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2011.12.20
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カテゴリ: 読んだ本
2004年6月 文藝春秋より
2007年6月 文庫化
2009年9月 映画化


巨大な安土城築城を命じられた岡部又右衛門と以俊は、無理難題を形にするため、
前代未聞の大プロジェクトに挑む。
長信の野望と大工の意地、情熱、創意工夫―――すべてのみこんで完成した未會有の建造物の
真相に迫る松本清張賞受賞作。

(裏表紙 紹介文より)


主人公は岡部又右衛門以言(もちとき)と、息子の以俊(もちとし)。

又右衛門は熱田神宮の御修理番を務めていた宮大工。
桶狭間の戦いに赴く前に戦勝祈願に立ち寄った信長から、
今川義元の首を載せるための輿を造るよう命じられます。
短時間に決着が着きますから、間に合うように輿を造って届けた又右衛門。

「尾張に信長あり」と知らしめるものを作れと命じます。
これにも見事応えた又右衛門は信長に気に入られて、信長に仕える番匠(ばんじょう。大工のこと)
に取り立てられます。

当時の大名に仕える番匠は結構大変だったようです。
信長の馬廻りとして戦に付いていって砦や宿舎、攻城用の梯子を造るのも仕事。
戦場となる場所にいるわけですから、具足を身に着け、時には槍で敵兵を突き伏せたりもする。

ある日、又右衛門は安土に城を建てるよう命じられます。
信長の注文は、五重の天守(実際に又右衛門が造ったのは七重)、南蛮風のデザイン、
天守櫓の内を御殿造りにして信長が住めるようにし、内部には吹き抜けを造れと
今までにない奇想天外な要求ばかり。
この要求に応えるため、大工・石工・瓦職人その他多くの職人達が、


2009年9月に西田敏行が主人公で映画化。
原作がすごく面白かったから映画を見たいような、面白かったからこそガッカリしそうな。
ネックは、又右衛門のイメージが西田敏行と重ならないことと、
私が西田敏行をあまり好きじゃないことかな。(笑)



以下、粗筋&ネタバレとなりますので間を開けておきます。






















りっぱな城を建てるためには材木が大量に必要。

又右衛門は木曾上松(あげまつ)の檜を求めに、出向きます。

しかし、木曾は武田勝頼の領国。
治めているのは木曾義昌。
信長は又右衛門に、黄金を払って檜を買い求めたい旨の直筆の手紙を持たせてくれます。

木曾義昌は武田方ですが、迷います。
砦や城を建てるために材木を只で供出しろという勝頼に対し、
信長は黄金を払うと言う。
今後の趨勢を考えたら、武田方より織田方に親交を深めた方がいいのではないか、
しかしそれが勝頼に知られたらこの城が攻められるのではないかという恐れ。

それを又右衛門が説得します。
自分は天守の用材として木曽檜を求めにきただけ、譲ってもらえなくても遺恨は残さない、と
前置きした上で
「天下一の木曽檜、お伐りあそばして、天下一の天守を建てさせていただきとう存じます」。
その言葉に感じ入った義昌は、
「その方の気概に打たれた。檜もそちのような大工に使われたかろう」
と承知し、山の案内役として上松の大庄屋で杣(そま)の頭・甚兵衛を同行させてくれます。

又右衛門の要望は、一尺五寸角(45.45cm)で長さ八間(14.4m)の大通柱を4本。
柱の状態でそれなので、木の状態だと根本の差し渡し4~5尺(一尺は30cm)の巨木。
甚兵衛は、伊勢神宮への式年遷宮のために用意してある御備木(おそなえぎ)へと案内、
その木を4本伐ることに。

