売り場に学ぼう by 太田伸之

Nobuyuki Ota

2006年教え子たちに向けてこのブログを開始。2020年直近３年分を編集して「売り場は明日をささやく」（繊研新聞社刊）を上梓。これを区切りにブログは一旦お休みに。が、全く更新しなくても閲覧してくださる方が毎日いることがわかり、再びブログをアップすることにしました。お読みくださりありがとうございます。

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2022.08.23

セレクトショップが街を変えた

カテゴリ：ファッション

残念なことに、コロナウィルスの影響もあって世界各都市のとんがったセレクトショップが次々閉店しています。「アバンギャルド」という言葉、ファッションの世界ではもう死語になってしまったんでしょうか。

30年ほど前、米国ジョージア州アトランタでセレクトショップJEFFREYを開いた元バーニーズニューヨークの靴バイヤーがアトランタオリンピック効果で収益を上げ、２号店をニューヨークのダウンタウン通称ミートマーケットに開きました。かつて精肉卸売の倉庫などがあったエリア、昼間だって人の往来は少なく、夜は全くのゴーストタウン、私がニューヨーク在住時は「行ってはならない」一画でした。そんな場所ですから当然家賃はかなり安い、そこに大型セレクトショップをオープンしたのです。大きな賭けでした。

するとJEFFREYの並びにステラマッカートニー、プーマ、アップルストアなどが次々店を構え、レストラン、カフェ、モダンなホテルやクラブも登場、高架の鉄道跡は遊歩道に変身。たった１店舗のセレクトショップの開店から数年で街全体が一大ファッションタウンに様変わり。出張で訪れるたびにファッションの持つすごいパワーを感じたものです。

が、JEFFREYは大手百貨店NORDSTROMの子会社になり、そしてコロナ不況もあって閉店解散。出張時によく買い物したお店、たまにしか行かないのにシューズのサイズを覚えてくれていた販売員が愛想良く素晴らしかったです。ここで買ったジルサンダーのコート、いまも重宝しています。こういうセレクトショップはもう社会に必要ないのでしょうかね。実にさみしい。