飛鳥京香/SF小説工房(山田企画事務所)

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「石狩の福次郎」第3章


ロボット死闘人「石狩の福次郎」第3章 復讐
作 飛鳥京香(C)飛鳥京香・山田企画事務所
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第3章 復讐

(1)
 伝説のパワードスーツに加えて自らが超能力ロボット(略してER)になった福次郎、
命じられたままに、レイガン島の秘密基地から、ロボットの天国を作るために努力する『風
盗』となった。が、彼の頭を占めているのは、この裏切りの根本となった桃太郎に中西の
御前のことであった。復讐の念がふつふつとたぎってきたのである。
 中西の御前と桃太郎がいる船に、パワードスーツごと着地した福次郎である。さすがに
護衛たちも、古代のハイテク技術の粋、パワードスーツには歯が立たぬ。船室をぶち破り、
二人を発見した福次郎である。
「探したぜ、桃太郎」
 が、桃太郎はパワードスーツ姿の福次郎には気が着かぬ。
「一体、お前は、例の伝説の騎士なのか」
「俺だよ、桃太郎」
 福次郎はそのパワードスーツを脱いでいた。ERになった福次郎は、その自信がそのハ
イテクスーツを脱ぎ捨てて、裸身を晒しているのである。
「お、お前は福次郎。生きていたのか」
「中西の御前、それに桃の字、あっしはレイガン島の地獄から帰って参りましたぜ」
「う…、福の字」
「き、貴様、生きておったのか」
「う…、うれしいぜ、福の字。お前さんがあのレイガン島から帰ってこれたってことはな
あ」
「いいかい、桃の字、俺はな…、あの島で生まれ変わったのだ」
「ま、まさか、お前、あの超能力ロボットというしろものに…」
「そうさ、俺は…、その超能力ロボットに生まれ変わった訳さ」
「ゆ、許してくれ」
 急に桃の字は、膝を曲げてはいつくばった。
「こ、この通り。生まれながらの親友のこの俺が。お前を裏切ろうなんてこれっぽっちも
思っちゃいなかった。この中西の老いぼれめが私を騙したのだ。あんなことになるとは露
知らなかったのだ」
「ち、違うぞ、福次郎殿。わ、俺がこの桃太郎に騙されたのじゃ…」「ええい、御託は地獄
にいってからにしろ。いや、ロボットに地獄があったらの話だがな」
「こ、この通りだ、福の字。俺には、かわいい妻と三人の子供ロボットがいるのだ。許し
てくれい…」
「わ、俺にも、できの悪い息子と娘が各々一人おるのじゃ。許してくださらぬか、福次郎
殿」
「ええい、二人とも、嘘つきな…」
 桃太郎と中西の御前は、二人とも顔を見合わせる。
「どうやら、許してくれぬようじゃな」
 中西の御前の顔が急に厳しくなった。
「福次郎、お前もわかっているように、レイガン島にはレイガン島のしきたりがあり、こ
のロボットの暗黒街にも、しきたりがあるのじゃ。それに従わぬとお前が申すならば、ま
してやレイガン島で超能力ロボットに生まれ変わったお前だ。出方によっては高給で優遇
してやろうと思ったのじゃが…」
「そうだい、先輩を見習わないとならば…」
 中西の老人の言葉に桃太郎が割って入った。
「調子に乗るな、桃、お前は黙っておれ」
「すれば、どうするというのだ…」
「これを見ろ…」
 背後のカーテンが引き上げられると、そこには…
「父ちゃん…」「あんた…」
「どうだい、福の字、お前のかわいい家族だぜ」ふふふと桃太郎が笑う。
「どうじゃ、死んだと思っておっただろう」
「が、我々黒手組がちゃんと預かっておったのじゃ。お前に対する保険としてのう。ほっ
ほっほ」中西の御前が笑うと、オールプラチナ製の歯がキラキラと光っている。悪趣味の
権化であった。
「福の字、お前、自分の過去をようやく思い出したようだな」
「桃、よけいなことを思い出させてくれた。が、そのことはお前さんの命を縮めたな」
「まさか、お前…、俺を殺すつもりじゃ…、黒手組からは逃れられないぜ」
「無論だ。ご定法を曲げた俺だ。死んだつもりだが、お前さんにも冥土の道を歩んでもら
おうか」
「とうちゃん…」「あなた…」
 福次郎に近づいて来る妻と、子供ロボットの目付きがどうもおかしいのである。
「ま、待て、そこから俺に近づくな」
「何を言っているのだい、お前さん。私しゃ、愛妻の妙子だよ。見てわからないのかい」
「ちゃん、光次郎だよ。早く抱いておくれよ」
 この二人の言葉が妙に白々しい気がする。
「お前ら…」
 一瞬、二人が福次郎の体の方へ飛んでいた。光次郎は肩の方から、双腕で福次郎の首を
締め上げている。妙子は体ごとぶつかって来て、福次郎の両腕を何とか押さえ込もうとし
ている。
「くっ、苦しい。お前たち止めろ。俺は父さんだぞ」
「父親だって、聞いて呆れるよ。ねえ、母さん」光次郎が言った。「遊び人のお前さんのお
陰で、私たちがどんなに肩身の狭い思いをしてきたか考えたことがある?」
「や、止めろ。お前たちの言い分はよくわかる。俺は生まれ変わる。今までの遊び人の風
体は、す、すべて、偽りだったのだ」
「ふん、偽り…。そんな話は一昨日しておくれよ」
「そうだよ。僕たちどんなに貧乏な生活をしていたのか知らないのかい」
「SF大会、やれ同人誌活動だ、やれパソコンだと、普通の亭主らしい家庭サービスをし
てくれたことがあるのかえ」

