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2021年03月22日
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カテゴリ: オペラ
この週末は緊急事態宣言明け直前というので、逆に収容人数の制限があるうちに行っておこうかと思って、東京・春・音楽祭の公演に行っていました。そっちの話もあるし、まだ書いてないコンサートの話もあるのだけれど、なんかその後のTwitterのとかを見ていると、相変わらず新国ワルキューレは絶賛話が多いので(批判的な事も皆無ではないけれど)、もうちょっと書いておこうと思って。しつこいけどね。

 なので、人生難しい事をオペラには求めてないんだ、なんだったら自席で幕の内弁当食べながら見るくらいに気楽にやりたいんだ、というような方は以下お控え下さい。言ったからね。









 まぁ、そうは言っても​ 既に前回でほぼほぼ言いたいことは書いてある ​(←ここ)んですけれどね。

 ちょっと書き足しておくと、今回の公演は、20世紀初頭にコーブルク歌劇場で上演される際に作られた、管楽器群を半分に縮小したコーブルク版またはアッバス版と呼ばれるものを使っているそうで、なので、管楽器は幾分抑えられている訳です。確認はしていませんが、恐らくは、弦楽器もそれに応分に合わせて調整していたのではないかと。
 つまり、オケに圧倒されるという意味では、歌唱陣にはやや有利であった訳です。更に、これは新国立劇場の公演。つまり、はっきり言って、歌手にはこれも有利な条件だったと言っていいと思います。
 いや、そうなんですよ。新国立劇場って、今の歌手はどう思ってるのか知らないけれど、東京文化会館なんかに比べたら、断然声量面では有利なんですよ。NHKホールは別にしても、神奈川県民ホールやなんかとも比べ物にならない。一応オペラをやる劇場で、首都圏でここよりまぁ狭めというのは、新百合ヶ丘の昭和音大のテアトロ・ジーリオ・ショウワと、横須賀芸術劇場くらいじゃないだろうかと。その横須賀も、ホールキャパはともかく、造りとしては客席側の空間は結構ありますからね、意外に。
 歌手の負担は、こういう条件下での話だという事をお忘れなきよう。

 それで、昔話をするのですがね。

 つまり、出来栄えはともかく、ちゃんとしてたんですよね。その頃はまだ私も二期会一応聞きに行くことはあったのです。行かなくなった経緯はまたの機会に....

 今回のワルキューレのキャストの略歴を見ると、ミヒャエル・クプファー=ラデツキーと藤村実穂子以外は、ものの見事に日本での公演歴しか出て来ないんですよ。留学歴はともかく。一人だけ、バイロイトでワルキューレの一人で出たってのを快挙って書いてるので、或いは、そのくらいのところでないと海外で活躍したことにならないってことなのかも知れませんが、まぁ、実際まともに海外でやってないんじゃないでしょうか。敢えて申しますが、このご時世に、ね。
 30年前の出演者がどうだったのかは分かりませんが、当時、バイロイト並なんて言う人はどこにもいなかった。ただ、ともあれ、最後まで上演出来た。それで十分だったと思います。で、今は、それから30年経って進化したのか?という話だと思うのです。30年前よりもよほど楽な条件下で、ですよ。当時は文化会館でのゲネプロなんて何回出来たのかと思うし、今調べたらそもそも3回公演で内一回は神奈川県民ホール。もっと条件厳しいですよ。それで、東京文化会館では土日で連日公演。ダブルキャストですけどね。

 いや、現状がどうであるかはまぁしょうがないですよ。でも、評価をするなら、そういうことも考えて他と比較しろ、とは思うのです。


 あと、とにかく、「劇」として観てないな、というのをものすごく感じてしまうのですね。で、実は、劇として見る目がないということは、特に指環みたいなものの場合は、オペラとしてきちんと理解できているのか、という話になると思うんです。
 元々私は本来そういうのどうでもいい筈の人なんですよ。誰が何と言おうが、グルベローヴァが出て来て歌えば御託は全て吹っ飛ぶじゃねーか、という人なのでね。ただ、もう、グルベローヴァはいない(と言うのがまぁ正しいのでしょう)し、その後を追える人もいないし、そもそもオペラというものがそういう意味では変質しているとも言える。だから、仕方なく、というのも変ですが、そういうものだとして、では舞台としてのオペラとしてはどうなんだ?という視点にかなり寄ってはいる訳です。私がワーグナーについて云々するのもおかしな話、というのは、そういうことです。ワーグナーは、特に指環は、そういう意味で劇としての性格が非常に強い。

