空 くう

空 くう

白い雪と 紅い花



白い雪と 紅い花



雪の花咲く寒い夜
君は"彼"との
恋に疲れて
僕の腕の中
朝まで泣いた

そうして風が
ぬるむ頃から
僕の部屋で
暮らし始めた

毎年 雪が
降り始めると
君は頬染め
庭に駆け出し
子供のように
はしゃぐんだ

鏡ごし見る横顔
少し 寂しげで
細い小指で
そっとさす紅
白い肌に映え

その何もかもが
愛しくて

今年初めての
雪の夜
まだ柔らかい
新雪の上
足跡と髪の
香りだけ残して
さよならも言わず
君は消えた

その後
"彼"が重い病と
雁の便りに
聞いた時
僕は自分が
はがゆいだけで
君の涙に
気付きもせずに

朝日に光る雪と
一緒に
君への想いも
溶けてしまえ

ふと見上げると
山茶花
君が一番好きな花

雪の重みに耐え
かねて
咲いたばかりの
紅い花が
音もたてずに
ぽとりと落ちた


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