雅の日記~お気楽生活をめざして

雅の日記~お気楽生活をめざして

2008年05月31日
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カテゴリ: 読書録

そいつが歩いてきて、後ろから行って、ガクーンって。頭、完全に陥没して、そいでボコボコ殴っていたら、「死んじゃう、死んじゃう」ってなって。
でも一番の嫌われ者なんだよ、そいつ。何てこたなかった。親よばれて、警察の相談所の奴が来て、兄貴たちが走り回ったから、許してもらったけれど。そういうのをやっちゃう。
だから途中で「何だコノヤロー!」って文句言えば、それぐらいで済むんだろうけれど、俺、耐えちゃうんだよね。そんで、いきなりポンとキレるからダメなんだよ。
そういうときは冷静な計算とかもはたらかないもんね。だから、「行け!」って言ってるとこがあってね。こう、自分で俺自身に「行け行け」っつって。刺されるかもしれないなんて関係ないって。
            ――『余生』北野武(ロッキン・オン)


北野武の独白録を、学生時代から時々読んでいる。
映画の「キタノ・ブルー」に象徴されるように、彼はどこか自分の生きかたをシニカルにとらえていて、自分の行動をもどこか客観的に捉えている。「自分が何をしたいか」というより、「どうやったらそこに溶け込むことができるか」という役割みたいなものに、神経質にこだわる一面がある。バラエティで着ぐるみを着ているのも、おそらくそういう性分からなのだろう。

そして、彼が自分を語るとき、この人は私と同じ仲間なんだな、という気持ちにかられる。
心に抱えている「いきもの」が、臨界を越えた途端、制御できなくなるのを知っているのだな、とも思う。

普段人と会う機会が多いせいか、さまざまな人を見てきた。仕事ではアグレッシブなせいか、自分が今まで生きてきた日数くらいの数の人間に、お会いしているのではないだろうか。

多くは素敵な人で、付き合ってくれる人たちは、私みたいなのと異なって、人格者が多い。
けれども、時には失礼な人、自分の要求ばかり押し付ける人、ひどいときには私に「お母さん」役を求める人がいる。
恋愛感情や同情をその人に持ってしまったのなら別だけれど、そうでないときはとても性質が悪い。

相手を傷つけたくないから、はじめはやんわりと諭す。


いいように利用されているなとわかっていても、多少なら知らないふりをして、手伝ったり、だまされてみることもある。

多分、そういうことをするようになったのは、親がすごく厳しくて、自分のやることはほとんど否定されて育ったからだと思っている。たけしの親もそうだったと書いてあった。

環境は人の心を創る。

そのせいかな、似たような幼少期を過ごした(と思われる)たけしの、時に見せる激しい衝動とか、道化の役を自らわざわざ引き受ける気持ちが、何となくわかる。

でも、そういうことをやっている自分が哀しくなって、「負」を溜め込むコップから溢れるから、時に暴発してしまう。
それがたけしにおけるフライデー襲撃事件だったり、バイク事故(本人は自殺かも、って言っている)だったりする。
フライデー襲撃の時、たけしは愛人を守るために他人を傷つけた。行為自体については、あとから後悔したんだと思う。そういう自分の心の処理ができなくなって、愛人の元に行くといって、バイクに乗り、無意識に自死を選んだのではないだろうか。
ブレーキを切ったあとがまるでなく、検視だけで判断すれば、まるで本人が突っ込みたくてやったようにみえる事故だったからだ。

私はもしそれが真実だとしても、何ら驚かない。
もし、自分が彼の立場だったら、多分そう考えて同じことをしたと思うのだ。

<お酒メモ>

チリカリテラ カベルネソーヴィニヨン グラスで1つ





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最終更新日  2008年05月31日 01時47分59秒
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Re:たけしの本(05/31)  
独酌  さん
心も鉄も硬いと曲がらずに折れちゃいますよ。
独酌の心はナマクラなので折れません。
お酒という名の潤滑油もちょいちょい(ほぼ毎日)注してますし。 (2008年05月31日 03時07分29秒)

Re[1]:たけしの本(05/31)  
slowlysheep  さん
独酌さん、こんにちは。
独酌さんの心は決してなまくらじゃないと思います^^

ゴールドは収縮性があるし、伸びやすいから、さしづめ独酌さんは「金の心」ですかね^^
(2008年05月31日 13時51分46秒)

Re:たけしの本(05/31)  
自悠人 さん
失礼ですが、たけしのコメントそうですし、川田アナのブログを見ていても何だか雅さんと同じ匂いがするんです。
自分が行き着ける所まで、行かなければならないような、そして、いつでも心に渇望感を抱いているような気がします。
少し、お力を抜くときがあってもいいのでは? (2008年06月01日 18時04分13秒)

Re[1]:たけしの本(05/31)  
slowlysheep  さん
自悠人さん、こんばんは。
先日はメールをありがとうございました。返事をかこうと思って時間が経ってしまったので、またあらためて書こうと思いますが、お礼だけ先に言わせてください。

匂い、については全然失礼だと思っていません。
多分、たけしさんも川田アナも、3カ月先まで自分が生きているかどうかは自分自身もわからない、と思って毎日過ごしているんじゃないんでしょうか。
生への渇望を抱くというよりは、それを探しているんだと思います。
また、どこかで「人生終わらせちゃいそうな自分」に、「おいおい」と突っ込んでみたり、客観的に自分を見ていたりする部分がある人たちなんだろうな、って思います。

どうしたら、楽になれるんでしょうかね。
性分なのかもしれませんね。 (2008年06月01日 23時19分00秒)

よくわからないもの  
MASS さん
>心に抱えている「いきもの」
という記述を見て、心が動揺した。

なぜ?

人間の心理に興味を持ったのも自分のスキルアップという理由があると同時に、自分を知りたかったこともある。

自分は本当は何を望んでるのか?
自分はどうしたいのか?

確かに勉強することで、いろいろ役にも立ったし、いろいろわかってきた。

でも、未だに核心は見えていないのかもしれない。

もし、全てを聞いて受け止めてくれる誰かがいたら、開放されるのかもしれない。
そんな気はしてる。
でも相手がいなきゃテニスと一緒で打ち込んでも何も返ってこない。

気分に波がある。元気でポジティブなときもあれば、落ち込みネガティブな考えが浮かんでくるときもある。落ち込みが深い時には、考えが暴走するときがある。そして、普段しない行動をとってしまう。どちらかというと自暴自棄的な行動。

肯定的意図があるとすれば、それは何? (2008年06月02日 14時14分51秒)

Re:よくわからないもの(05/31)  
slowlysheep  さん
MASSさん、こんばんは。
「いきもの」の持つ力(暴力かどうかは人によるでしょうか)のままにできない自分、それを解放しちゃいけないと押し止まる自分に、多分たけしさんとかも泣いてきたのかな、と思います。

たけしの文章を見るたび、「ウソでもいいから、自分を制御してくれる誰かを探したり、あるいは自分を社会的な『ヒト』たらしめる誰かがいないと生きていけないんだよ」と、言っているように感じます。

私はこういう正直なさまが好きです。
強がって、自分の「弱さ」を認めずに、相手に迷惑を振りまいている人に会うたびに「気の毒だ」と思います。
でもたいてい「気の毒な人」は誰かを傷つけて生き残り、たけしみたいに弱さを認めて、相手を探す(でもみつからない)人こそ、ある日ふとこの世からいなくなってしまうのかな。
そんな風にも感じます。

そうやって「今日が最期かもしれない」と思い、刹那を抱えて時を刻む人の姿は、一番人間らしい様だと思うし、私はそこにこそ、その人の「よさ」を見出すのです。

言い換えれば、人は死を抱えているときこそ、一番光り輝く生き物だ、と私は思っています。

それがMASSさんの言う「肯定的意図」の答えになるのでしょうか。

とりとめもない文章でごめんなさいね。 (2008年06月02日 20時21分23秒)

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