 愛妻と愛息ではあったが、福次郎はここは非常にならねばならぬ。二人を傷つけぬ程度
の当て身を食らわせている。
「許しせよ。酷い父さんだと思うだろうがな。お前たちとゆるりと話せる時代もこよう。
すべてはこの俺の働きによるのだ」
 こう心の中で思う福次郎は、脳裏にロボットの未来の姿をかいま見ている。予知能力も
中々に出来ているのであった。

(2)
「中西の御前。やはり、あんたは許しちゃおけない。あの御用金襲撃の折のロボット皆の
恨み、受けていただきましょう」
「や、止めろ。福次郎殿、あれは俺も上からの命令でやらされたこと。俺が命令を下した
のではないのだ」
「この期に及んで白々しいことをいうのではない。私の超能力、お目にかけよう。よく見
ていろ、桃太郎」
 福次郎は横目で桃太郎を睨むが、変に桃太郎は自信ありげなのだ。「うっ…ぐふっ…」
 中西の御前の頭がゆっくりと振動しはじめ、頭の小部品が次々と剥がれ、粉々になって
いく。福次郎は念動力で、頭の部品を一枚一枚剥がしているのだ。
「止めろ、福次郎」桃太郎が叫んでいた。
「それ以上のことは止めろ。止めないと、お前は黒手組全員を相手にすることになるぜ」
「百も承知よ。どうせレイガン島で捨てた命、惜しむことはないんだ」
 桃太郎は自分の危険は、まるで恐れてはいない。
「ぐわっ…」ずぶりと、中西の御前の頭の上半分が吹き飛んでいた。 いくらなんでも頭
脳の半分くらいを吹き飛ばされれば、人格が消し飛んでしまう。中西の御前のメガネが転
がり、次いで体も仰向けに倒れ、ぴくぴくと蠢いている。
「思い知ったか、俺の恨み」
 言葉を投げ付けるが、もう中西の御前は意識はないのだ。そしてゆっくりと、福次郎は、
桃太郎の方へ向き直った。
「さあて、今度は桃太郎。お前の番だ。覚悟しな」
 桃太郎は下を向いたままだ。体が小刻みに動いている。やっと怖がっているのかと思う
福次郎だったが、
「くっ、くっふふふ」
 と、笑い声を上げて、桃太郎は顔を向けた。笑っているのだ。恐怖のためではなく、心
の底から笑っている。
「どうした、桃太郎。俺の力に驚いたか」
『ふっふっふっ、福次郎よ。ようやく俺の力まで追いついたらしいな』桃太郎の声が、直
接福次郎の心に届いていた。
「き、貴様も超能力ロボットだったのか」
『今頃、気付いたのか、福次郎。いまだに本当のことを覚えてはいないようだな』
「本当のことだと…」
『そのお前の心理ブロックを、俺の力で取り払ってやる』
 桃太郎は首を傾げた。恐ろしい表情をしている。
「くぐっ…」
 思わず、体をのぞけらせ、膝を屈した。頭脳が万力で締め付けられるように痛かった。
「どうだ、福次郎。まだ思い出さぬか」
「うぐっ…」
 福次郎は床の上をのたうちまわっている。瞬間、福次郎の別の人格が、再び浮上してい
た。
「負けるんじゃない、福次郎。桃太郎ごときに…」
「が、福次郎、俺はあやつの超能力に…、くくっ…、頭が割れそうなのだ」
「仕方がない。俺とお前の人格を合体しよう」
「合体…、くくっ、仕方があるまい」
「早くしろ、そうしないとお前の基本的な人格が崩壊してしまう…が、福次郎、覚悟はい
いな…」
「何だって」
「俺とお前が合体した瞬間、お前は後悔するかもしれんぞ。俺、つまり自分の過去を知っ
てしまったな」
「か、かまわん。この桃太郎には負けたくないのだ」
「ぐふっ……」
 福次郎との会話の間にも、桃太郎の心理攻撃の手筈は休まらず、福次郎の鼻から生命液
が吹き出して来る。次は鼻の穴から栄養液が…、次々と福次郎の頭の流通管が吹き飛ばさ
れているのだ。
「始める」
 別の福次郎は言い放った。
 急激な墜落感が、福次郎を襲っていた。まるで巨大な暗渠が目の前に広がり、そこに吸
い込まれた感じだった。過去記憶が次々と急激に広がり、福次郎の頭をはちきれそうにし
た。桃太郎の攻撃と、福次郎の複合人格の合体で、福次郎の体は床に転がり、気絶しそう
になった。
「どうだ、福次郎。思い出したか」
 横たわる福次郎の体のうえに、桃太郎が立ち、勝ち誇った笑みを浮かべている。一瞬、
福次郎は桃太郎の前に跳ね上がり、すっくと立っていた。桃太郎を指さす。
「思い出したぞ、桃太郎。俺とお前が新鮮組だったことをな」
 福次郎の目はまるで燃え上がっているように真っ赤だった。
