2014年12月14日
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ヤマト映画中 企画力と演出力の最も高い作品
ヤマトよ永遠に
Be Forever Yamato
日本(1980年8月2日公開)145分

■ 監督 舛田利夫
■ 声の出演 富山敬/ 麻上洋子/ 野沢那智


-INTRO-

アニメブームを生み出し牽引して来たヤマトでしたが
ブームが誕生した事で 新たにスポットが当てられたのは

キャラクターに命を吹き込む アニメーター達の存在でした

それまでは なぜ絵が動くのかという技術的な仕様は
一般的には 知られておらず

まして それに携わる アニメーター達の存在など
知る由もありませんでした

ヤマトの大ヒットによって 過去のアニメ作品が注目され
非常に作画力の高い作品がファンの間で話題になる中

ずば抜けた技術を持ち 魅力的な作画をするアニメーターは
スターアニメーターとして カリスマ的人気を誇る様になりました


少女漫画にインスパイアされた華麗な美形キャラを描く
代表作が『聖闘士星矢』の 荒木 伸吾

光と影を多用し 激しいタッチが特徴の
代表作が『あしたのジョー』の 杉野 昭夫

人懐っこい魅力的なキャラを描きながら 屈折した人物描写に定評がある
代表作が『機動戦士ガンダム』の 安彦 良和 など

様々なスターアニメータが活躍する中
その独特のメカニック描写と動画センスに

業界の中でも多くのフォロワーを作った
ヤマトでも作画監督を務め スタジオジブリ作品でも知られる  金田 伊功

アニメブームを牽引するエポックメイキングな存在として
特に異彩を放つものがありました



■ テレビ、クーラー、車の
いわゆる「3C」が一般家庭に急速に普及し初めた60年代

映画の集客率が急速に下降する中 人気はそのままTVへとスライドして行き
青春時代を迎えた団塊の世代がそのままTV世代となり

世の中は TVが中心となる時代を迎えます

やがて団塊ジュニアが誕生する70年代には 数多くの特撮 TVマンガ作品が登場し
金田 氏 は そんなTVマンガ全盛期にデビューします


TVの現場の限られた時間と制作費では
作画のクオリティーを保つのが一つの鍵となり

印象的なタッチで描かれた「止め絵」 や
動きの始まりと終わりに偏った動画を描く 「中抜き」の技法など
3コマアニメ と呼ばれる 日本独自の様式が生み出されます


金田 氏の描く動作の 独特の タメ と
背景が崩れる程接写した画から しなる様に画面奥へ跳躍し
その際のカメラの太陽光反射も作画に取り込むと言う特異なスタイルは

TVマンガの現場での経験から生み出された手法で
「金田パース」「金田ビーム」 などと呼ばれ

作画枚数が限られるTVアニメシステムに 革命を起こしました

この作画スタイルは
動画枚数を重ねて 動きを再現 するのではなく
限られた枚数の中で 動きを演出 する為の

最大級のダイナミズムを表現する方法として

TVマンガの制作環境が背景となった
日本ならではの感性から生み出されたものでしたが

その動きの根底には
ハンナ=バーベラが作り出した『トムとジェリー』の様なクラシック作品の

非常に粘りのある動きに見られる
伝統的な「ため」の表現法の精神が息付いており

日本で突如出現した唯一無二の天才的表現法と言うよりは
日本ならではのアレンジ文化が生み出した 即戦力な複合的ノウハウ

言えるものだったのかもしれません



△▼△▼△

という訳で今回は、その金田伊功氏が作画監督として参加し
ヤマト史上初 同じ敵が登場する

1979年放送のテレビスペシャルとして放送された
『宇宙戦艦ヤマト 新たなる旅立ち』の続きを描いた

『ヤマトよ永遠に』をご紹介します

それでは今回も始めましょう



-解説-

本作は 異星人達の電撃的軍事作戦で地球が占領されるという
スリリングなオープニングで幕を開き

主人公古代進はヤマトで 森雪は地球で
それぞれが別の異性との関わりの中で
「試される愛、信頼の愛」をテーマに 両者の間で揺れ動く様が描かれ

それまでのヤマト作品に見られた 作画の乱れも本作では大幅に改善され

物語の展開に合わせ ビスタ画面が本編中途で
突如シネスコサイズへ変化する仕掛けなど
ヤマト作品中 最も企画力の高い異色作となっております


演出面でも
占領軍の士官アルフォンに見初められ メイドの様に匿われる森雪や

占領軍と戦う地球の軍隊をパルチザンの様に扱うなどの
旧ナチスドイツのホロコーストを彷彿させる描き方や

機械化に対するアンチテーゼが鍵となる物語展開などは

高度成長を遂げた末に全てが合理化され オートメーション化される
