『都市の感触』



この物語は近代都市『東京』についていろいろと書かれている。
エッセイではないが、ほとんど作者の感じたことが書かれているのではないのかと思う。
東京に付いて書かれているのであるが、あまり空間的なことは書かれていない。
いや、どちらかというと、東京を人間のいろんな感覚でとらえることを試みている。
色であったり、臭いであったり、蠢きであったり。

ぼくがすごく共感できたのは、一種ドライな東京、時としてコンクリートジャングルと揶揄されるこの状況を、積極的に肯定し楽しんでいることだ。
冷たいコンクリートも、硬いアスファルトも、無表情な都市の色彩も、においのないことも、情報が氾濫していることも、生々しいコミュニケーションがなくなってしまったことも。。
そう、小津安二郎が当時の東京をありのままに受け入れたように、日野は今の東京を受け入れうる。
東京は歴史も浅い。
それだけにセンシティブに変化を続ける。
そこに感情や関係にとらわれない人間の深層部分の欲求を見ることができるのかもしれない。

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