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2007.10.04

１９９５年１１月　講談社より単行本
１９９７年１１月　ノベルス

自衛隊に納品する筈の大型ヘリコプターが、納品日の朝に盗み出された。
無人操縦で動いているヘリは高速増殖原型炉『新陽』の上でホバリング、そして犯人から
「ヘリには爆弾が積んである。原発『新陽』にヘリを落とされたくなければ、日本中すべての
　原発を破壊せよ」
という脅迫状が送られてくる。
しかし、無人の筈のヘリには手違いで子供が一人乗っていた。

という、冒頭からいきなり息詰まる展開でスタートするサスペンス。

とても読み応えのある話です。

原発を破壊せよ、という要求なんですが、犯人は決して原発反対派というわけではありません。
むしろ逆の、原発を作る立場の人間。
必要性もわかっていて、１００％の安全は約束できないが、その安全性をできうる限り高く
していくのが自分の仕事である、という人。

この本では、原発に対していろいろな立場の人間が出てきます。
原発があるのが当たり前で、危険性に対して麻痺している人。
核廃棄物の輸送の警備に付く警察官で、本人は原発に反対も賛成もないが、自分が任務として
いる『警備』の妨害をする反対派に対して、あまりいい感情を持てないという人。
絶対反対の人。

その中で、犯人が非難されるべきだとするのが「沈黙する群衆」。

国の政策として積極的に知らしめないというのがあるにしても、無知・無関心が、
やがては大きな悲劇を招くことになる。
そのために、原発の存在を、危険性を知り、その上で選択するべきだ、という主張。

恥ずかしながら、私もここです。
新潟の地震で柏崎の原発が止まって、東京電力が節電を呼びかけるまで、自分が使っている

こういうことって、原発に限らず他にもいろいろあると思う。
知らないのは仕方ないけど、知る機会があっても知ろうとしないとか、知っても興味がないとか
よくないとわかっていても何もできないとか。
国家だって政策として知らせない部分は大きいでしょ。
国民が無知な方が、治める側は楽に決まっているんだから。

でも、だからこそ無知であるのはやめよう、という警鐘と取れました。
なかなか考えさせる本ですね。