蘇芳色(SUOUIRO)~耽美な時間~

「蝉しぐれ」

書籍名:蝉しぐれ
著者名:藤沢周平
出版社:文藝春秋

感想:NHK金曜時代劇で8月22日から、藤沢周平原作の「蝉しぐれ」を放送している。主演の内野聖陽が好きなので、見始めたのだが、なかなか面白い。相手役の水野真紀も、「ふく」という役柄にぴったり。
早速原作本を買ってきた。
藤沢周平の小説を読むのは初めてだ。464頁と分厚いのだが、細切れの時間を集めて、3日ほどで読んた。
主人公の、牧文四郎はいかにも時代小説の主人公らしいキャラクター。剣の達人で、清廉潔白、温厚で、思慮深い。(誉めすぎか?)ドラマを先に見たので、読み進めている最中は、文四郎の場面でいつも内野聖陽の顔がちらつく。
読後感は、「存分に楽しめたのだが、なにか物足りない」
ストーリーは盛り上がりもあり、ハラハラドキドキしながら読んだのだが。何だろうか。
文四郎やふくの性格も、魅力的だし。
あえて言えば、他の登場人物が在り来たりの性格設定だったからかもしれない。そして彼らの人生が読み取れない。文四郎ありき、なのである。いや、それが水戸黄門的な時代小説の良さなのかもしれないが。

私に物足りないと言う印象を受けさせたもの。それを考えると、ふと「ハリー・ポッターシリーズ」が浮かんだ。あれか。
「ハリー・ポッターシリーズ」は、主人公のハリー以外にも他の登場人物も、皆個性的で魅力的な人物が満載なのだ。彼らが主人公の物語も出来そうなほどである。
そして、その個性的な脇役たちの人生も描かれている。ハリーと出会う前にも、彼らには人生があり、泣き、笑い、苦悩したのだ。その結果、ハリーとであった頃の彼らの性格が形成された。そう言うことが読み取れる物語なのだ、「ハリー・ポッターシリーズ」は。

しかし、藤沢周平の情景描写は美しかった。日々使い慣れた言葉を、新鮮に料理している、と感じた。
ふくと文四郎の別れのシーンも良かった。切なく胸に染みた。
これは時代小説ではなく、恋愛小説なのではないか・・・。
そう感じるほどに、ふくと文四郎の恋愛が強く心に残った。
藤沢周平のほかの作品も読んでみたくなった。




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