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2011.09.07

２０１０年１月　ちくまプリマー新書

マドレーヌ夫人は外国語を話す優雅な猫。
その毎日は、思いがけない出来事の連続で、不思議や驚きに満ちている。
（裏表紙紹介文より）

鴨川ホルモーが期待はずれだったので万城目学はもういいやと思っていたのですが、
猫が登場するオススメ本として紹介されていたので、もう１冊読んでみることにしました。

猫のかのこちゃんってウチと同じ名前～♪と思って手に取ったら、
かのこちゃんは人間で、猫はマドレーヌ夫人の方だった。(^^;

マドレーヌ夫人はアカトラ（茶トラのこと？）上品な猫。
近所の雌猫仲間と空き地で集会をするのが日課です。
猫達にとっての外国語というのは犬の言葉のこと。

マドレーヌ夫人と夫との愛情深く優しい関係を中心に、
元気いっぱいのかのこちゃんと友達のすずちゃんとの友情などを描いています。

集会で集まった猫達がかわす挨拶の言葉の
「ごきげんよう。今日もいい天気でありますように」
「今日も穏やかな１日でありますように」
というのが、いかもに猫の願いを現している感じ。

最後はちょっと切なくて泣きますが、猫らしさを感じられるいい話です。

【送料無料】かのこちゃんとマドレーヌ夫人
価格：903円（税込、送料別）

以下、ネタバレとなりますのでご注意ください。

マドレーヌ夫人の夫は、かのこちゃんの家で元々飼われていた柴犬・玄三郎。
マドレーヌ夫人は犬の言葉がわかるのではなく、夫の言葉だけがわかるんだそうです。

この２匹の出会いが可愛かった。
雷の鳴る激しい夕立の時、恐ろしさのあまり思わず玄三郎の犬小屋に飛び込んでしまった

絶体絶命のピンチと思いきや、玄三郎は犬小屋の中を見つめたまま
どしゃぶりの中に座り込んで動かない。
「困ったな。僕も雷が怖いんだけどな」という紳士的な玄三郎がちょっと可哀想で
でも可愛くてステキ♪

ある日、マドレーヌ夫人は玄三郎から猫又の話を聞きます。

最初に目が合った人間（ご近所のかとりさん）の中に意識が入ってしまうのです。

かとりさんとしての行動は、マドレーヌ夫人にとっては大冒険。
水が大嫌いなのに、かのこちゃんの小学校に行き水泳の指導をしたり、
集会所だった広場にかけられてしまったビニールシートを取り除いたり。

自分の身に起こったことが驚愕で半ばパニックのマドレーヌ夫人ですが、
その状態でも夫・玄三郎のためにやれることを精一杯やるのが可愛い。
かのこちゃんに「今の玄三郎のカリカリを同じ味でソフトタイプに変えて」と頼んだり、
肉屋に赤身の肉を買いに行ったり。
人間はお金を払って店で買い物をする、お金は組み合わせて使う、ということを知る
賢いマドレーヌ夫人ですが、初めての体験にドッキドキ。
緊張で掌に汗をかいて「肉球がないのに人間も手に汗をかくのね」と考えたり。(^^)

必死の思いで肉を買って帰り、玄三郎のお皿にそれを入れたところで眠くなるマドレーヌ夫人。
エアコンの室外機の上に座り（そこはいつもの寝場所）眠りに落ちる間際に、
珊瑚色の首輪をしたアカトラの猫（恐らく中身はかとりさん）と目があって・・・・・
目覚めた時は猫に戻っていました。

全ては夢だったのか・・・と釈然としないマドレーヌ夫人なんですが、
そこへ集会仲間の三毛猫・ミケランジェロが広場のビニールシートがなくなったと知らせにくる。
そして昼寝から目覚めた玄三郎が「赤身の肉を食べた夢を見た」ととても幸せそうな顔を
するのです。
玄三郎の幸せそうな表情に、泣きそうな気分になるマドレーヌ夫人。
２匹の深く静かな愛情が愛おしい。

でも、最後は玄三郎が高齢のためガンになって死んでしまうのです。(T_T)
人間を呼んでこようとするマドレーヌ夫人を玄三郎は引き止める。
呼べば自分は家の中に入れられてしまい、夫人と引き離されてしまう（夫人は外猫）、
僕は最後まで君と一緒にいたいから、と。
泣いたよ、朝っぱらから通勤のバスの中で。

玄三郎を看取ったマドレーヌ夫人は、家を出ていくことを決意。
元々、定住を好まない猫であったのが、玄三郎がいるからこそこの家にいたのだそう。
そこで『家』の幸せを知り、猫仲間との集会の楽しさを知った。
そのことに感謝して、でも玄三郎がいない今、元の暮らしに戻ろう、と。

かのこちゃんが、何故かマドレーヌ夫人の気持ちを理解してくれていて
「マドレーヌが決めて。もし残ると決めたらもう一度首輪をするからね」
と首輪を外してくれるのです。
そして旅立っていくマドレーヌ夫人。

淋しい結末ですが、溜息をついて受け入れるかのこちゃんが少し大人になったようで
そこが救いとなって暗さはないです。
生き物を飼うというのは、こういうことだけれども、
でもずっと皆で、玄三郎もマドレーヌ夫人も一緒に幸せな夢を見たかったなあ。

マドレーヌ夫人と玄三郎が魅力的なので、そっちばかりになりますが、
かのこちゃんも素敵な子でした。
すずちゃんと最初に知り合った時、すずちゃんが『鼻てふてふ』をしているのを見て
「ただものではない」と思うあたりなかなか個性的な子。
『鼻てふてふ』というのは、両手の親指を左右の鼻の穴に突っ込んで
残りの指を蝶々みたいにひらひらさせる技。(^^;
あと茶柱を見たいのに見れなくて、トイレでそれを初めて見るとか。
子供らしい馬鹿馬鹿しさと真剣さ、すずちゃんに対する誠実な気持ちとかが
いい感じです。

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