「福の字、お前が伝説のパワードスーツを見つけてくれたお陰で、仕事がやりやすくなっ
たぜ」
 福次郎は脱ぎ捨てたパワードスーツの方へ走ろうとした。
「おっと、そうはさせないぜ」
 桃太郎がすばやく念動力でスーツをロックしてしまったのだ。福次郎の念動力でも開か
ない。
「お前風盗という形でな、パワードスーツを使ってくれたお陰で、我々は確信を得たのさ」
「それは…」
 福次郎はしゃべる前に分かってしまったのである。彼らが新鮮組として、西日本へ潜入
した目的の一つは、レイガン島が過去の武器庫であり、まだいくつかの武器が残っている
のでしないかということを調べるためである。
 冷子星による霊戦争後、地球にハイテク武器は、存在しないはずだった。が、福次郎が
装着していたパワードスーツは、そのハイテク武器の一つだったのである。
 過去、悪友同志であった福と桃は、関東無宿人として、暴虐の限りを尽くしていた。時
は霊戦争後のことであり、まだきっちりした政府が確立されていなかったのである。ある
とき、盗みに失敗した二人は、身分の高そうな侍の人間に会ったのだ。二人は無論死を覚
悟していたのだが、その下膨れのふくよかな顔をした中年の侍は、こう言った。
「どうじゃ、二人とも、俺に命を預けぬか。悪いようにはせぬぞ」「あなた様は、どちら様
で」
 おずおずと桃太郎が尋ねていた。
「俺か、俺は名乗るほどのものではない。が、まあ、教えておいてやろう。徳川公慶じゃ」
「それでは、あの徳川の殿様で…」
 へえへーと、二人は後ろ手に特殊な鎖で縛り上げられたまま、額を地面に擦り寄せてい
た。
 徳川公慶は、まだこの当時は東日本都市連合の議長職には就いていなかったが、東日本
随一の政治家としての評価は立ちつつあったのである。が、彼は根っからの政治家であっ
た。西日本と東日本が分割されている状況を鑑み、東日本の立場を強めるためのいくつか
の手を打って置いた。その一つが新鮮組なのである。
 徳川公慶は東日本が西日本の上位に立つための企てを考えており、故事に習って犯罪ロ
ボットの東日本の草として、西日本へ少しずつ送り込んでいたのだ。過去の経歴が表立た
ないために『新鮮組』の面々は心理ブロックを掛け、正常なロボットになりすましていた
のである。
 但し、徳川公の命令があれば、そうしなければならない。 桃と福は普通の生活を営ん
でいたのだが、ふとした切っ掛けから、西日本の犯罪組織『黒手組』の仕事を引き受けて
しまったのである。
 『黒手組』の頭領ははっきりとは分からぬ。ただ、命令を与えていた中西の御前が、頭
領でないことは確かだった。
 さて、桃太郎のことについて、述べておこう。まだ、福次郎と出会う前のことである。
ロボットとして制作された桃太郎は、日本古来以降の伝統をもつ語り部、砂川家に家令ロ
ボットとして養われていた。砂川家には秘戯があり、それが「嘘部(うそべ)」なのである。
いわゆる流言飛語を流し、世情を混乱させる、今で言う口コミュニケーションのプロフェ
ッショナル集団の長であったのだ。
 口技として正式に皇室にも所属していた「嘘部」の砂川家は、初めてロボット出ある桃
太郎にその秘戯を授けたのであった。天性の嘘つきの才能をもっていた桃太郎は、教師の
砂川捨磨も驚くべき長足の進歩を遂げ、ロボットとして初めて嘘部の家元の名取となった
のである。
 そういう意味で、嘘から生まれた桃太郎、人呼んで「口技の桃太郎」または「舌技の桃
太郎」である。桃太郎はその字(あざな)から、自分なりの技を作り上げていた。先刻の
ロボキックと同じように、口内に濃薬を製造できる内蔵タンクを作り、人々によっては口
しぶきによって相手を倒せるような技を作り上げたのである。二層あるA液、B液が複合
されれば、恐るべき激液となるのである。まさに口先だけの男となったのである。
 舌技にも工夫を凝らし、舌先から寸鉄を投げるとか、舌を丸めて吹き矢とするなど、恐
るべき舌技を自分で鍛練していたのであった。福次郎と組み、闇の死闘人として、数々の
暗殺をこなしていたおり、こう言ったそうである。
「この人でなし」
「そうじゃ、拙者は人でない。ロボット死闘人じゃ。口と舌によって、人を殺める口技(く
ちわざ)、舌技(ぜつぎ)の桃太郎だ」
 と、六方を踏んでいたというのである。

