7TH WONDER(SEVENTH WONDER) / PEOPLE IN LOVE LP(PARACHUTE 9004)'78
U.S.BDG #173で「第7の不思議」というヴォーカル&インスト・グループの78年の1STアルバム「Words Don't Say Enough」収録曲。南部のアラバマ出身というだけあって、どこかのんびりとした牧歌的な雰囲気が漂っています。おどけた調子のホーンから始まるこの曲は、気負いや気取ったところを感じさせず自然体な姿勢に好感が持てますね。そんな軽快で小気味いいトラックに載せてハイテナー・リードにファルセット・コーラスが楽しそうに歌います。更に「ラララー」というフレーズが爽やかこの上なく、柑橘系の甘酸っぱさを感じさせるのです。この明るく快活なメロディに瑞々しいボーカルワークというのは「PRESIDENTS」に通じる新鮮さを感じさせますネ。70年代ソウルにはちょっと珍しいタイプのフレッシュさと軽やかさを兼ね揃えたこの曲は、フリーソウル・ファンにも受け入れ易そう。
SMITH CONNECTIONの前身グループで甘茶ソウル百科事典掲載曲(P.44)。スミス・コネクションはアルバムも残せた程の実力派だけど、その甘茶センスは抜群で突出したものがありましたね。このスミス・ブラザーズも同様でやっぱり流石のスウィート・センスだなと感心させられます。パステル・カラーを感じさせるような繊細で淡い色彩が目に浮かびそうな素敵な曲。特にサビ部分の絶妙なハモリ具合が素晴らしい。囁くような甘く柔らかな唱法に、個々の声質も味わい深く魅力的。スミス・コネクション時代ほど垢抜けていないところがまたマニア心を擽りますねえ。
SMITH BROTHERS / LET ME TAKE CARE OF YOUR HEART (SHIELD RECORDS 6102)'76
傑作甘茶ソウルLP「UNDER MY WINGS」を残したSMITH CONNECTIONの変名グループ。彼等の卓越した甘茶センスはここでも健在。甘く品の良いサウンドに乗って、ファルセット・コーラスも大甘に、華やかに曲を飾り立てます。この曲で聴けるセンス抜群のコーラス・アレンジは甘茶ソウル史上最も素晴らしいものと言っても過言ではないでしょう。特に「フゥウウゥー」とコーラスがグググッと盛り上がっていく瞬間の甘さ加減といったらないネ。
SMITH CONNECTION / THE DAY YOU LEAVE LP(MUSIC MERCHANT 105)'72
デトロイトのスミス兄弟の72年のデビューアルバム「UNDER MY WINGS」収録曲。このアルバムは他にも多数の優良甘茶ソウルが収録されている歴史的名盤ですね。爽やかな甘茶、甘酸っぱい甘茶、明るく肯定感のある甘茶等など様々なタイプがありますが、アルバム冒頭を飾るこの曲は少し暗めの曲調。お洒落で洗練された雰囲気のピアノに続き、情緒的かつ神秘的なシタールの甘い音色が響き渡るイントロがなんとも素晴らしい。悲し気なリードに厚めのコーラスがサポート。甘酸っぱくも胸にキュンとくるメロディが秀逸でサビもなかなかキャッチーです。全体を通して入るシタールも効果的だけど、もう少しピアノも絡んで欲しかったかな。
SMOKEY ROBINSON / BABY COME CLOSE (TAMLA 54239)'73
73年のソロアルバム「SMOKEY (TAMLA 328)」収録。SMOKEY ROBINSONと言えばMIRACLES時代の「OOH BABY BABY」が甘茶ソウル百科事典にも大きく取り上げられ、言わば代表曲のようになっているけど、個人的には大味で飽き易くあまり評価は高くない。然しながら「BEING WITH YOU」,「QUIET STORM」,「WE'VE GONE TOO FAR TO END IT NOW」,「THE AGONY AND THE ECSTASY」,「DAYLIGHT AND DARKNESS」など他にも多くの甘茶良曲が有り偉大な歌手であることは間違いない。
ソウルというかブラックミュージック界の大御所、スモーキーロビンソンの82年のアルバム「YES IT'S YOU LADY」収録曲。スモーキーについては、 YES IT'S YOU LADY
と BABY COME CLOSE
を取り上げ済みですが、他にも多くの優良スウィートを残している甘茶界の偉人でもあります。本曲は幻想的な曲調にまるで子守歌のようにソフトに歌われるのが特徴的な甘茶ソウル。 メリーゴーラウンドにはずれ無し
