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2006/08/22
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カテゴリ: 恋愛小説(連載)
【「きっと、二人なら…」を最初から読む】 【目次を見る】

 エレベーターが降りてきてドアが開く。エレベーター内から出てきた数人の人達と入れ替わりに貴子と亜紀は中に入った。
ドアが閉まり、フワっとした感覚と共にエレベーターが上昇し始める。途中誰も乗る人が居なかったため、3階へはすぐに到着した。
2人はエレベーターを降りると、ナースステーションを通り過ぎる際看護士達に軽く会釈してから、梓の居る302号室を目指した。
302と書かれたドアの前まで来ると、貴子は一度深く息を吸い込み気持ちを落ち着けてからノックした。
ドアの向こうから「はい、どうぞ」と梓からの返答を聞いた後、ゆっくりとドアを開く。
「こんにちは」
普段彼女と話す時に見せていた笑みを浮かべて貴子が挨拶する。
けれど梓は、貴子の斜め後ろに立っていた亜紀に気づくなり、露骨に表情を険しくさせた。

 亜紀の言葉は「早川君でしょ? 知ってます」との梓からの冷淡な言葉によって遮られた。
冷たい沈黙。
二人に笑みすら見せることなく、梓は目を逸らした。
 貴子の胸がツキリと痛んだ。隣に立つ亜紀を窺うと、彼は梓の冷たい態度にも動じることなく柔和な笑みを湛え続けている。
貴子もなんとかして笑顔を絶やすまいと一生懸命に勤める。けれどやはり彼のようには行かず、どうしてもぎこちない笑顔になってしまう。
「お邪魔しまーす」
 できるかぎり明るい声で言って室内へと入る。けれどそんな彼女の声にも、梓は目を向けようとはしなかった。
 ベッドに座る彼女の肌は、カーテン越しと言っても真夏の強い日差しを受けて透けるように白く貴子の目に映った。
ベッド際のサイドテーブルの上には、ガラス製の花瓶に生けられた赤いカーネーションが同じく強い日差しを浴びて原色の赤を更に鮮やかに見せている。
貴子は自分の抱えていた花束に一瞬だけ視線を落とすと、前に来た見舞い客と同じような花を買ってきてしまったことに対して僅かながら後悔を覚えた。
けれど買ってきてしまった物は仕方ない。貴子は亜紀に支えられながら梓の居るベッドの方まで歩んで行った。

「足…怪我したの?」
先ほど亜紀に対して言った時と同じく冷淡な口調で梓が問うてくる。
貴子は即座に「うん、ちょっと捻挫しちゃって…」と笑顔を崩さぬよう返した。
それから「これ、お見舞いに」と抱えていた赤とピンクのカーネーションの花束を梓へと差し出す。
すると彼女は小さく「ありがとう」と言って受け取り、花束をテーブルの花瓶の横に置いた。

「平気。体力と貧血が回復したら、すぐに退院できるだろうってお医者様からも言われてるから」
「そう。なら安心した」
ほっとして貴子は安堵の笑みを浮かべたけれど、梓がそれに微笑み返してくれることはなかった。
 ツキリ。再び痛む胸。
もしかしたら自分が純と別れたことを、梓は既に気づいているのではないか…。
そんな思いが貴子の脳裏を掠める。
--もしも、もしそうだとしたら…
自分はどうすれば良いのだろう…。自分勝手なエゴで大切な友人を傷つけて、病気にまでさせてしまったのだ。
 再び足元が崩れ去るような不安感に襲われ、貴子は目を閉じる。
けれど梓と亜紀に動揺を悟られぬよう、すぐさま元の笑顔を取り戻した。
そしてしばらくの間、耐え難い重い沈黙は続いた。
~To be continued~




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最終更新日  2006/08/22 11:20:48 PM コメントを書く


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