2006年01月03日
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カテゴリ: Musical Theatre
PINOCCHIO


Linbury at the Royal Opera House

pinocchio


Director and Choreographer :
Composer : Martin Ward
Writer : Phil Porter
Set designers : The Quay Brothers
Costume designer : Nickey Gillibrand
Lighting : Paule Constable

Pinocchio : Matthew Hart
Stromboli : Will Kemp
Geppetto : Luke Heydon

Fox : Charlotte Broom
Cat : Tom Sapsford
Lampwick : Christopher Akrill
Townspeople : Josephine Darvill-Mills, Alex Cowie, Kerry Maguire,Benny Maslov, Clemmie Sveaas
Singers : Sani Muliaumaseali'i, Heather Shipp

Conductor : Ben Pope

タケットのピノキオ。
この作品は、思いっきり子供向けだった。子供向けとは言っても、ファンタジーに満ちた楽しいだけのものでは全くない。
タケットのピノキオは、ディズニー映画の、『可愛らしい』ピノキオ像ではまったくない。ディズニーではない、ピノキオの原作に似た、マリスを感じさせる舞台。ものすごい悪意、悪の存在というものが子供をどんどん堕落させていく様子を、原作そのままに描いている。
子供の頃、このお話を読んで戦慄しませんでしたか? 私にはすごく怖かった。それが、その記憶が、舞台上で衝撃的によみがえってくる。
ピノキオのお話のストーリーのディテールはすっかり忘れていたけど、舞台が進んでいくと、鮮明に思い出してしまったのだよね。


ピノキオは、「パベット・ウィズ・ノー・ストリング」。人形なのに、ひもであやつられなくても動く魔法の人形。彼は全身、肉襦袢のようなぶかっこうなボディー・スーツを着ている。
へんなまっ黄色のかつらに付け鼻。目は人形のように濃くメイクされている。素顔はまったく、肉体さえも隠されている。この悪条件の中で動き回るハート。しかもその動きはパペットだから、ぎくしゃくぎくしゃくと異様な動きをする。背は屈めていて、腕はだらんとたらしている。口をぽかんと開けて『ジェペット~???』とアホみたいにつぶやく。(アホの役なんです。)
さすがマシュー・ハート。そうきたか。やっぱり彼は普通じゃないですね~。

そのほかの役者もほんとすばらしい人たちばかり。
まず、ジェペット(ゼペット)のルーク・ヘイドン。この人、ついこの間も日本で「三人姉妹」を踊ってましたけど、(殺される将校役)うまい! 演技うまいです! 彼がいかに子供が欲しいと切望しているか、そしてその子供と幸せに暮らしたいといかに切望しているかがせつせつと伝わってくる。それでいて喜劇的なキャラクター。この役にはぴったりです。台詞回しもたっしゃ。


この人もいいいい! 可愛くって可愛くって! 大きな瞳でピノキオの目を覗き込む。踊りが自己流のような気がした。彼女の(ダンスの)世界。タケットの振付であってもね。子どもみたいなので、ピノキオが説教されていても、説教臭くない。押し付けがましくない。この人だけは舞台でしゃべらないで、天からの声、ナレーションでした。

ストロンボリ!!!! 言わずと知れたウィル・ケンプ。イタリア訛りのへ~~~んな英語でしゃべるので、子ども達が「ねぇ、ママ、あの人何言ってるの?」
なんでも語尾に何とかシモ、とかかんとかシマとかつけるので、おもろい~ 「ヴェリッシモ、ヴェリッシモ」「ギャンブリッシモ、ギャンブリシモ!」(ギャンブルのことです)。
早口でかん高い声でしゃべり、お腹は風船のようにふくらんでいる。目をぎらぎらさせてピノキオを悪の道に誘惑する。棍棒を持っていて可哀相な彼のパペットたちを殴りまくる。ものすごい悪いやつです。カーテンコールではかなりいじめられていました。

そしてその手下である狐ちゃんと猫くん。色気むんむんのフォックスちゃん。

2人の歌手が役者としても出演しながら歌を歌う。

この舞台はダンスの舞台というよりやはり総合芸術ですね。セリフあり、歌あり、ダンスあり。
セットや美術はお金がかかっていないのに、なかなかうならせるものがありましたね。さすがです。
しかし小品だし、子供向けだし、キャスティングも肝なので、日本に来ることはないような気がする。商業ベースの作品ではない。

