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幕末,堀眞五郎,敵への報恩長州編1
幕末WITH LOVE 箱館戦争で捕虜になった男達,堀眞五郎のその後,品川弥二郎から受け取った「血に染まった人見勝太郎の陣旗」が紐解く「堀眞五郎、謎の空白場面」人見勝太郎と品川弥二郎,敵への報恩(薩摩編),人見勝太郎の「西郷隆盛イモ事件」,幕末動乱維新の人々,【楽天市場】
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_函館戦争の余波
捕虜達のその後<敵への報恩_薩摩編(現在の頁)
■1(捕虜第一号)_五稜郭や陣屋などに置き去りにされていた負傷者達6人組_
長州、堀眞五郎他
□関連:
敵への報恩(薩摩編)ー軍艦高雄、船将:田島圭蔵
□薩摩の「死角」に填め込まれた二人の男達_
No.1
英士の末路:村橋久成<
No.2
真実の人:池田次郎兵衛
□
空転!松前に齎された平和交渉
敵への報恩_長州編(1)
堀眞五郎、あの時、捕らえられた捕虜series_No.2
関連(あの時捉えられた捕虜Series_No.1):
敵への報恩(薩摩編)
「血に染まった陣旗」が紐解く「堀眞五郎、謎の空白場面」
この人達の中で、「心」に「心」を
贈り返してくれた人は、他に何人いたことだろうか?
あの時、高松稜雲達が寝る間も惜しんで必死で介抱、傷の手当てを施して帰国させてやった男達
・・・福山藩士と、長州藩士。帰還直後、早々に率先して、幕軍討伐隊で
「殺傷を指揮」している者もある。
しかし、・・・・
堀眞五郎の謎の空白場面
・・・同友志士_品川弥二郎氏から、人見勝太郎に手渡された「彼自身の血に染まった陣旗」
一見、無関係の二事象。ところが、相当複雑だが、どうやら、万事ここから始まる。
「血に染まった陣旗」が紐解く「堀眞五郎、謎の空白場面」
敵への報恩_長州編
※現在の頁は→
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◆品川弥二郎氏から手渡された「あの時の陣旗」◆
血に染まった「謎の陣旗」
林薫が語る書には、「長州にも、一人だけいい人がいた。
それは『品川弥二郎氏』である」・・・の一節がある。
林氏は、人見勝太郎と語りあったある日のこと、
氏の体験談から、品川氏のエピソードを聞かされ、驚いた。
◆品川弥二郎氏から手渡された「あの時の陣旗」◆
人見は、思わず、息をのんだ。どうして?どうして、この陣旗を・・・
それは血に染まり、人見自身の「辞世の句」が書かれた旗である。
敗北濃厚、玉砕を決意した己が書き付けたこの句。
彼の胸中、長い年月、封印してきた「若き日の自分」
記憶から抹消されつつあったあの頃、箱館戦争時代の自分。
記憶が堰を切り、現実となって溢れ出た。怒涛のごとく一気に体内を駆け巡る。
突如、耳裏で、壮烈な轟音。爆風が立ち起り、人見は過去に吹き飛ばされていた。
・・・・過去という名の時空の狭間。今、若き日の人見が、そこに居る。
突然の訪問客
ー人見&品川の巻ー
明治もいつの間にやら「一桁」をとっぷり過ぎた。
中端に近づく・・・ある日のこと、そこには、官職(内務省)につき、日々の業務に
明け暮れる「人見勝太郎」の姿があった。
あの時(=箱館戦争の頃)あんなに若かった彼も、今となっては、そろそろ、中年男の領域だ。
煩雑な事務に追われ、机上でバタバタやっているところ、突然の訪問客。実に以外な人物だった。
唐突に現れたのは、長州の「品川弥二郎」である。彼は姿を見せるや否や、これまた唐突。
いきなり「夕食」に招待する旨を述べ、たちまち消え去った。
この段階、品川は、内務大臣就任以前のことである。
人見は、突然の訪問客に驚く間もない。「うん」も「すん」もなかった。
これぞ、「勢い!」以外のなにものでもない。
品川は部屋に入るなり、勢いで、話を一気に押し切り、さっさと帰ってしまったのだ。
もう既に、その姿はおろか、影も形もない。
人見は、そもそも、正直で、元から何事も、いちいち疑ったりしないタイプである。
