HANNAのファンタジー気分

HANNAのファンタジー気分

June 5, 2008
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カテゴリ: 映画と原作
ナルニア第2弾
 原作が名作だけにいろいろ違いを気にしだしたら仕方ないので、寛大な気持ちで観るよう心がけました。予告編から想像して、話題のヒーロー、ベン・バーンズ演じるカスピアン中心に物語が展開するらしい、とか、今回も戦闘シーンが多いだろう、とか、自分に言い聞かせて・・・

 で、感想ですが、ベン・バーンズ思ったほど出しゃばってなかったです。超美形だし黙って立っているだけでサマになる感じでしたけど、控えめでした。ペベンシー兄弟が依然としてちゃんと中心に位置していて、カスピアンは(原作通り)戦いではほとんど目立ちませんでした。
 もともと私は原作のカスピアンもそれほど好きではなくて、欠点だらけの王子さまじゃない?と思うのですが(カスピアン・ファンの方ごめんなさい)、ベン・カスピアン君も、頼りなさげでした。立ち姿がちょっと猫背なんですね、彼。そこが魅力的でもあるんだけど、何か現代の優男そのもの。すぐキレそうになるし、かと思うと妙に優しげで、堂々とした高貴な王子とはほど遠い。まあ、テルマール人ですからしょうがないんですけど(ファンの方、またまたごめんなさい)。

 それより、ミラースと決闘するピーターが良かったですね。顔は現代人の下ぶくれ君なのに、がんばっていました。その他の言動も堂々として、さすが一の王。もう一人前の男性ですね。
 原作よりはるかにしっかり者のスーザンも、女性の魅力いっぱい。
 ルーシーとエドマンドは相変わらず演技がうまいし、かわいい。
 ストーリーの構成も、前半、カスピアンと4人兄弟の二本立てで進んでいって、分かりやすく良かったと思います。



 もう一つは、あたりにブドウのつるや実をはびこらせながら踊るバッカスたちが、アスランとルーシーとともに行進する場面。原作では、ベルナの橋を壊すのはバッカスたちなのです;

  野ブドウのふといたくましいつるが橋の足にからみついてのびあがり、みるみる火のようにひろがって、橋の石をもちあげ、こなごなにし、はじけとばしていきました。・・・(中略)・・・水をさんざんはねあげて、大声を立てて笑いながら、このそうぞうしい連中は、浅瀬の川を歩いたり、泳いだり、おどりまわったりして、渡り場を横ぎりました。
            ――C・S・ルイス 『カスピアン王子のつのぶえ』 瀬田貞二訳

 バッカスやバッカイ(バッカスを崇拝する女性たち)、シレノスなどがねり歩き、ブドウを茂らせるこの場面は、古代ギリシャの原始的で神秘的な祝祭(ディオニュソス崇拝者たちがブドウ酒を広めて回ったという)の再現なのです。
 もちろん彼らの騒々しさは酒に酔ったためで、ギリシャ神話では彼らが酒乱の果てに牛を素手で引き裂いたり、人殺しをしたりします。オルフェウス(竪琴の名手)を殺したのもこの人々でした。
 しかし、彼らの荒々しさはまた、文明に対する野性と自由の象徴でもあって、だからルイスはナルニアの解放戦線として彼らを登場させたのでしょう。ルイスの描くバッカスたちは残酷なことはせず、陽気に歌い踊りながら、ベルナの町をミラースの束縛から解放してゆきます。アスランとともに彼らが行くと、町はお祭り騒ぎとなり、(映画では出なかった)カスピアンの老乳母の病もいやされます。このあたり、キリストのエルサレム入城を意識しているのでしょうが、救世主来たる!心も浮き立つ!ハレルヤ!な雰囲気で、私はこれがこの巻のクライマックスだと思っていました。

 映画では、(もう一つのクライマックスである)ピーターとミラースの一騎打ち~裏切り~森の木々の襲撃という血なまぐさい戦い場面ばかりが強調されていたように思います。それに、木々の襲撃は、あの 「ロード・オブ・ザ・リング」 の「二つの塔」に出てきた、エントたちによるアイゼンガルド陥落や角笛城への森の進軍に比べると、どうも二番煎じのようで・・・
 ベルナの町のお祭気分は戦いの後にちょっとだけ、王たちの凱旋という形で描かれます。突然民衆が出てきて、万歳を叫ぶんですが、何だかちょっと変。

 「ロード・オブ・ザ・リング」は大人向けの映画でしょうけど、「ナルニア」は子供も観て良し、というスタンスがあると思うので、それならもう少し戦闘シーンを減らして、心の解放みたいな楽しいシーンを増やしてほしかったです(ディズニーが創っているんだしね)。


 ただ、原作にも別に白いネズミだとは書いていないのです。だから茶色でもいいんです。いいんですけど・・・。
 ネズミたちの動きは、さすがにすばらしい特殊効果で良かったです。しっぽをなくしてアスランと問答する名場面もちゃんと再現されていたし。

 次作はいよいよ「 朝びらき丸 」ですね。ベン・カスピアンは成長を遂げるでしょうか。そしてリープも茶色くてもいいからもっともっと活躍してほしい! いろいろ期待がつのります。










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Last updated  June 5, 2008 11:19:55 PM コメント(4) | コメントを書く


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