リンバリーについて。ロイヤルオペラハウスのBoxOfficeの横に地下に下りる階段があり下っていく。スチール製のほんとに小さいミニ劇場だが、狭くて段差がすごいのでどこからでも良く見えるだろう。
客は、子どもだらけ。そしてかなり年配のカップル。
アダム・クーパーとセーラ・ウィルドー夫妻が来ていたが、会場内では気づかなかった。

※内容を知りたくない人はパスしてください。

ストーリー≫
いきなり客席に大きな声が響く。
ゼペット「なーにやってんだよ~ 早く舞台に行けよ、始まるぞ~~!」
客席にわらわらと現れるダンサーと歌手。
歌手2人がいきなり歌いだす。舞台の端に腰掛けている。
ゼペット「わしの唯一の望みは息子を持つことなんじゃよ。」
ゼペットは人形を作るために木を切りにいく。
ブルーフェアリーが現れ魔法をかける。
木の根元から生まれたのはピノキオ。
まず彼に名前をつけるところから始める。
歌手と二人でいろんな名前をあげる。イタリア人だからイタリアの名前ですよ。決まらないで入ると、妖精がやってきて『ピノキオ』と囁く。
ピノキオは呟く『ピノキオ…」
名前は決まった。
子どもは学校に行かなくちゃならん。ピノキオは学校に行く。
でも人形遣いのストロンボリに目をつけられてしまう。
ひもで操られ、ストロンボリにいじめられる人形達。
ピノキオはひもがついてない魔法の人形、彼を踊らせ、金をたっぷり与えるストロンボリ。その金を取り返すためにきつねとねこが派遣される。彼らは変装してピノキオから金を奪おうとする。
妖精はピノキオを問い詰める。(有名なシーンですね)
『学校に行ったの?』
『行ったよ!』
鼻がグイーんと伸びる。これが半端じゃなく伸びるんですよ。子ども達は大喜び。
ピノキオが反省すると鼻は元の大きさへ。
ゼペットは息子を探している。
ゼペットは小船に乗って大海原へ出て行く。しかし舟は波に飲み込まれてしまう。

第2部

ピノキオに学校に行かないとだめでしょ、とさとす妖精。
学校でこどもたちは「○×先生は臭い(~の匂いがする)」と黒板に書いている。悪童ばっかだな。
ピノキオと子ども達はまたもストロンボリに誘惑されてしまう。

子ども達は大きいビニールボールを使って踊る。最後にそのボールを客席に投げ入れる。お客の子ども達はきゃーきゃーいいながらボールをGetする。
そしたら意地悪なストロンボリが、
「おーい、ボール返してくれよ。」客席笑。
みな投げ返す。でも中には、しっかりボールを胸に抱きしめている子どももいて、可愛い~~~。

「おもちゃの国」に行くことにした子ども達。そこで彼らはたばこを覚え、酒を覚え、ギャンブルを覚える。そしてその結果…○×になってしまう。お話をご存知のかたはわかりますよね。すごく怖いの~~ここが。

妖精がまたピノキオを助けて、
『本当の男の子になりたいなら…本当の男の子は勇気があります。』
ピノキオはゼペットを探しに海へ出て行く。
そして○○○の中へ。
この後の展開は、まあご存知ですよね。

ピノキオのプログラムの、裏方の紹介部分が面白い。ストロンボリが紹介しているの。ストーリーはゼペットが語っているし。

クリスマスシーズンにぴったりの、ハートウォーミングな(ちょっぴりぞっとするが)作品でした。

余談ですが、どうして、ウィル・ケンプが『シザーハンズ』に出ないでこちらに出ることにしたのか? これが謎でした。これは今も謎のままですが。この謎は舞台を見たら解けるかと思っていましたが。
このストロンボリは、あくの強い役で、まあ言ってみれば、主役ではありません。ケンプでなくてはできない役という風には私には思えません。
どうして主役の「エドワード」の方を演じなかったのか? 私にはわかりません。エドワードは間違いなくウィルが演じたらものすごくはまる役でした。まったく惜しいことです。もしかしたらジョニー・デップの印象をそのまま引きずっている役だからなのでしょうかね。これは単なる独り言ですが…


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FOOD FOR SOUL ※Sardanapalusさま、こちらこそありがとうございました。

Chacott Webマガジン”Dance Cube”   守屋光嗣 text by Koji Moriya








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最終更新日  2006年01月22日 21時34分25秒
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