しかし、突然夕食に招待されたのでは、人並に、気が臆して硬直した。
長州だ、薩摩だ・・と特にぎくしゃくさせるタイプではないが、
長州人の自宅招待とあっては、彼とて、やはり少々考えた。
しかし、品川は当時、直属じゃないにせよ、人見にとっては、同じ内務省の上官に他ならない。
◆夕食の招待
(
ー人見&品川の巻ー
品川:
「おう、今晩さ、俺んち、ちょっとだけ、寄ってってくれや。うんにゃあ、どってことないよ。
うちのカミさんの、つまらん田舎料理さ。いやあ、べつに、俺なんて、どってことないよ。」
人見は口を半開きにして、ポカンとしている。
・・・その顔は、「いい年」になっても、昔ながらのあの顔である。
誘った側の品川とて、実は、かなり緊張していたのである。
しかし、その「幼稚なポカン顔」を見るなり、可笑しくなって、緊張は一気にぶっとんだ。
ー人見&品川の巻ー
「だからさ、そうじゃないよ。なんかしてやるかわりに、どーこーしてくれとか、
そーゆーの、全然、からっきし、ダメさ。俺なんて、ぶきっちょな野郎だからさ。
なっ、必ず、来てくれるよな。」
品川は、ポカンとしたまま、一向に声を発せぬ人見に対し、ひとりで、ポロポロ言葉を引き繋いで
勝手にしゃべっている。
「是非、差し上げたいもんがあってさ。きっと、見たら驚くさ。全財産、ひっ叩いてでも、
絶対欲しくなるシロモンじゃよ!」
人見:「えっ?・・・」
ポカン顔の人見が固まってしまった。これは、まずい。またしても、品川がしゃべった。
品川:
「おっ、すまん、すまん。下らん冗談言っちまった。ちがうよ。そーゆんじゃないんだ。
俺、ぶきっちょだからさ。全然、大丈夫。冗談、冗談。つまんねえ冗談さ。まあ、ともかく
飯食いに来てや。なっ!」
人見:
「えっ?そ、それは、どうも。しかし・・・」
品川:
「うんにゃ、いいから、とにかく、寄ってくれや。なっ」
人見:
「はあ、まあ、そいじゃ、ちょっと・・・」
品川は、スタコラその場を立ち去った。人力車の車夫に命じて、そのまま帰宅の路を進ませた。
道中、ふと考えた。今頃、人見は・・・いまだ先刻同様の顔のままだろうか?おそらく、
そうだろうな。机の前で、あの「ポカン顔」をしているであろう人見を想像すると、
またまた可笑しくなって、思わず吹き出した。
車夫が驚き、振り返って、品川を仰ぎ見た。
「はっ?だんな、どうか、なさいましたか?す、すみません。」
「おう、すまん、すまん。いやあ、思い出し笑いってやつさ。これが始まると、そろそろ、
俺も年ってことかいなあ。」
そう言って車夫に釈明をすると、今度は、大声で派手にゲラゲラと笑い飛ばしていた。
この場合、人見を笑い飛ばしているのではない。それまでの自分自身を、一気に笑い飛ばして、
ぶっぱなしてしまわねば、どうにも、気がすまなかったのだ。
人見の部屋をノックするまでの間、あんなに色々、セリフを思案した自分。
「手渡したいモノがある」・・・とでも言えばよいのだろうか?それとも、そう言えば、かえって
不気味か?警戒するだろうか?・・・などど、思案していた自分が滑稽だった。
実行に踏み切るまでの間、シナリオを考え、ウジウジやっていたのは品川のほうだった。
思い出せば、実に変なセリフばかり吐いてしまったことになる。
「なんかしてやるかわりに、どーこーしてくれ・・・とか、そーゆーの
全然、ないよ。」・・・我ながら、馬鹿げた発言。
実際、人見は何も言ってない。にもかかわらず、うろたえた自分の口から思わず漏れた言葉。
「そーゆーの」って、そもそも、ソレ、何だっちゅうのよ、俺としたことが・・・。
相手によっては、「いかにも怪しい」と感じさせるための代名詞みたいなものである。
しかし、幸いした。反応は、あの子供地味た「ポカン顔」だった。
やはり、よかった。きっと、これで良かったんだ。
まだ、事を進めてもいなければ、人見が家に到着したわけでもないというのに、
なんだか、自分の中から、一種の
「つっかえ棒」みたいなものが、ひょこんと抜け落ちた。
・・・それは、戊辰以来、体の中に詰まったまんまの「つっかえ棒」!!