巨大な木は伐るのも運ぶのも大変で時間がかかります。
又右衛門は先に安土に帰ります。
木を伐り、その木を川まで運び、川を流すのは甚兵衛の仕事。

大きなカーブを無事に流すため、甚兵衛を頭に杣人達が待機しています。
大雨による増水で川は急流、最初の2本は勢いよく流れていきましたが、3本目がつかえてしまう。
甚兵衛は4本目を流すのを待つよう上流に指示しますが、綱が切れて4本目が流れてしまいます。
側にあった小屋を壊し、つかえた3本目の上に板を並べて4本目がその上を流れるようにして
待ち受ける甚兵衛達。
急流に乗って流れてきた4本目は板の上を滑り岸に乗り上げ、甚兵衛を押しつぶしてしまうのです。

ずっと檜の到着を待ちわびていた又右衛門。
数ヶ月経ってやっと運ばれてきた檜の1本が、なんと折れている。
動揺する又右衛門に手紙が渡されます。
甚兵衛からの手紙で、
「まことに まことに もうしわけなきしだいにて めんぼくもこれなく かえすがえすも
 くちおしくはじいるばかりにて候」
とあり、甚兵衛が檜を守ろうとして命を落としたこと、死の間際まで棟梁に申し訳ないと言い続け、
その手紙を書き残して息を引き取ったことが伝えられるのです。
その心意気に、大通柱よりよいものをもらったと力強さを感じ取った又右衛門。
檜が折れていてはと心配する周囲に、「天守は柱で立つのではない。気骨で立つのだ」と告げる。
読んでいて、思わず目が潤みました。

築城中はトラブルが続出。

安土山の隣の観音寺山には武田側の武将・六角承禎の砦があります。
すぐ隣に城なんか建てられたらたまらない六角承禎は、乱波(らっぱ)を放って
築城の妨害をします。
大石を運ぶのに事故が起きるように綱を切ったり、井戸に汚物を放り込んで疫病を流行らせたり。
又右衛門の妻も疫病で命を落としました。

又右衛門が天守から落ちて、骨折したこともありました。
その間、総棟梁がいないと困るので、息子の以俊が代理を務めました。
又右衛門から見ると未熟で頼りないと思っていた以俊。
しかし配下の番匠達に支持され、何とか頑張っているのを見て評価を上げる。
以俊は以俊で、いつまでたったも半人前扱いをする父親への反発があったのですが、
実際に棟梁として指揮してみて父親の偉大さを知るのです。
2人が解り合い、距離が縮んだのが怪我の功名といったところ。

屋根が沈む、というトラブルもありました。
最初に書いた設計図より、信長の命令で壁を厚くしたのです。
すると大通柱周囲だけが無事で、周囲の柱は重さに耐えかねて屋根が下がってしまった。
このまま大通柱にばかり荷重がかかっては、柱が倒れてしまう。
又右衛門は「柱の声を聞き、柱と相談する」と一夜を築城中の天守で過ごし、
大通柱の根本を4寸短く切ることにします。

切ると言っても、既に立っている柱なわけですよ。
周囲の木組みともがっちり組み合わさっている。
根本を切ると同時に、切った箇所に楔を打ち込んで支え、最終的に4本同時に楔を抜く作戦。
危険かつ熟練が必要とされる作業なので、岡部一門だけで行います。

すごく怖かった。
切った後、柱の下に手を入れて、礎石と合うようにカンナできれいに削るんですよ。
その作業の真っ最中に、ミシッとか音がするの。
柱が落ちたら手を挟まれて大怪我、もしバランスが崩れて倒壊したら全員死んでしまう。
ハラハラしました。
全ての柱を切り終わって、又右衛門の合図で一斉に楔を抜く。
すると柱か動かないんです。
息を詰めて見守る番匠達。
すると4本の大通柱がゆっくりと下がっていき、静かに礎石へと密着する。
その後は軋む音もなく、揺らぐこともなく。
ミッション大成功なのです!

