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この夏、家族と念願の無言館へ
戦没画学生の遺作を集めた美術館
ひとりで行っていたら号泣してしまったかもしれない
奥様の絵や、赤ちゃんのデッサンに胸を刺される
今の私たちと同年代の彼らの平凡な幸せな時間が
続きを刻むこともなく漂っているのが切なかった
これらを遺作として守り続けてきた家族を想った
絵だけを遺してこの世を去った夫を恋人を
どんな気持ちで想い続けたのだろうと思う
十字架の形をした建物から一歩出る
まぶしい光と美しい深緑
蟻にウェハースをあげる娘の屈託ない笑顔
いただいている幸せをかみしめながら思う
愛するものを戦場に送る時代にはしたくない
主よ、わたしたちをあなたの平和の道具としてください
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「あなたを知らない」
無言館館主 窪島誠一郎
遠い見知らぬ異国で死んだ 画学生よ
私はあなたを知らない
知っているのは あなたが遺したたった一枚の絵だ
あなたの絵は赤い血の色に染まっているが
それは人の身体を流れる血ではなく
あなたが別れた祖国の あのふるさとの夕灼け色
あなたの胸を染めている 父や母の愛の色だ
どうか恨まないでほしい
どうか咽かないでほしい
愚かな私たちが あなたがあれほど私たちに告げたかった言葉に
今ようやく 五十年も経ってたどりついたことを
どうか許してほしい
五十年を生きた私たちの誰もが
これまで一度として
あなたの絵の切ない叫びに耳を傾けなかったことを
遠い見知らぬ異国で死んだ 画学生よ
私はあなたを知らない
知っているのは あなたが遺したたった一枚の絵だ
その絵に刻まれた かけがえのないあなたの生命の時間だけだ
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