いい年して、思わず、ドキドキしてくる。かなり、複雑な気持ちだ。この感覚は、あの頃以来。
斬るの斬られるの!アタマの天辺まで真っ赤な血を滾らせて暴れた戊辰。若かりし頃。
尊王攘夷!幕府に消された恩師、吉田松陰のあだ討ち!皆で怒り叫び、大使館襲撃の夜。
この胸の鼓動は、まるで、あの頃と同じとくるから、我ながら呆れる。
実は、それほど、この日、品川弥二郎は緊張していたのであった。
なんとしても、この「つっかえ棒」を、
無事、やっつけてしまわねばならぬ!それが、己の義務だ!
人として!赤い血の流れる人として・・。
緊張をふり解いて、品川は、恰も、鼻歌混じりの上機嫌。
我が家の玄関、くぐって入るなり、一風呂浴びた。
「お~い、客が来るぞ。飯の仕度、一丁頼むわ。急いでくれな。」
風呂場から大声で、細君に呼びかけた。
風呂の扉を開けて、唖然とする女房の顔。
「えっ?それまた随分、急なお話、ど、どうしましょう?」
「な~に、べつになんでもいいんだ。熱っつい鍋でも頼むわ。おっと、そうだ、量は多めで宜しくな!」
彼は、以前に人伝に「人見のイモ事件」を聞かされており、ふと思い出したのだ。
そのため、量を多めで頼むと細君に付け加えたのだったが、よく考えれば、随分昔の話。
若者だった人見時代の話である。冷静に考えると、今となっては、食べ盛りの年頃じゃあるまいし、
かつてのごとく、そんなに沢山の量を食べるわけがない。
「まあ、いいっちゃ。大は小を兼ねるってかっ?」
風呂場の中で、品川は思わず、独り言を言ってみた。
「こうなりゃ、とことん、いくっきゃないさ。トコトンヤレナっちゅうに!」
ついでに、彼オリジナル、
「おはこの歌」
まで、口をついて出た。
(
トコトンヤレ節は、一般に品川弥二郎作といわれている。
)
品川は、湯船にどっぷり浸って、ちょっと考えた。
その頃の若き人見対西郷の「人見の食らったイモ事件」とやらを想像してみたのであった。
今や、西南の役でとっくの昔に天に召されたあの怪人、西郷がありし日のことである。
「人見も若僧だったし、西郷さんも生きてたんだよなァ。」またしても、一人言。
★「過去」_人見勝太郎が食らった「西郷のイモ事件」とは★
ー今は昔、西郷ありし日:あの頃・・・人見&西郷の巻ー
箱館戦争終結、降伏。拘留、謹慎。やがて釈放されると、早速、若い人見は、勝海舟を訪ねて
言った。「西郷さんに会わせて下さい。」
「ふ~む」と鼻を鳴らした勝だったが、気持ちよく紹介状を手渡してやった。
礼を述べるなり、足早に走り去る人見の後姿。
勝は、速攻で西郷宛に手紙を書き、別途、飛脚で特急便、猛烈なスピードで運ばせた。
人見が到着する前に、周到な手回しを組んだわけなのだ。
主旨&雰囲気をやや意訳すると、こんなかんじの手紙である。
「人見は恐らく、西郷さん、貴殿を殺すつもりでしょうよ。ご用心下され。ハッハッハッ!
