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本の内容は、落語作家のくまざわあかね氏が、大阪市内で昭和10年頃に使われていたであろうものに囲まれて生活して その折に綴った日記という形になっています。
自分が描く落語の世界を実感として掴みたいと 落語に描かれた文化風俗が残り 且つ実際に過ごした人から話が聞ける と言うことで昭和10年を選び、その頃の不便を経験しようと決めるところから始まります。
博物館や企業の広報などあちこちで情報を集めながら 家探し、道具探し、着物集めを開始します。
そこに登場する小道具の懐かしいこと。
火鉢、かんてき(大阪では七輪のことをこう呼びます)、鰹節削り。
本の中で著者の家を訪ねた人たちが こういった道具類に接し、自分の思い出を"当時が如何に不便であったかを喜々として語る"のですが、私にも鮮やかによみがえった思い出があります。
当時も今も我が家から歩いて5分の祖母の家(今はもう祖母はいませんが)に 緑色の火鉢がありました。私は小学生だったと思いますが ちょうどその頃発売されたアロンアルファを試してみたくて試してみたくて、とうとう右手の人差し指に一滴垂らして その火鉢の縁に押しつけました。
不易糊 くらいしか知らなかった子供にとってそれはまさに看板に偽り無しの驚異の接着力でした。
スゴいなぁ~、全然動けへんやんと感心しばし。しかしその興奮が冷めてしまいますと、そこに残ったのは火鉢に人差し指がくっついて離れない己の姿だけです。
何とか剥がれないかと引っ張ってみましたが開きません。
見つかる前に何とかせんとやばいと、えいっと引っ張ると火鉢の塗りが剥がれて人差し指の腹に付いてきました。(^_^;
あの火鉢の色、釉薬の艶、そこにぽっかりと私の指の大きさに開いた地の見える穴。
三十数年前のそんな小さな出来事をありありと蘇らせてくれるそんな本でした。(笑)