HANNAのファンタジー気分

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March 9, 2010
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テーマ: 本日の1冊(3697)

『ハウルの動く城』 の姉妹編、アラビアンナイト風。
 ダイアナ・ウィン・ジョーンズは軽妙洒脱な文章で、テンポもよく、とても面白いのですが、テンポが良すぎて、読んでいて私はちょっともたもたしてしまいます。

 それでもこの物語の場合、最初は主人公である絨毯商アブダラが、謎の旅人から空飛ぶ絨毯を手に入れて王女に恋するという、アラビアンナイトそのもののようなストーリーなので、まだゆっくりと楽しめます。
 ところが、アブダラが国を逃げ出した後は大忙し。盗賊が出た、と思ったらそれは謎の旅人だった、そして正体はジン(精霊)だった・・・というふうに、次々出てくる登場人物のほとんどが別の顔を持っていて、その「見あらわし」の連続に少し疲れます。

 特に最後の方は『動く城』と同様、それまでのオールスターキャストがいっせいに現れ、次から次へと種明かしが続き、ひたすら賑やかでめまぐるしい。まさしく大団円!という感じなのですが、持ち時間があとちょっととでもいうように、やや強引にまとめあげているような気がしてしまうのですね。

 ところでこの物語は、舞台設定や奇想天外な筋書きのほか、美辞麗句を連ねた仰々しいセリフがいかにもアラビアンナイト風で、その長いセリフが出てくるとめまぐるしい展開もちょっと一休みするので、私は気に入りました。

  「おお、ご立派な絨毯殿。色あざやかにして、精巧をきわめ、魔法をいと巧みによりあわせたる絨毯殿・・・」
  「ああ、優美な魅惑のつづれ織り殿・・・愛すべき高貴なるあなた様」

               ――ダイアナ・ウィン・ジョーンズ 『アブダラと空飛ぶ絨毯』 西村醇子訳

 こんなごてごてしたお世辞を言われた絨毯が、気をよくして一生懸命飛んだりするので、いっそう面白いです。最後の種明かしの場面で、この絨毯の性格が、『動く城』に出てきたカルシファーの性格と一緒だったなあ、と気づくのは愉快でした。





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Last updated  March 9, 2010 11:01:11 PM
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