ちなみに彼、実は相当な剣使いなんですワ。侮れませんぞ。
しかしながら、なかなか見所のある良い若者でしてな
(=始末したりせんで下さいよ。この勝が直接紹介してるのだから、
履き違え無きよう頼みまっせ・・・殺していただいたのでは困りますよ・・・の意)。
物騒な事にならんように、まあ、ひとまず、会ってやっておくんなせぃ!」
◆勝海舟の手紙と西郷
(
ー人見の過去の巻ー
一方、勝から届いた「なんじゃらホイ?」ともいうべくこの手紙を極秘裏に受け取った西郷。
勝の手紙の旨を解していながら、とぼけてそ知らぬ顔。ぶっちょう面で、人見を迎えていた。
入室の際には、襖の左右にきちんと正座して、客人を出迎えた二人の男が、じっとかしこまっている。
どちらも西郷の体型と対照的に、細面でシャープな男だった。
一人は、たとえるなれば、きりぎりす・・と言っていえないこともない。しっかと床に両手を沿え、
客人を出迎えながらも、見るからに、鋭い目つきの男である。
伏せ目の儀礼は為したものの、チロリと横目で盗み見した瞬間を、人見は見逃さなかった。
しかし、人見は、もう一方の男が気になってしかたない。
やや吊り目気味なのは両者の共通点だが、こちらの男、浅黒い顔。
どことなく漂う暗い影。・・・何者だろうか?
西郷のでかい目玉はだてにデカくない。
たちまち見破った。
やはり、人見はタイミングを
狙っている。事成し遂げ、
己も切腹の覚悟にちがいない。
「この、ガキめが!」
西郷は一目でそれを見抜いておきながら
、それでいて、あっさり惚けた。
西郷は一発、人見に「ふい打ち」を食らわせてやった。
「さあ、食いんしゃい。」
人見の前に、茹でたてのサツマイモが、いきなり、ゴソッと積まれた。
「食わんかい!」さらに攻撃。ついでに、西郷は、あの顔で、これでもか!といわんばかりの
恐っそろしい怒声をぶっとばし、一渇を入れてやった。
「なにっ、食わんとな!田舎者の薩摩なんぞ、臭くて食えんと言うんか!
えっ!このおいどん、薩摩が臭いとな!」
人見は、焦った。イモごときで、西郷を怒らせ、つまらんところで獲物を逃がしたのでは、
身も蓋もない。今この瞬間のタイミングは愚の骨頂。たちまち、取り逃がし、
己は彼らにやられるだけのこと。デフォルトでの衝突を避けた。
手でちぎって一口だけ食べてみせようとすると、また再び強烈な怒声。雷が落ちた。
「嘗めてんかァ!物食うときに、その食い方はないじゃろが!食う時にゃ、食え!
