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2006/09/06
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カテゴリ: 恋愛小説(連載)
【「きっと、二人なら…」を最初から読む】 【目次を見る】

 尚吾の帰った後の病室は、元の冷たい空間へと逆戻りし、一人の寂しさを容赦なく梓へと突きつける。
孤独を紛らわすために、先ほど尚吾が見舞いにと持って来てくれた小説へとテーブルに手を伸ばしかけた時、ノックの音が聞こえた。
「はい」
 伸ばした手はそのままに、ドアの方へと顔を向けて返事する。
「失礼します」
その声と共にドアが開かれ、若い看護士が部屋に入ってくる。彼女が押してきたワゴンの上にある点滴セットで、これから点滴なのだと悟った梓は、内心で あぁ、またかと苦笑する。
看護士はベッドサイドまで歩み寄ると
「それじゃ、点滴しますね」と明るい笑顔で言って準備を始めた。

おそらく自分よりは年上なのだろうが、その愛らしい笑顔や髪型、そして仕草などを見ていると、何だか年下のように思えてしまう。
 点滴の針を刺す時、梓の腕を見て
「白くて細いですね。羨ましい」と言って彼女は微笑んだ。
 左手の甲にちくっと言う痛みが走り、静脈に針が入れられる。看護士は針が動かないようバンソウコウで固定し終えると、
「いつもとおんなじで一時間ほどで終わりますから」と言いながら、梓と目を合わせた。
「はい、ありがとうございました」
 そう笑顔で言う梓の顔を看護士はまるで眩しいものでも見るかのように目を細めて見つめると
「今宮さん、本当に綺麗ですよねぇ。若い先生方の間でも大人気なんですよ」と無邪気な笑顔を浮かべた。
いきなりそんなことを言われ、照れくさいような気恥ずかしいような気持ちになり
「そんな綺麗だなんて…こんな骸骨みたいに痩せちゃってるのに」と返して梓ははにかんで笑った。
「明日、診察の時に退院のお話が出るんじゃないかと思います。良かったですね。大分元気になられて」

「退院したら、もっとたくさん美味しい物食べてくださいね。いかんせん、ここの料理はあんまし…」
語尾を少し小さめの声で言って看護士がクスクスと笑う。彼女に釣られて梓も瞳を細めて笑った。
 看護士が出て行ってしまうと、室内に再びの静寂が訪れる。
何気なく、点滴の針の刺さった左手に目を落とした。針の固定のために貼られた何枚もの白いバンソウコウが痛々しい。
けれど点滴の針の痛みより、心の方がもっとずっと痛かった。

何本もの注射針を打たれるよりも、届かぬ想いを抱え続けることの方が余程…痛い。
一人になるとそれは余計に鋭さを増し、想いを押し留めようとする心を何度も、何度も傷つける。
--痛い…!
 ぽつり、ぽつりと梓のパジャマの膝を濃くする水滴。
あぁ、私ったらまた泣いてる。
 切なさで歪んだ顔に自嘲の笑みを浮かべると、彼女は顔を上げて右手で目元を拭った。そして想いを断ち切るようにベッドから立ち上がると、点滴スタンドを押して病室を後にした。
~To be continued~




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最終更新日  2006/09/06 10:03:40 PM コメントを書く


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