蘇芳色(SUOUIRO)~耽美な時間~

「リディキュール」



久し振りに大好きなパトリス・ルコント監督の作品を見る。
タイトルは「リディキュール」
「滑稽な」「愚かな」という意味らしい。
これは映画の中で盛んに出てきた「エスプリ」(機知)に対する言葉だと思われる。

18世紀末のフランス。
ドンブ地方は、不衛生な沼地が原因で、領民が疫病にかかっている。
この地方の領主ボンスリュドンは、沼の干拓事業の陳情のため、ベルサイユにやって来た。
田舎貴族の彼が見たベルサイユの貴族達は日々、エスプリに富んだ会話がどれだけできるかということだけを判断基準にして、権力闘争をしていた。
追いはぎにあったボンスリュドンを助けたベルガルド侯爵は、彼がエスプリに長けているのに気付き、ボンスリュドンの後ろ盾になってやることにする。
正義感と使命感に燃える田舎貴族のボンスリュドンは、自らのエスプリだけを頼りに、無事国王に謁見できるのだろうか。

さすがルコント監督の作品だけあって、かなり見せる内容。
フランス革命前夜のルイ王朝の煌びやかさが、贅沢なほどに感じるられる。
美術だけでなく、会話の部分もさすがと唸る。
エスプリが効いた会話が、どれだけできるかを競う貴族達が、現代に生きる私から見れば、滑稽以外何ものでもない。
ユーモアなどではなく、相手をいかに攻撃し、ぐうの音も出ないように言い負かすことができるか、それに全神経を集中させる貴族達。
退廃と悪趣味の世界だが、そういう世界を皮肉りながら、シャレた作品にまとめるあたり、さすがルコント監督。
まったく彼の手腕には舌を巻く。

ベルガルド侯爵役は、ルコント作品には欠かせない役者ジャン・ロシュフォールが演じている。
「髪結いの亭主」との違いを堪能できるかも。



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