食わんなら、消えうせぃ!おいどんを誰と心得てるんじゃ!」
しゃあなく、イモに食らい付いてみせた。
西郷は、あのでっかい目玉で、人見の「クサい演技」をギリッ!と睨み据えている。
無心に食らい付いてる風を装っているのだが、さまになっていない。腹根性は、西郷の様子を
見ぬふりしながら、しきりに窺っている。
実のところ、人見はその時、西郷そのものより、襖の影武者、約二名の方向を気にしているのだ。
先刻より、剥製のごとく微動だにせず、じっとかしこまっている細面の男達。
「このガキ、大根役者め!」
・・・西郷の両の目玉がそう言っていた。
やがて、西郷の目元が緩んだ。
「なんじゃい、本当に腹減ってんでないのかよ。
・・・・・・!そりゃ、話にならんぞ。食ってからにせい。ガッハッハ!」
西郷はボン!と自分の膝を叩いてみせると、ゲラゲラ笑い出した。
「たんと、食わんかい!」
「お~い、何やっとんじゃ!早よせんかい!」西郷が大声でお女中にNEXTのイモを
要求した。これがまた、すごい。西郷の声とほとんど同時に、ちゃんとNEXTイモ軍団がやってくる
有様だ。お女中達の機敏極まるこの行動の早さ。ただ事でない。いわば軍隊のごとくである。
またしても、人見の前はイモだらけ。茹でたてのイモは、もうもうたる白い湯気があがっている。
余計な湯気のおかげで、ますます西郷の姿形がぼやけて視点を定めにくい。
「イモ攻めの刑じゃい!」
・・西郷に一笑されて、人見はイモに屈っした。
意味不明なところで滅多やたらに叱り付けて翻弄させ、人の正常なる判断力、そのメカニズムを
狂わせて破壊する・・・この手の策など、西郷にとって、朝飯前のこと。いわば使い古しの旧兵器。
ましてや相手は若者だ。
腹が膨らんで、動きまで充分鈍ってしまったはずである。
実は・・・悲しきかな、この時人見、その実、空腹だった。バレた。情けないが、意思と裏腹、
腹の虫がイモを食ってしまったのである。
「食ってからにせい。」とまで言われてしまった。完全にバレている。
「せい」とは・・・俺を斬るんだろ、いいから先にイモ食って、後にしとけや・・・ってこと。
目元が緩み、微笑みを浮かべた西郷。談話が始まった。
タイミングを逃すまいと粘った人見は、なりゆき上、相当大量のイモを食べてしまったことになる。
前半は演技で食べた。しかし後半はちがう。食った犯人は彼本人ではなく、腹の虫だった!!
西郷は、再びあの目玉でギリッと人見を睨むなり、こう言った。
「道中、ご苦労。西郷はイモしか出さんやつと言われたんじゃ、かなわん。
折角のこっちゃ、飯食わして帰らしたろ。」
両手をポンと打ち鳴らして、れいのお女中軍隊に、西郷は指示しようとする。
口中イモだらけの人見は、身振り手振り、必死の思いで、
それを制するのが精一杯だった。
「なんじゃい。飯食わんってか?えっ?」
イモが喉につっかえ苦しい人見。
その彼が西郷を見上げると、
えらいことになってきた。
~~~!
いきなり、あの口が不気味に
ぐにゃぐにゃ歪んだかと思うと、
次の瞬間には、がばがばと
果てしなく広がってゆく。
西郷は大口を開けて、天井を見あげると、今度は、腹を抱えてゲラゲラと笑いだした。
「たかが、一銭か二銭か知らんが、安銭で買ってきたイモごときで腹一杯になる小僧が
何を偉そうにモノ申す。人見どんとかな?
何をぬかすか。何が天下だ、へちまじゃ。天下語るに、百年早いわ。ガッハッハ!」
人見は狼狽した。言葉を返そうにも、文字通り、口ごもって語れない。
実質上、口中、モゴモゴとイモだらけ。
せめて茶のもう一杯ぐらい、貰えぬものかと欲する本能だけが、
この場合、先行している。苦しさのあまり、涙目になってくるから、
一層惨めが倍増していった。
ヒキガエルのごとく膨らんだ惨めな己が今、畳の上にへばりついている!