 それで、ブリュンヒルデの話なのですが、前にも書いた通り、ブリュンヒルデはこのオペラの中でもっとも劇的緊張を孕んだ役なのです。細かいことはどうでもいい、もうこの歌唱は圧倒的じゃないか、というような話なら、それでもいいかも知れません。でも、実際、そんな歌唱じゃないですよ。悪くはないとしたとしても。でも、それはいい。ただ、それならば、聞くところによる往年のフラグスタートとかニルソンみたいなものではないならば、丁寧に舞台として成立させなきゃいけない。でないと、説得力が無いんです。
 ぼそっと「大根」って書いたのは、まぁ、酷い言い方ではありますが、でも、実際そうなんですよ。この役に求められるところからすれば。これが他のワルキューレの一人だったら、まぁ、どうでもいいですよ。ついでに言えば、同じ理由により、藤村実穂子のフリッカもどうでもいいんです。そりゃちゃんと歌ってはいるんでしょうけれど、そもそもドラマが薄いんだもの。それでも、結局ヴォータンに勝って、半ば勝ち誇りながらブリュンヒルデに「お父様の指示を確認してご覧なさい」みたいな事を言うのには、もっと嫌な女丸出しでやってもいいと思いますけれどね。昔、あれはやっぱり新国立劇場の、いわゆる「トーキョー・リング」だったか、相当高慢ちきな感じで言い捨てて出て行った舞台があって、あれはなかなかだったな。

 で、ブリュンヒルデ。
 端的に言えば、「ブリュンヒルデはいつ決心したのか」という問題なんですよ。元々ヴォータンの指示に従って動く存在であったブリュンヒルデが、いつ、どのようにして、ヴォータンの指示に背く事を決心したのか、そして、いつ、どのようにして、ジークフリートの花嫁として生きていく事を決心したのか。
 一応書かれてはいる訳です。前者で言えば2幕2場のジークフリートとの対話を通じて。後者は、最後にはそういうことになってはいる。でも、では、いつ、どこで、どうして、なのか?それを表現するのが、芝居というものです。別に明示せよというわけではないし、それが見えなければダメだ、とまでは言わない。でも、それが自分の中になければ、当然そんな芝居は出来ないし、今の(これは日本人に限らず世界的傾向だけれど)歌唱で圧倒する、ということがもう無理と言ってもいいような時代の公演に於いて、あくまでオペラを、それもワルキューレのようなオペラをやろうとするならば、役柄としてそういうことは入っていないとダメだと思うんですね。

 そしてくどいようだけれど、そこそこの金さえ出せば海外になぞ幾らでも行ける時代に、ですよ。いや、そんなに気楽に行けるもんじゃないんだ。まぁ、そうかも知れません。でも、そうだとしても、手の届く範囲の世界だけで絶賛するのはおかしいと思うし、今、日本の演奏家がそのレベルで自分たちは凄いと思っているのだとすれば、やっぱりそんな勘違いはさせちゃいけないと思うのです。


 まぁ、仕方ないのかも知れないですけれどね。


 今回、いろいろ見ている中で、ずっと昔にネットで盛んにやっていたのと同じかと思しき人が、なんともぬるい事を書いているのを読んで、ちょっと何だかなぁと思ったりしています。自分が進化しているとかなんて思わないし、終始一貫して首尾一貫しているとも言えないけれども、それでもそれなりに聞き続けて何某か考え続けているから、こんな与太話くらいは相変わらず書き続けていられるのかなと思ったり。それが幸せなのかどうかというのはまた別の問題、か。





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最終更新日  2021年03月22日 00時23分48秒
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