良さんの読書日記

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2010.08.31
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テーマ: 本日の1冊(3697)
カテゴリ: 直木賞
『ビタミンF』 重松清 第124回直木賞、新潮文庫

  現在ビタミンは15種類あるが、その中にビタミンFはない。著者の重松清さんは「人の心にビタミンのようにはたらく小説として書いた」と本書の後記に描いている。
 本書は7つの短編から成っている。そのすべてが家族をとりあげたもので、主人公はすべて父親だ。 『ゲンコツ』。おやじ狩りなどを恐れ、少年たちが夜たむろしていると、そこを避けていたサラリーマンが主人公。ある夜、公園にたむろしていた少年たちに勇気を出して声をかけた。少年たちは自転車で逃げたが、途中でこけた者が一人いた。同じマンションに住む少年だった…。 
 『はずれくじ』。中学1年生の息子が、警察に補導された。本人は悪い仲間に誘われただけだった。父親は、次に誘われたらきっぱり断るよう息子に言ったが…。

 『ぱんどら』。中学2年生の娘が万引きでつかまった。年上のボーイフレンドと一緒にやったという。万引した物の中には、コンドームもあった。親はこういう時、どうすればいいのか。
 『セッちゃん』。中学2年生の娘がクラス全員からシカトされる、つまりいじめにあう話だ。両親は、運動会で娘だけ他の生徒と違う振り付けで踊っていたことと、家での会話を踏まえ、いじめにあっていることを直感した。担任に相談するが…。
 なぎさホテルにて』。誕生日を翌日に控えた日に、夫が妻と二人の子どもを連れて「なぎさホテル」に泊ることにした。
 そのホテルは達也が20歳の誕生日の日に、恋人だったの有希枝と泊ったホテルだった…。  『かさぶたまぶた』。娘がボランティアで行っていた聾学校から帰って来て以来、様子がおかしくなった。卒業記念の自画像を一人だけ描くことができなくなった。そんな時、大学受験に失敗した息子が酔っぱらって帰って来た…。
 『母帰る』。父親と母親が、子どもの結婚式の後離婚した。母親が離婚を言いだし、父親が同意した。娘と息子は当然、母親を恨んだ。しかし、父は恨んでいない。母が家を出て10年、一緒に暮らしていた男が、最近死んだ。
 父はもう一度、母と一緒に生活することを言いだした…。
 以上のように、ごく簡単に中身に触れたが、それぞれの短編が一つのテーマを持っていて、読者が自分に置き換えて読むことができる。まさに他人事ではない1冊だ。

ホーム・ぺージ『推理小説を作家ごとに読む』も御覧ください。
http://bestbook. ife.coocan.jp






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Last updated  2017.03.11 10:25:28
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