PR

プロフィール

瑠梨☆

瑠梨☆

お気に入りブログ

ブログルポ  小説創… 御堂なかよし&シナモンさん
美しき月の夜に 美月一恵さん
動く重力 k.akasiさん
波と戯れるように … 黄色春色さん

コメント新着

じゅんち336 @ ムリなさらないでくださいね ビックリしました~ やっとつわりのほう…
k.akasi @ Re:急病のため、サイトを一時休止致します。(11/02) ゆっくりとお休みください。 また再開さ…
鈴9063 @ Re:急病のため、サイトを一時休止致します。(11/02) ゆっくりと療養してください。 ストレス…
mk1011 @ Re:急病のため、サイトを一時休止致します。(11/02) 急性胃腸炎ですか。早く治るようにお祈り…

キーワードサーチ

▼キーワード検索

2006/08/20
XML
カテゴリ: 恋愛小説(連載)
【「きっと、二人なら…」を最初から読む】 【目次を見る】

「さ、後ろに乗って?」
「う、うん」
貴子の足を気がけて差し伸べてくれる彼の手を取って、ゆっくりと自転車にまたがる。
「それじゃ掴まっててね」
肩越しに貴子へと笑顔で言うと、亜紀はペダルを踏み込んだ。
走り出す自転車。照りつける陽光は焼けるように厳しかったけれど、髪をなびかせる風は温い割りに心地良く過ぎて行く。
亜紀の白いTシャツの背が真夏の日差しを受けてまぶしく視界に映る。
「どこの病院?」

「そっか。ここからだと結構近いね」
 こうやって亜紀と一緒に自転車に乗っていると、自然と中学・高校時代を思い出させた。
 あの頃、貴子が部活で帰りが遅くなったときなどは、必ずと行って良いくらい亜紀が自転車で家まで送ってくれた。
もちろん家が隣同士だから、単についでと言うだけだったのかもしれないけれど、そんな時 部活で同じ学年の友人達からは
「いいよねぇ、貴子には可愛い彼氏が居て」とよくからかわれたものだった。
そして大学生になった今、またあの頃と同じように亜紀の背を前にして自転車に乗っている。
周りの風景こそ違えど、今のこの状況があの頃と重なり合い、貴子を懐かしいような…切ないような…何とも不思議な気持ちにさせた。
 生温い風を切って交差点を右へと折れた時、横断歩道の向こう側から自転車で行き過ぎる彼等を見ていた者が居た。それは梓の見舞い帰りの純だった。
純はその自転車に乗っていた男女が貴子と亜紀であることにすぐさま気づいたようだったが、まるでそれを自分の中で否定するかのようにさっと目を逸らした。
表情一つ変えない彼の上に、午後の陽光がじりじりと照りつける。車道を行きかう車の熱気と排気ガスが、周囲の気温を一層上昇させた。
信号が青へと変わり、周りに居た数人の人達と同じように彼も横断歩道のストライプへと足を踏み出す。熱を含んだ風が吹いて、彼の茶色の髪をさらりと揺らした。ただ前を向いたまま、周囲の景色など目もくれずに歩む。

--自転車に二人乗りする男女の姿。なびく長い髪。
そう。あれは確かに貴子だった。そして運転していたのは亜紀。
--何故…?
--「桜井君、どうして あんな子のことなんかが好きなのよ!?
あんな…あんな…平気で二股掛けるような子なんかのこと…!」

--違う! 貴子はそんなことできる子じゃない!!
--自転車に二人乗りする男女の姿。風になびく長い髪。
脳裏に焼きついた残像は消えることなく、彼の心を強く揺さぶる。
あの時、確かに彼女は笑っていた。そう。心を許した本当の笑顔で--。
彼もまだ目にしたことのない、穏やかで無邪気な微笑み。
 瞳を見開く。歩道の灰色と深い緑の植え込み、道路沿いの建物とその上に広がる青空が視界一杯に映る。
背中から追い越した生温い風を追うように、彼は歩む速度を上げた。
~To be continued~




 お気に召して頂けたなら、下の拍手ボタンをぽちっと押して頂けますと管理人がめちゃくちゃ喜びます☆
その上ご感想など頂けますと、管理人の明日への活力へと繋がります(*^^*)
拍手コメントへのお返事は、日記にてさせて頂きます。

拍手

ついでに下のもポチっとして頂けますと更に大喜びしちゃいます(^O^)

にほんブログ村 小説ブログへ





お気に入りの記事を「いいね!」で応援しよう

最終更新日  2006/08/20 01:49:28 PM コメントを書く


【毎日開催】
15記事にいいね!で1ポイント
10秒滞在
いいね! -- / --
おめでとうございます!
ミッションを達成しました。
※「ポイントを獲得する」ボタンを押すと広告が表示されます。
x
X

© Rakuten Group, Inc.
X
Design a Mobile Website
スマートフォン版を閲覧 | PC版を閲覧
Share by: