2003年07月28日
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ところが、「自由都市」のコーナーで一番目に付く場所に展示されていたのは、「鉄砲」だった。

「1543年、ポルトガル人によって種子島へ鉄砲が伝来する」は中学生でも知っている日本史上の重要な出来事なのだが、その後、鉄砲がどこで造られていたのかについてはあまり関心がなかった。

しかし今年の3月にtetywestは、たまたま琵琶湖のほとりの長浜市を訪れたのだ(中国旅行記を掲載中だったので日記には書きませんでした)。そして、そこに「国友鉄砲の里」と呼ばれる火縄銃の一大産地があったことを知ったばかりだった。

※偶然とはいえ、一年のうちで国友と堺という鉄砲の二大産地を訪れるというのも何かの縁だろうと、旅行から帰った後鉄砲の製造についていろいろ調べてみました。すると、これがまた面白いんです。以下は旅行記からはちょっとずれるのですが、鉄砲についての話です。

種子島の領主であった種子島時尭(ときたか)はポルトガル人から買った火縄銃1挺を、薩摩藩主島津義久に贈り、島津義久はこれをそのまま将軍足利義晴に献上しました。将軍義晴は、その火縄銃をすぐに江州国友(ごうしゅうくにとも、現在の滋賀県長浜市国友町)の鉄匠に貸して、複製を造るように命じたのです。当時の国友には、畿内随一の優秀な刀鍛冶たちが集まっていたためでした。

もうひとつのルートは、紀州の根来寺でした。杉坊(すぎのぼう)という僧侶が、種子島から火縄銃と火薬の製法を郷里の紀州根来寺(現在の和歌山県那賀郡根来町)へ持ち帰りました。のちに根来寺では鉄砲を巧妙にあつかう僧兵が猛威をふるい、信長や秀吉を脅かすようになったのです。後に江戸城の守衛をつとめた鉄砲百人組の根来衆もこの地の末裔たちです。

そして、もう一つのルートが堺だったのです。泉州堺の商人、橘屋又三郎が琉球貿易の途中で種子島に漂着し、偶然にも1543年の鉄砲伝来に立ち合いました。その後一年間火縄銃の製作を勉強して、これを堺に持ち帰ったのです。

この3つのルートの中で堺はやっぱり特別でした。当時商業都市として栄えていた堺は、鉄砲製造の大産地だったばかりか、鉄砲になくてはならない火薬の原料である硝石(しょうせき)の輸入港でもあったのです。

長篠の戦以後、鉄砲は戦国時代の戦になくてはならない必須アイテムになりました。特に信長は鉄砲の重要性を早くから見抜いていましたが、ただお金を出して鉄砲を揃えるだけではなく、堺を支配下に置くことを熱心にやったようです。千利休や今井宗久が歴史に登場するのもそのためです。信長は堺だけでなく国友や根来もその勢力下に組み入れていきました。まさしく、



だったと言っても過言ではないでしょう。

そして信長の戦略を熟知している家康は、大阪城を攻撃するために大量の鉄砲や大砲を造らせます。その集中砲火によって「夏の陣」で大阪城が炎上してしまうのは有名な話です。しかし家康は天下を取ってしまうと、あれほどお世話になった鉄砲を禁止してしまいます。それ以後幕末まで日本史に鉄砲が登場することはほとんどなくなりました。家康は鉄砲が「両刃の剣」だということを一番よく知っていたのでしょう。

ここでちょっとおさらいなのですが、長篠の戦は1575年ですから、鉄砲伝来から32年です。この時信長が使った鉄砲は3千5百挺だと言われています。

つまり鉄砲製造は30年で日本の一大産業に成長していたわけです。これがどのくらい凄いことなのかを理解するために、現代の日本を代表する自動車産業と比べてみました。初めて国産のガソリン自動車が走ったのは明治38年(1904年)です。それから30年後の1934年(昭和9年)の自動車産業はどうだったでしょう?まだまだ日本の代表産業には育っていませんでした。ちょうどその年に、戦前の国産トラックの代名詞になったDATSUN(ダットサン)を造った「日産」が誕生しています。DATSUN(ダットサン17T型) が発売されたのはその4年後の1938年です。

鉄砲という全く新しい産業がこんなに早く成長できたのは、当時の日本の製造業の技術レベルが世界と比べても負けないくらい高かったからなのです。堺が「自由都市」として発展したキーワードは「商業」と「貿易」だけではなく「工業」も重要なファクターだということを発見したtetywestです。






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最終更新日  2003年07月29日 00時38分50秒
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