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浮世絵界の重鎮の一人・嵯峨厚が北陸の海岸で投身自殺をはかった。その直後、大学で浮世絵を研究している津田良平は、秋田欄画の画集を手に入れた。その一枚に「東洲斎写楽改近松昌栄」と署名されている絵があった。これが本物だったら歴史的な大発見だ。写楽はいまだに正体がはっきりしていないからだ。津田はその画集が本物かどうかをはっきりさせるため、秋田県に調査に出た。
しばらくして、西島の家が火事になり、彼が焼死体で発見された。
嵯峨と西島の
死
に疑問をもった津田は、秋田県警の小野寺刑事と事件の解明にのりだす。
写楽といえば歌麿や北斎に並ぶ江戸時代の浮世絵師で、日本人なら誰でも知っている。その写楽が誰なのか、いまだにわかっていないのだ。この解明が本書の特徴の一つだ。津田が、一歩一歩階段を上るように、写楽の正体に迫ってゆく。まるで殺人事件で状況証拠をもとに犯人を特定してゆくのに似ている。これだけで一つの推理小説として成り立つ。
第二に、推理小説としては、アリバイくずしがテーマになっている。津田と小野寺は容疑者を特定するが、彼らには嵯峨と西島の死亡時、完ぺきなアリバイがあった。これをどう崩してゆくか、ここに推理小説としてのだいご味がある。
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