでした。
そしてしろの役目は、おじょうさんの涙をそっとなめて、消してしまうことでした。

おじょうさんは、普通の少女が思春期を迎えて父親を避けるようになるずっと前から、おとうさんとはおまりお話をしませんでした。

おとうさんはあまりに仕事熱心で、おじょうさんのことはおかあさんにまかせっきりでした。
そのくせ、おかあさんともあまり仲良くしていないようでした。

おじょうさんは、おとうさんと一緒に居ると、お話することがなくて、困ってしまうことが度々でした。
だって、おとうさんには、おじょうさんの好きな物語の内容やお絵かきやお人形遊びは、まるで関心をもってもらえなかったんですから。

おとうさんは野球が好きで、キャッチボールをすることを望んでいたのです。
おとうさんは、女の子であるおじょうさんに合わせて遊んであげるという考えは思いつかないようでした。

しろには、おじょうさんのかじかんだ足を暖めることはできます。でも、おとうさんとおじょうさんを仲良くさせることができる方法は思いつくことができませんでした。


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