良さんの読書日記

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2018.05.04
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テーマ: お勧めの本(7418)
カテゴリ: ミステリー小説
悪魔が来りて笛を吹く 横溝正史 、角川文庫、初版1973年2月20日、初出:探偵小説雑誌『宝石』1951年11月~53年11月。

 本書『悪魔が来りて笛を吹く』は、終戦直後の東京と神戸を舞台にしている。元子爵の椿英輔は当時、世間を騒がせた天銀堂事件の容疑者にされた。アリバイが証明され、家に帰されるが、失踪した。しばらくして、信州の山の中で遺体が発見された。警察は自殺としてかたづけた。
 ある日、金田一耕助のところに椿英輔の娘・美禰子がやって来た。父の英輔は生きているかもしれない、と話した。目撃者がいるのだ。今度、目賀という医師が父が生きているかどうか、占いをするので、立ち会ってほしいと言われた。
 金田一は占いに立ち会った。その日の深夜、殺人事件が椿邸で起こった。事件の前に英輔が作曲したフルート曲「悪魔が来りて笛を吹く」が聞こえてきた。この事件を皮切りに、次々と殺人事件が起こってゆく。 

 本書の特徴は、推理小説のいろいろな要素を含んでいることである。
 一つは、冒頭で東京の宝石店・天銀堂に族が忍び込み、宝石を奪うという事件が発生する。これは1948年に東京で実際におこった帝銀事件をモデルにしている。いわばパクリだ。
 二つ目は、第一の殺人が密室のトリックを使っている。部屋は占いをした場所だった。すべてのドアと窓は、内側から鍵がかかっていた。ドアの上の換気窓は開いていたが、腕を通すのがやっとの幅だった。
 三つめは替え玉。死んだはずの椿英輔が現れる。みんなは死んだのは椿ではなく別人だった、と考えた。読者もそう思う。この時代、DNA鑑定というものはない。椿英輔だと判断したのは、死体を見た娘の美禰子ら三人の証言だけだった。指紋も確認していない。
 そして、意外なところに殺人の動機が隠されていた。

 『悪魔が来りて笛を吹く』は古くても、現代でも通用する名作であり、横溝文学の中でもっともすぐれた作品のひとつである。

ホーム・ぺージ『これがミステリーの名作だ』も御覧ください。
http://bestbook. ife.coocan.jp






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Last updated  2018.05.04 08:33:29
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