 二人の乗った船は、乗組員が死んでしまうか、騒ぎに乗じて逃げてしまったので、暴走
していた。
 二人の争いは火花を散らし、暴走する船のうえで、なおも繰り広げられていたのである。
「福次郎、しっかりしねえか。お前があのパワードスーツを持って、東日本へ帰れば、徳
川公は大喜びだ。なぜそうしないのだ」
「そいつはな、俺の心がな、許さないのよ。ご老公にお会いして、俺は正しいロボットと
して生まれ変わってのだからな」
「正しいロボットだと、御託を抜かすな。お前は何か、ロボットの国を作るという妄想に
取り付かれたのか。あの『ろ号』とかいうおんぼろロボットに洗脳されたのか」
「問答無用だ。パワードスーツのことを知るお前をたたき殺してくれる」
「どうやら福の字、俺と勝負せねばならぬようだな」桃太郎は覚悟を決めた。
「望むところよ。よいか桃、俺は昔の仲間だからといって容赦はしねえよ。このような地
獄を見せてくれる仕掛けを作ったのはお前だからな。ボルトの一本、一本、はがねの一枚、
一枚まで剥がしてやろう」
「いいか、福。お前の得意技はとんと承知している。その準備もせずに俺はお前の前に姿
を表したとでも思っているのか」
「何だと…」
いやな予感がした。福次郎の得意技はつぶて投げである。相手ロボットの中心部ICを突
き進んでしまうつぶて投げでなのである。
が、自分の中心部分にあるICの位置を少しでもずらしていたり、別の防御方法を考えて
いたとしたら、これは容易ならざる戦いになるだろう。

