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Rakugan is Kitten

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2008.02.18

２００７年４月　講談社より
初出一覧
　「いまできる最善のこと」　１９９８年１０月　小説現代
　「畳算（たたみざん）」　　１９９９年８月　　小説現代
　「サクラ」　２０００年６月　問題小説
　「媽媽（マーマー）」　２０００年７月　小説現代
　「断ち切る」　２０００年９月　オール讀物
　「９２０を待ちながら」　２００４年５月　『乱歩賞作家　白の謎』

久しぶりの福井晴敏、しかも珍しい短編です。

周辺の登場人物達もＣＩＡだのＫＧＢだの華僑だの、スパイてんこ盛りです。

「いまできる最善のこと」は退役した元情報局員が、やはり元北朝鮮のスパイに命を狙われる話。
今はサラリーマンとして武器も持たない主人公の戦いがスリリング。

「畳算」は、かつてＫＧＢのスパイだった男が妻に託したスーツケースを、情報局の担当者が
引き取りに行く話。
と言っても簡単な話ではなく、そのスーツケースは核爆弾で、２０００年問題でコンピュータが
誤作動したら爆発するかもしれないという代物。
元は赤坂の芸者だったという妻は、今は老婆。
不愛想で強欲な頑固ババァ、といった登場なんですが、すごく魅力的でした。

「サクラ」は情報局の事務方の男が、同僚に交代を頼まれて現場の任に就く。
相棒は元ＳＯＦ（特殊邀撃部隊）にいたという、１９歳の少女。

主人公とのミスマッチなコンビ。
実戦においては力不足な主人公ですが、真希の前で誠実なオトナであろうとする姿が好ましい
話でした。

「媽媽」は、情報局員であると同時に、妻であり、小さな子供の母である由美子の
家庭と仕事の両立に悩む話。

母としての後悔と、母だからこその決意がすごい。
ムチャするなあ、大丈夫かなあと、思わず心配になる話。

「断ち切る」は、年老いた元スリの男が主人公。
服役を期に引退したスリのもとへ、かつて彼を追っていた刑事がやってきてスリの仕事を
依頼する。
その仕事が渦巻く陰謀の世界に通じるとも知らず、引き受けた老スリ師の頑張りと
ほのかな恋心が微笑ましいです。
陰謀はドッキドキですが。

「９２０を待ちながら」は、正規の情報局員の下で働くＡＰ（警察補助官）が主役。
タクシー運転手として働きながら、ＡＰとしての仕事もする須賀。
そして須賀が組んで仕事をすることになったＳＯＦ要員であり、スナイパーでもある青年。
「偽名でもいいから名乗れ」と須賀が名前を尋ねると、青年はキムタクの看板を見ながら
『木村』と名乗るのが、ちょっと面白かったです。
でも最後に、彼の本名が『如月行』であることが判明。
おおっ、あなたでしたか、という感じでした。
それでいくと『９２０』＝『結城二曹』も特別な誰かなのかな、と思いました。

どの話も、スパイが暗躍する話なんですが、それよりも人と人とのつながりとか想いとかに
焦点が当たっていて、いい話だなあという印象が強かったです。
私的には「畳算」と「サクラ」が好き。

おもしろかったです。