蘇芳色(SUOUIRO)~耽美な時間~

「中村勘三郎襲名披露公演」




「中村勘九郎改め十八代目中村勘三郎襲名披露」の初日。
行ってきました、大阪・松竹座。

小雨が降り、足元が少々気になったが、久し振りに染タンが関西に来るので、これははずせない。
もちろん勘三郎さんの襲名披露だもの、見逃したくはない。

この頃ヤン・ジヌくんに心を奪われているのだが、今日は染タンを満喫しようと思いつつ松竹座の門をくぐる。

まあ艶やかなこと!
舞妓さんがいっぱい。
舞妓さん以外にも着物を着た人が多い。男性もいた。
さすが勘三郎さんの襲名披露なだけある、と感心しつつ座席につく。
なぜか私の座っている席のまわりに舞妓さんや元舞妓さん?らしき女性が多数。
玄人衆に囲まれて落ち着かない私。

いよいよ幕が上がる。

演目は

1、寿曽我対面(ことぶきそがのたいめん)

2、上  源太(げんた)
  下  藤娘(ふじむすめ)

3、口上

4、伊賀越道中双六(いがごえどうちゅうすごろく)

我らが染タンは「寿曽我対面」で曽我五郎を演じ、そして口上にも出演。
染タ~ン、お久しぶり~!
最近はジヌくんに心を持っていかれているんだけど、まるでそんな私を知っているかのようなタイミングで送られてくる「その字組」からのDM。封を切るたびに『ごめんね、染タン』と心の中で謝っていたわ。
そうそうジヌくん熱にうなされている朝、萬斎さんの夢を見た日もあった。夢の中で萬斎さんは私を非難するように、鏡越しに私を見つめていたっけ。2日も続けてそんな萬斎さんの夢を見たときは、さすがに心が咎めたわ。
もちろん萬斎さんのことも忘れてはいないのよ。今月、大槻能楽堂に参ります。

そんなことをグダグダ考えているうちに、お芝居は進んでいく。
曽我五郎の染タンは隈取も鮮やかに登場。私の好みから言うと、五郎よりも十郎の扮装の染タンのほうが好きかな。(だって優男なんだも~ん)
オペラグラスで一生懸命に染タンを見る。う~ん、天地眼で見得を切った彼は、やっぱり素敵。

2、源太は三津五郎さん。う~ん、年取ったよね。まだ不倫騒動を起こしていなかったときは、雷様似のいい男だと思っていたのに、最近の彼は見る影もない。まるで別人のようだ。

藤娘は勘三郎さん。う~ん、彼の女形って、私はあまり・・・。(汗)初々しい藤の花の精が登場し、男に恋し、酒に酔って、艶っぽい女になるのだが、申し訳ないが最初から「おばちゃん」にしか見えないんだよね。
以前、勘三郎さん(当時は勘九郎さん)の平成中村座で「法界坊」を見たんだけど、そのとき彼は体の半分を坊さん、残りの半分を娘になって宙乗りをしていた。ぶら~んとぶら下がりながら、観客に坊主姿を見せたり、くるっとまわって娘姿を見せたりして、笑わせていた。
今日の藤娘を見て、そのときのことを思い出してしまった。『この藤娘はいつ坊さんに化けるんだろう?』などと、つい考えてしまって・・・。(笑)
玉様の藤娘を1回生で見てみたいなぁ。(ごめん、勘三郎さん)

3、口上は今回の1番の楽しみ。出演者が舞台に集まり、それぞれが勘三郎さんに個性的なお祝いを述べる。生の役者の姿が見られて、もうこたえられません~。
染タンは茶色の裃。凛々しいお姿に大興奮。
染タンは、「阿修羅城の瞳」の舞台をしたとき、勘三郎さんが見に来てくれて、しきりに「くやしい」と言っていたというエピソーソを披露。(ん?どっかで聞いたことあるんだけどな、この話)お兄さん(勘三郎さんのこと)にこういっていただいて、役者冥利につきる・・・との弁。いいねぇ、いいねぇ。

4、伊賀越道中双六では私、思いっきり泣きました。歌舞伎を見てこれだけ泣いたのは初めてじゃないかな。
とにかく、勘三郎さんの雲助平作と仁左衛門さんの呉服屋十兵衛が素晴らしかった。
仁左様、本当に水も滴るいい男。十兵衛の人の良さ、心の葛藤を観客の心に染み入るように演じていて、もう感動。
勘三郎さんも、老人役を見事に演じていた。最初は愛嬌があって憎めない平作を、後半にかけては、義理と人情の板ばさみになり、苦しみながらも自らを犠牲にする平作を表現。
涙なしには見られなかった。

そうそう仁左様と勘三郎さんが観客席通路に降りてきて、歩いていく場面があったんだけど、舞妓さんの集団をじっとみて仁左様が「綺麗な花がたくさん咲いているわな」と言っていて、わらってしまった。あれはアドリブだよね。

老女役をやらせたら美輪明宏さんの右に出る人はいないと思っていたのだが、今日は老人役をやらせたら勘三郎さん以上に演じられる人はいないんじゃないかと感じた。

染タンが出ていない演目で、こんなに集中して、こんなに泣いたのは、初めて。
幕が閉まったあと、「あぁ~ホントにいいものを見せてもらったな~」と心のそこから満足した。



2005年7月3日 大阪・松竹座


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