品川家を尋ねた「人見勝太郎」_晩餐の鍋料理
再び、画面は、こちらの二人組に戻る:ー人見&品川の巻ー
人見が尋ねると、風呂上りの品川が、着流し姿で迎えてくれた。
「すまんねえ。ご覧のとおりだ。まあ、まずは、やってくれ。」
グラスによく冷えたビールを注がれて、人見は、勧められるままに、グラスを空けた。
人見の乾いた喉が潤った。ざっくばらんに、二人は胡坐を掻いて熱い鍋をつっついた。
不思議なほどに、品川は、この鍋に入ってる
「具の話」以外、何ひとつ持ち出そうとしない。
なにやら、ひっきりなしに
声を発し、笑顔が絶えない
のだが、話題というべきものは、
ものの見事に、何ひとつ
提じてこない。
唯一会話というべきものがあったとすれば、それは「年」の話ぐらいのものだろう。
「えっ?なんじゃ?俺とおんなじかい?そりゃ、以外じゃったのう。知らんかったわ。
三十も半ば過ぎと来りゃ、俺達も、おっさんの領域ってこっちゃ。ヤだねェ~。
人見さん、お若く見えて、お得な質じゃの!」
「えっ?『得な質』だなんて、そんな・・・私は、単に、鈍直な性質なもんですから・・
いつも、気付かんことばっかり多くって・・・。質は、なかなか直りませんわ。」
普通ならば、年の話から始まると、話題は過去に流れ、ヘタをすると、ここから余計なイデオロギーの
押し付けやら、なんだかんだと作り笑いをうかべつつ、かなりヤバい系の「腹芸」となってゆく。
しかし、品川は、それ以上、話題を転ずることは一切しない。うかつに話題を過去に転ずれば、
折角の料理がまずくなってゆくだけのこと。品川は心得ていたのだった。
それは、品川流の流儀の一種と、優しさの表れと言えないこともない。
いくら古い話でも、元官軍と賊軍である。また、今や、長州派なのか、薩摩派なのか、
白黒つけることで、明日の我が身が大幅に歪んだり、馬鹿々しいほどに飛躍したりする時代である。
品川は、絶対に何も語らなかった。当然押し付けもなければ、余計な質問もない。
何ものかを探ろうとする下心など、どこにもない。
それもそのはず。今晩の接待の目的は一つしかなかったのだから・・・!
「こんにゃくがどうした。この豆腐が・・・おっとっとォ~、熱っちっち!」
「さあ、やって、やって、ぐい~っと。ソレっ!」始終この調子である。
しまいに、人見のほうから、切り出した。
「・・・しかし、あのォ~、ところで?」
品川:「おう、実はサ、気になってたんだが、どうも、なかなかでさ。」
さすがに、品川の箸が止まった。
「うん、今日こそ、貴殿に、渡さんにゃ、いかんと思ってさ・・・ちょっと、お待ち頂けるかな?」
・・・品川は女房殿に、何やら命じて段取りを進めた。
実は、この二人、誰かを憚り、互いに旧知を一切語ってませんが、
実は、もとから知人の確率多大!(MOREは、こちら)
◆床の間の「吉田松陰掛け軸」
:
ー人見&品川の巻ー
夕食が片付けられて、上品な器で茶が運ばれた。人見は、床の間の掛け軸に目を向け、黙って
一読してみた。そこには、吉田松陰の句が書かれてある。丁度その時、襖が開かれ、
風呂敷包みを大切そうに抱た女房殿が、入ってきた。
品川は、人見の視線の先を感じて取ると、本題に入らず、掛け軸のことをしゃべってしまった。
ひとたび、意を決した彼ではあるが、どうも、こーゆーところが歯切れ悪い。
もっとも、これが彼のいいところでもあった。
品川が喋り始めた。
「そうじゃ、これねぇ。今思えば、昔はええのう。先生の塾(松下村塾)じゃけどな、
べつにとんだ山奥にあったわけでもないんじゃが、ぎょうさん蝶々が飛んでおってな、
一辺、中に入ってきよってよ、そいつがまた、行儀の悪いやつの頭のてっぺんに留まりよった。」
品川の目が一瞬宙を泳いだ。
「すまん、つまんない話よの。」
ボンと膝を叩くとまたしゃべり出した。
「そうじゃ、これねぇ。俺なんて、塾ん中(松下村塾)じゃ、できそこないの類じゃて。
先生(吉田松陰)には、よく、そう言われたもんじゃ。対して、キレ者は、キレ者で
なにかと心配じゃてな。俺ァ~、キレが悪いかわりに、毒もないっちゅうのが
唯一マシなところじゃてよ。トンがってるヤツは、尖ってるだけあって、それまた、
