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本書は西暦でいうと1926年、昭和では元年から翌年にかけて雑誌『新青年』に連載された。いまから約90年前の作品である。本書は二つのことがテーマになっている。
ひとつは「人生をやり直せるなら」。ある人が別の人物になり代わって新たに人生を踏み出すというテーマの小説は多いが、本書はその一つである。
大学を卒業し、小説を書いてはその場をしのいでいた人見広介は、夢があった。しかし、その実現には膨大な資金が必要とされたので、その日暮らしの広介には文字通り夢だった。ある日、大学の同級生が下宿にやって来て、広介と顔も体格も声もそっくりだった菰田源三郎という同級生が死んだと聞かされた。彼は、大資産家の当主だった。
この話を聞いた広介は、一つの賭けに出た。死んでしまった菰田と入れかわる計画を立てた。いったいどうやって死人と入れかわり現実の世界で夢を実現するのか。
もう一つの本書テーマは、テーマパークの建設。彼は、ある無人島を買い取り、そこに夢を建設していった。その名は「パノラマ島」。90年も前に、よくもこのようなことを考えたものだ。これを現代社会に建設すれば、立派なテーマパークとして成り立つに違いない。 現代でも十分通用する発想で、さすがは乱歩といえる作品である。
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