売り場に学ぼう by 太田伸之

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Nobuyuki Ota

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2023.10.31
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日本ファッションウイーク推進機構の実行委員をお願いしているユナイテッドアローズ取締役常務執行役員の田中和安さんに誘っていただき、彼らの文化服装学院時代の恩師曽根美知江先生ご自宅での宴会にお邪魔しました。曽根先生はすでに退職、私は約30年ぶりにお会いしましたが、現役時代と全く変わらず昔のまんま、びっくりするくらいお元気でした。

曽根先生は1960年代パリオートクチュール協会が主宰する学校に留学、帰国後はずっと文化服装学院でパリ仕込みの立体裁断やマーチャンダイジングを指導されていました。パリ留学時代、隣のクラスには三宅一生さんら数名の日本の若者が学んでいたそうです。また、この頃パリでは文化服装学院OBの高田賢三さんがデザインを現地メゾンや企画会社に売り込み、写真家の吉田大朋さんがファッション雑誌ELLEの専属フォトグラファーとして活躍していました。


曽根美知江先生を囲んで記念撮影


私と曽根先生のご縁は東京コレクションの責任者をしていた1990年代前半に始まります。当時ファッションデザイナーとアパレル企業の協業ブランドがどんどん生まれてはどんどん消滅していました。せっかく専門学校や美大が才能ある若者を世に出しても、企業がデザイナーたちをうまく活かせない。日本にプロのマーチャンダイザーやバイヤーを育てるポストグラデュエートの教育機関があれば欧米のように協業ブランドは長続きするかもしれない、とIFIビジネススクールの立ち上げに向けて私は奔走していました。

ところが、文化服装学院の大沼淳理事長から、「新しく産業界が学校を作る必要があるのか。現在の専門学校に対して業界はもっと支援して欲しい。教育は自分たちに任せてくれないか」と言われました。我々の構想は既存のファッション専門学校とは敵対しない人材育成機関、高校生新卒者は採用せず企業で働く若者たちにより専門性の高い実践的カルキュラムで指導しようというもの、決して既存の専門学校を否定するものではありません。

ビジネススクール設立首謀者の一人だった私は文化服装学院に協力的な姿勢を見せないと誤解されるかもしれないと考え、文化服装学院ビジネス学科系の流通専攻課程3年生(担当は林泉先生)と曽根先生が指導なさっていたマーチャンダイジング科3年生を別のカリキュラムで毎週1回教えることになったのです。専門学校に敵対する人材育成機関を作るのではない、と専門学校界のリーダーだった大沼理事長にわかったもらうためにはこれしかありませんでした。

毎週1回別々のカリキュラムを考え、その準備をし、学生には宿題を与え、成績評価もしなければなりません。しかも本業である東京ファッションデザイナー協議会議長の仕事も、IFIビジネススクールの準備もありましたから、週2回の文化服装学院通いはめちゃくちゃ大変でした。

そもそも文化服装学院とのご縁はニューヨークから帰国した1985年、先生たちの勉強会「火曜会」でパーソンズ流の実践教育の事例を紹介したときから始まりました。総勢200人くらいの先生たちに、ニューヨークのパーソンズ(PARSONS SCHOOL OF DESIGN)のバイヤー講座で私はどのように教わったのか、それが自分にどれほど役に立ったのかをお話しました。大沼理事長の相澤秘書からの要請だったと思います。

以来、流通専攻課程3年生を指導するようになり、そのクラスから多くの若者を自分が所属する企業にスカウトして部下にしました。





幹事役のUA田中和安さん(右端)


あいにく母上ご逝去で今回は参加できなかった佐藤繊維の佐藤正樹社長(現在文化服装学院同窓会長)はじめ、数ヶ月前の文化創立100周年記念イベントで素晴らしい祝辞をされたTSIホールディングス下地毅社長、前述ユナイテッドアローズ田中常務など、曽根先生の教え子の中には現在の日本のファッション業界を牽引している人が少なくありません。何年も前に卒業した彼らがいつまでも曽根先生のご恩を忘れず定期的に集まる、なんとも微笑ましい光景でした。私は卒業生ではありませんが、皆さんのご厚意で参加させていただき、楽しい時間を過ごすことができました。

考えてみれば私も文化服装学院など専門学校や一般的大学、IFIビジネススクールで、あるいは所属企業でたくさんの若者にマーケティングやマーチャンダイジングを教えてきました。その数は数千人にのぼると思います。受講生と頻繁に深夜まで酒を酌み交わして議論しましたし、IFIビジネススクールの教え子たちは今年も誕生日を祝ってくれました。若者を教えた側の人間にとって、教え子たちが集って意見交換する瞬間は至福のとき。教え子との懇談、もっと大事にしたいですね。





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Last updated  2023.11.01 00:10:27
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