そんなこんなで建ち上がる安土城。
満足感と達成感で感無量の番匠達。

しかし信長は止まることを知らない。
今度は摂津石山に城を建てる、と又右衛門に告げます。

信長について京都へ向かっていた又右衛門と以俊。
また大きな仕事にかかるという興奮もあり寝付けずに、宿舎で夜中に起き出します。
そして又右衛門が「今度の指図(設計図)はおまえが書け」と以俊に言う。
以俊を一人前の棟梁として認めたのでした。

しかし周囲が騒がしくなります。
なぜならそこは本能寺。
「敵襲!」の叫びに、「どこのどいつだ!」と怒鳴ると「旗印は桔梗」という返答が。

又右衛門と以俊は信長の寝所に走り、自分達が梯子をかけるのですぐに逃げるよう進言、
しかし信長は「光秀ほどの者が自分を見逃すものか」と逃げません。
代わりに、2人は安土へと駆け戻れと命じます。
「天主の番、しかと務めよ。焼いてはならぬ。焼かせてはならぬ」

又右衛門と以俊は塀を乗り越えて本能寺から脱出。
途中、又右衛門は明智軍の兵に槍で刺されてしまいます。
兵が以俊も狙おうとするのを又右衛門が身をもって防ぎ、以俊だけが安土城へと戻ります。

焼くなという信長の命令で、留守役の木村次郎左右衛門が城を守っていると
光秀がやってきます。
木村は「新しい主人に受け渡すまで城を守っていおりました」と堂々と光秀を迎え
光秀に城と財宝を渡す。
こうして光秀は安土城の新しい主人となったわけですが。

光秀は毛利戦から引き返してきた秀吉を迎え撃つため出撃し、そのまま帰らぬ人に。
本能寺で信長と共に長男・信忠が死んでしまったので、継ぐべきは次男・信雄。
木村は、城を守るためとはいえ光秀に城を明け渡してしまった、織田にとっては裏切り者なので
信雄を待つわけにはいかず、城を出て行きます。
城は以俊以下の岡部一門のみが守ることに。

そして信雄が入城してくるのですが、信雄は残念ながら愚将。
安土城を見て「親父に睨まれているようだ。奇態である。早々に立て直せ」と以俊に命じます。

余談ですが、城を建てた番匠は建て終わったら終わりというわけではないのです。
メンテナンスが必要なので、城の主が変わってもその城付きの番匠として
ずっとケアを続けるんですね。

光秀も、安土城に自分がおさまりが悪いと感じていました。
信雄も奇態だ、と。
信長のために、信長のセンスで建てられた城。
他の誰にも使いこなせないみたい。

そこへ六角承禎が攻めてきます。
信雄は承禎を打ち破り退けますが、火矢により城が燃え始める。
以俊と岡部一門の番匠が駆け付けますが、信雄は「こんな気味の悪い城は燃えてしまえ」と
火を消そうとしない。
もうっ!バカっ!!

以俊達は必死で火を消そうとしますが、火の回りが激しく消せません。
「柱の悲鳴が聞こえる」と以俊が感じていて、亡き又右衛門の跡を継いで立派な棟梁となったと
感じると同時に、あれほど多くの職人達が丹精込めて作り上げた城が燃えるのが切なくて
涙なくしては読めませんでした。

最後は燃え落ちる安土城をキリシタン宣教師が遠くから眺めて終わる。
以俊の消息は書かれていないのですが、一門の人達がきっと連れ出したと思う。
岡部一門にとっては大事な新棟梁だし。

安土城、燃えてしまって本当にもったいなかったと思います。
残っていたら間違いなく世界遺産ですよ。

焼失の原因についてはいくつかの説があるそうです。
 1.明智秀満軍が敗走の際に放火した
 2.明智の残党を炙り出すために織田信雄が放火した
 3.略奪目的で乱入した野盗や土民が原因
 4.落雷

2については、ルイス・フロイスや当時の宣教師の記述で「織田信雄が暗愚だったので放火した」
というのがあるらしい。
ああ、もうっ。
バカっ!!





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Last updated  2011.12.20 17:35:22
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