要らん苦労するっちゅうねん。先生の予言はいちいち当たるわ。たまらんぜよ。」
人見が、切り出した。
「えっ?どなたか、
その尖っておられるという、その方
の御身上、何かあったんですか?」
品川は、深く息をすると、あたかも決心したかのごとく、ゆっくりと両腕を組み直し、頷いた。
・・・・
人見の目玉がまん丸くなった。口をすぼめて、品川の言葉を促すがごとく、じっと見つめている。
「うん、あのな・・・」
そう言いかけて、品川は、ごくんと唾をのみ込み、視線を斜め下の畳に
向けたまま、暫し間をおく。
そこまではよかった。がしかし、冷めかけの茶をすすると、また、いつもの顔に戻ってしまった。
ある意味で、なんとも不甲斐ない男でもあった。
自分で言いかけておきながら、その場の空気を全部自分で吸い込んでしまったのだ。
あたかもその話であるような風を装い、別のことをしゃべり始めたのは
いくら「鈍直」の人見にも感じ取れた。品川は、いつの間にやら、いつもの笑顔になっている。
が、しかし、人見もさらに追求することは避けた。
品川が、やっとこすっとこ、本題に入ってきた。
「おう、・・・気になっとったんじゃが、機会がなくてな・・・。
じゃがな、こいつぁ、人見殿、おそらく全財産ひっぱたいても欲しくなるシロモンじゃよ。
そうはいっても、別にややっこしいナニじゃない。安心してくれや。」
そう言って笑う品川。屈託のない笑顔だった。
今度は真顔でこう言った。
「悪く思わんでくれな。
貴殿に、お返ししたい。ずっと、そう思ってたんだ。」
・・・
▼これが、品川の「つっかえ棒」の正体だった。
戊辰以来のつっかえ棒!!
よくできた女房殿は、始終夫の後ろにじっとかしこまっていたのだが、
包みをそっと、夫に手渡すなり、一礼をした。
品川氏も、きちんと正座して、人見に対し一礼をした。風呂敷包みを品川は、両手を添えて、
とても大切そうに扱う。畳の上を静かに滑らせ、人見の前までゆっくりと、おくってきた。
そして、まずはご覧下されといわんばかり、目で促した。
「やはり、貴殿にお返しいたしたく、決心がついた。」
とまで言うのである。
明治中期、この頃、物品の授受ほど危険なシーンは他にない。
あらゆる欲と幾多の策謀が入り乱れ、一瞬の油断が己の末路を決定付けるはめになる。
しかし、品川は「古い話」だという。
その上、今確かに彼は、
「お渡し致したい。」とは言わず、「お返し致したい。」
そう言ったのである。実に奇妙な状況だった。
「過去」という名の時空の狭間_THE_五稜郭、箱館戦争
ー人見&品川の巻ー
虫の知らせとは、まさしくこのこと。原因不明の悪寒が走り、人見の体は硬直していた。
「しからば、ありがたく。」人見が一礼をして包に手を掛けると、
正座した品川は、腕組姿勢で、うむと深く無言で頷いた。
絶句!!!
人見の意識は瞬時に、天空に吹き飛ばされた。
どうして?どうして、この陣旗を・・・!
品川から渡された包を開くと、そこには、なんと、あの時の陣旗、それが収められていたのだった。
THE_品川からの答え_箱館戦争終戦処理
「どうして、一体どうしてこの陣旗を?」
人見の質問に対し、品川が語った回答は、概略、こんな話だった。
品川は、当時、終戦処理掛の任務を負い、
各戦場をひとつひとつ視察検証をしていた。
その際、偶然に、この旗を拾い、夥しい量の
血に汚れ、句の内容、そのものは
読み取ることができなかった。
・・・
続く
・・・
▼旧知情報キャッチ!
【明治の世、すっ惚けて口を割らない二人の正体発掘!】=実は、もとから知人の確率多大!
尚、本人達(品川、人見)は、どちらも「実はそうなんです。」と一切言っていないが、かつて、この二人、
塾で、接点があった可能性は否めない。
安井息軒の三計塾門下生に名有り!!(人物についてはNo.6&No.7資料頁)
NEXT_敵への報恩_長州編(2)
敵への報恩_長州編
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エビ水槽、「さと美えびフード」を与…
(2018-10-29 19:27:33)
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