当時の社会経済の急激な発展を背景に

ともすれば従順を求められ人間性が否定される様な社会風潮に対する警鐘として
松本零士作『銀河鉄道999』にも通じる 80年代特有の作風が強く感じられ

シネスコパートでの相変わらずの荒唐無稽な展開には 難はありましたが

当時のヤマト作品が 社会に与える影響を考えて
意欲的にこの様なテーマを進んで導入していた事が伺えます




■ TVスペシャル『新たなる旅立ち』の続編として制作されながら
劇場版としては前作が『さらば宇宙戦艦ヤマト』であった為

死んだはずのキャラクター達が 何もなかった様に登場するのを
事情を知らない観客が 当惑しながら鑑賞するという混乱を

少なからず招いたり

松本零士は本作を、 TV版『ヤマト2』の続編であり
『新たなる』の続きと見なさないで欲しい という発言をするなど

当時の映画ドラマ作品の、前回の出来事が次回に引き継がれ無いという
一貫性を欠く描き方が珍しく無かった頃の時代の

邦画の悪い慣習を踏襲した 混沌とした制作体制を物語るものでしたが

企画が立ち上がる度に 時代性や風潮を考慮し
描かれる内容も その都度 2転3転と変更される中で

物語の連続性を損なう事になったとしても 作品の質を向上させる為
思い切った臨機応変さ が取られて来たのは

当時の邦画の一つの特徴でもありました


■ 制作体制も これまでの西崎プロデューサー中心の造りから

松本零士のアイデアを 『二百三高地』の 舛田 利雄 監督が脚色し
西崎プロデューサーが加筆するという初の試みが行われ

結果、全ヤマト映画中 最も安定した演出の作品となり

惑星を丸ごと偽装して罠にかけるという 荒唐無稽にも程がある ヤマト的展開や
挿入歌を一曲まるごと流す様な PVまがいの相変わらずな助長演出はありましたが

「新たなる~」までに見られた 話の腰を折るコメディーシーンや
コントと曲解される様なミスディレクションや 流れの悪い場面展開は改善され

特に、制空圏を制覇した後 降下部隊が展開し地上を占拠する
理にかなった軍事行動など

「明治から未来まで撮る男」と言わしめ

光と影の演出を リドリー・スコット 監督よりも
遡る事20年も前に導入していた 舛田利雄 監督のタッチが
色濃く出た作品としても

ほぼ一般映画の様な演出で鑑賞する事が出来る
唯一のヤマト作品でもありました



■ 又、アニメの最先端を自負する制作側は
本編の上映方法そのものをイベント化する

『ワープディメンション方式』 を採用し

ビスタサイズ、モノラル音声 画面が 物語途中で
シネマスコープサイズ、4chステレオ音響へグレードアップする演出が

当時は話題となりました

因みに、DVD (※Blu-rayは未確認) ではビスタ画面パートを
縦サイズがシネマスコープサイズのままの収録となった都合上

物語前半は 画面上下に黒枠が出来る 「額縁画面」となり
本来の意味での『ワープディメンション方式』は再現出来ていないという

問題を抱えたリリースとなりました

(※今月12月スター・チャンネルでのヤマト映画全5作品一挙放送では
ビスタパートはビスタ画面で、シネスコパートは上下黒枠の放送で
ビスタパートは「額縁画面」では無く 良かったですが
Blu-rayがこの方式の収録かどうかは未確認)


■ 松本零士 氏の言及では
本作を最後のヤマト作品として制作するつもりで居たそうですが

本作の公開後 2ヶ月後にTVシリーズ『宇宙戦艦ヤマトIII』が始まった事で

本作で三つ巴のタッグを組んだ結束は 三者三様の思惑と共に解かれ
やがて確執へと変化し

それが如実に現れたのが次作『宇宙戦艦ヤマト完結編』であり

その後確執は 世に言う『宇宙戦艦ヤマト裁判』へと発展し
一時代を築いた歴史的作品は やがて衰退の一途を辿るのでした


ヤマトが再び蘇るのは2009年の『宇宙戦艦ヤマト 復活編』の公開を
待つ事となります


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『当時BGM音楽集はPart1、2と 2枚発売され
主題歌はささきいさお、堀江久美子、岩崎宏美に布施明と
映画本編に入り切らない程の音楽が作られた為
当時の大スター 岩崎宏美の「銀河伝説」は 本編に使用する箇所が無く
幕間の劇場BGMとして使われるという 顛末がありましたw』



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最終更新日  2018年11月08日 18時22分24秒
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