でもコメントしましたが、この曲も数多くあるMERRY-GO系のソウル名曲と言えるでしょう。そもそもMERRY-GO-ROUND(回転木馬)は「楽しく回ろう」という意味らしいですが、そうなるとここでのMERRY-GO-RIDE OF LOVEというのは、「素敵な愛の乗り物」ぐらいの意味あいになりますかね。まあ、歌詞は他愛のないものですが、幻想的で淡く静かなサウンドに甘くクド過ぎないメロディ、スモーキーの甘く優しい歌声の織り成す本曲はリラックスするBGMに最適という感じ。メイクラブのお供や就寝前の子守歌なんかに適しているのではないでしょうか。シングルカットもされず山下達郎SSBでも未ということで、スウィートソウルファンにもあまり知られていない隠れた名曲と言えるでしょう。
SMOKEY ROBINSON / YES IT'S YOU LADY LP(TAMLA 6001)'82
60年代初頭のミラクルズ時代から大活躍していたモータウンを代表するアーチストの一人。ポピュラーヒットだけでなく多くのスウィートソウル良曲も発表していて、当ブログでは既に73年の 「BABY COME CLOSE」
を取り上げています。そういえば江口寿史の単行本「THIS IS ROCK」にスモーキーのコンサートに行ったら「渋谷陽一が立ち上がってノリまくっていた」という話が載っていたことを思い出しました。ソウルの、というよりポピュラー・ミュージックのファンにも大人気のアーチストという感じですね。
TEDDY PENDERGRASS / YOU'RE MY LATEST, MY GREATEST INSPIRATION LP(PHILADELPHIA INTERNATIONAL 37491)'81
Harold Melvin and The Blue Notesのリード歌手、テディ・ペンダーグラスのソロアルバム「IT'S TIME FOR LOVE」収録曲。ギャンブル=ハフ製作で将にフィリーソウルの王道バラードといった感じですね。所謂ファルセットではないので比較的馴染みやすいかも。一種神聖的な雰囲気さえ漂う曲調で、バックのサウンドも静かで淡白ですが、逆に極限まで洗練された大人のサウンドだなと感じます。メロディもなだらかで美しいですねえ。そして単にそれだけでは終わらないのがこの曲の素晴らしい所で、後半はどんどん盛り上がっていきます。テディペンのスケールの大きな円熟した歌いまわし、それを盛り立てる「HIGHER,HIGHER」というコーラス。最後に感極まってファルセットになっちゃうところなんて実に感動的です。
この曲は2006年にR&BシンガーのGlenn Jonesがカバーしたことでも話題になりました。細めのファルセットで情感たっぷりに歌われる甘茶ソウル。流石にメジャーな歌手にカバーされるだけあって、メロディもなかなかキャッチーです。逆に言えばその分「HE DON'T LOVE YOU LIKE I DO」で聴けたギリギリ感が希薄になっているのもまた事実かな。
CDのジャケを見るとこのTOKEN皿の写真とともに、甘茶ソウル百科事典P.43「私の甘茶自慢」での高沢仁氏の自慢皿「THE TOPICS WANTED LIVE! BY A MILLION GIRLS (NCS 601)」のジャケも出ている事や曲のタイトルも似ていることからおそらく両者は同一グループと思われます。なお、日本盤も出たTSGのトピックスとは別グループのようです。
その後分かったことですが、 SHOWER ME WITH MUSIC
さんによると彼等のアルバム「WANTED LIVE!」には、この曲以外にスロウは2曲収録されていて、どちらもこの曲のようなファルセット主体ではなく、「それなりに良い出来」、「甘茶好きな方からすると物足りない内容かもしれない」そうです。
TOUCH OF CLASS / GOD BLESS ME (MIDLAND INTERNATIONAL MB-10545)'76
70年代後半中心に活躍したフィラデルフィアの4~3人組コーラスグループ、タッチオブクラスのアルバム未収録のシングルB面曲。(A面は「Don't Want No Other Lover」)意外なことにU.S.BDG、甘茶ソウル百科事典共に記載は無いけど、しっかりとしたアルバムを3枚残している中堅グループ。プロデュースとアレンジはJOHN DAVISで恐らく1STアルバムと同じ製作陣による作品だろうけど何故かアルバムには未収録。そういった訳で埋没ぎみなので甘茶ファンにはしっかり押さえて欲しいところです。
追記:その後、2015年11月15日のSSBにおいて「LOVELY DAY / BILL WITHERS '77」がオンエアされた際に「私の大好きなリズム・パターン。こういうのかけると『ああ、これまたパクってる』とかそういうこと言う人が、あげつらう人がいますが、因みにカーティス・メイフィールドのトリッピング・アウトは80年の作品ですから、トリッピング・アウトはこれをパクってるんでしょうかね?」との発言がありました。