(3)
「福さんとやら、桃さんとやら、戦いはもうそれくらいにしませんか」
二人の後ろから、そのおだやかな言葉が響いて来た。
壁の上に、どはでな着物を着た武士がこちらを眺めている。その側に小者だろうか、小汚
い子供が控えている。
「拙者、徳川公直参旗本、早乙女主水と申す。お二人のそのお力をおかりしたい」
「同じく細工師の知恵」
「貴様は一体何の用があって…」
「よろしいですか、あなた方と我々は不思議な縁で結ばれておるのです…」
「縁だと…」
「そうだよ…、運命の七つ星といえば、おじさんにも合点がいくだろう」横にいる小汚い
ガキが二人に言った。
「何…、運命の七つ星じゃと…」
 二人は唱和していた。

『ふっふっ、待ちなさい。そこの方々。わたしも仲間に入れてもらおうじゃありませんか』
 四人の心の中に、その声は届いている。
「お前は…」
 キャプテン・チムニーが、姿を表していた。背後には、『ゲルマニア号』が浮上している。
「お、お前は、西日本ロボットを裏切りおって、よくも姿を表せたものだ」
 福次郎は思わず怒鳴っている。
「ふふっ、福次郎くん。あなたも政治というものが分かっていませんね」
「政治ですと…」
「そうです。東日本都市連合は、何の保証もなく、西日本都市連合に援助金を渡すとお考
えですか」
「それは、西日本を復旧させるため…」
「甘いですねえ、東日本は西日本の優れた武闘ロボットが必要だったのですよ。それゆえ
に、ああいう手の込んだことをしたのです」「そうだ、福次郎。そうでなければ、なぜ俺が、
と言うより新鮮組の俺が関与していると考えるのだ」
 桃の字が言った。
「くそっ、そうか」
 福次郎は思い当たった。
 西日本都市連合は不満分子を集めて一掃することができる。加えて東日本都市連合は優
れた武闘ロボットの一団を手にすることができるのである。それならば、レイガン島は…
「が、東日本都市連合は何のために…」
「武闘ロボット団が必要ということですか…」
「それはボルテックスに対する挑戦、そして地球の統一にあるのだ」 と、桃の字が言っ
た。
「地球の…、何を大仰な」
  鼻で笑う福次郎に、チムニーが冷笑を浴びせる。
「おやおや、君は我々の大帝と徳川公が密約を交わしたことを知らぬらしいですねえ」昨
日の敵は、今日の友なのである。
「日本とゲルマン帝国が、世界を占領するという…」
「が、その話に我々は乗ったのだ…」
「我々…、桃の字、お前もか」
「よろしいですか。我々ERは新しきロボットの指導層として、人間社会に食い込む必要
がある。ましてや、ゲルマン帝国と日本都市連合が地球を平定するとなったときに、我々
ロボットの力を認めさせ、我々だけの領土を保全させることができる」
 キャプテン・チムニーは、にこやかに言うのである。
「お前たち、気が変になっちゃいないか。せっかくの計画を水を注すようだが、そのよう
な計画に乗りはしねえぜ」
 福次郎が騒いでいた。
「待て待て、福次郎くん。これは我々運命七つ星と関わるようだ。ゆっくりキャプテン・
チムニーの話を聞こうではないか」
 早乙女主水がゆっくりとチムニーの方へ向き直った。

ロボザムライ第2部
ロボット死闘人「石狩の福次郎」第3章 復讐
作 飛鳥京香(C)飛鳥京香・山田企画事務所
http://www.yama-kikaku.com/
(第2部完)


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