逆襲のtransit

逆襲のtransit

2011/09/09
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淀川製作所をスタートした9日から大阪府内のスポンサー様をめぐりながら毎日の充電先がみっちり確保されていた12日までの旅と違って、県境である淀川以西に約束された充電先は一つだって無かったのだ。

無論それは、はじめから分かっていた。

分かっていながら実際に対峙してみるその状況は、想像を遥かに越えた孤独と確かな絶望感に包まれていた。


(充電しながらの旅なんて、無理なんじゃないのか?)

(一日30kmで700kmは、無謀だったんじゃないのか?)

(もう神戸の船着場からフェリーで九州へ渡ってしまおうか?)

暮れなずむ神戸の街にMeguruちゃんを引っ張り歩く時速3kmの風景の流れに重なって、俺の脳裏にはそんな弱気が次々と思い掠めていた。
Meguruちゃんの電池が完全に切れた芦屋からの10kmは、恐らく俺の生涯で最も長い煩悶の10kmであった。

そんな俺に救いの手を差し伸べてくれたのが、神戸の自動車整備工場『パシフィックモータース』さんだった。
突然やってきた何処の馬の骨ともつかぬ大男の車に充電をして、その上一日軒先に泊めるという

「へー」

と聞き流せば何でもないが、自分が当事者だったら間違いなく狼狽えるであろう提案を、野田社長は驚くべき包容力でニコリと丸呑みにしてくれたのだ。
同時にそれはこの旅に、一つの正確を得た瞬間でもあった。

~人情充電~

一日進むだけ進み、電池が切れたら現地で充電をしてくれる場所を探す。この時俺は、この旅を続ける上で最も重要な方法を、絶望の淵から拾い上げたのである。
実際のところ宿泊充電交渉というのは断られて当たり前、了解はむしろ大ラッキーだ。
しかし、至極当然の事ながら俺は、断る人が悪いなんて、これっぽっちも思っていない。こればかりはタイミングや先方の都合もあるし、世間一般の常識ではそれが極めて普通の対応だ。
俺が言いたいのは単に、この突発的状況を

「断らない人が圧倒的に凄い」


思い返せば電圧、体力共にへっとへとの俺やMeguruちゃんを笑って受け入れてくださった方々はちょっと『普通』では測り切れないエネルギッシュさがあった。そして俺はその根底に何時も小倉社長のチャレンジスピリッツに通ずる熱脈を目頭に熱く感じていた。
以後俺はこの成功体験を武器に、毎日のように突撃宿泊充電を繰り返し、当初想定700kmを大きく上回る1000kmの道のりを、一度だって電池を切らさずに走り抜く事に成功する。

それは取りも直さず、日本の優しさの証明だ。

四ヶ月ぶりとなるパシフィックモータースさんの朝礼に懐かしく参加させてもらいながら、俺は四ヶ月前の今日から始まった激闘の日々と、そんな不器用な格闘を道端で続々と助けてくれた人々の優しい笑顔を振り返って、一人泣いていた。



大阪までの青看板は30kmをいよいよ切ろうとしていた。しかし肝心のゴールまではあと四日もある、これじゃ一日10kmも進めやしない。しかもパシフィックモータースさんのある神戸から10km先には明日の中継予定点となる芦屋があるため、今日はその二点間のいずれかに着地をしなければならないのだ。

ただ

「二点間のいずれか」

と言うのは簡単だが、先日の日記に詳しいとおり体ごと一晩車を停めれる場所なんてそうそうありはしない。
俺はiPad地図を拡大したり縮小したりしながら目を皿のようにしてMeguruちゃんで車中泊できそうなポイントを探した。すると俺がバイク旅でよく利用していた北九州航路のある六甲アイランド入り口に、トラッカー相手のコンビニを発見した。
ここがOKなら芦屋へ通り道ということもあり、バッテリーも無駄にしない。
ただ絶好の位置取を発見した事と、Meguruちゃんを一晩泊めてもらえるかどうかと言うのは、これまた別の問題であった。



一日の移動距離が5kmと言う事もあり、目的地付近まではあっという間に到着してしまった。しかしあまり早く到着してしまうのは迷惑だ。俺は幅員の広い産業道路に自然発生的に出現した路上パーキングで時間を稼ぎ、雲霞の如く押し寄せる蚊の大群を殺虫剤の水平噴射と蚊取り線香で撃退しつつ、空腹を差し入れのおつまみピーナッツとお茶のペットボトルで慰めながら夕暮れ時を待つ事とした。
そして夕刻、いつもの様に両ホッペをバシバシ叩くセレモニーで臨んだこの旅最後となるであろう宿泊交渉は、駐車場のように広い肝っ玉オーナーの心意気で、やはり一発OKだったのである。



夜は宴会となった。
このチャリティーツアーのプロジェクトパートナーである株式会社サヨカの平田社長が、レトロカー愛好家である松岡さんと、コンビニの駐車場まで俺を迎えにきてくださったのだ。
向かった先は鳥手羽のチューリップが劇的に美味かった串カツの名店『ふなこし』。
テレビ大阪の北岸ディレクターもゲスト参戦したこの宴席には、実に驚くべきサプライズが待っていた。
ここまでの旅の無事を労い、平田社長がご褒美をくれるというのだ。
労うもひったくれもこちとら好きでやっているのだから申し訳けなきことしきりであるが、平田社長は口をパクパクして遠慮する俺を尻目に

「スポーツのメダルには金もれば銀もあり銅もある、でも中林くんは一人で戦ってきたので金メダルです」

そんな事を言いながら、平田社長はバッグから一枚のメモを取り出した。そしてシャープペンシルで

『金メダル』

と大書するのだ。俺はてっきりそのメモをいただけるのだなと思い、そのメモに自分で紐でも通せば、それはそれで大層嬉しかったのだが、平田社長の話にはまだ続きがあった。

「でもまぁ一人で戦ってきたのだから、銀と銅は無いので、金メダルは意味がない・・・それに中林君にはいろいろと、抜けた行動もありましたね。だからこのメダルからも、一本線を抜きましょう」

と笑って、平田社長はシャーペンで書いた『金メダル』の『ダ』から消しゴムで一本線を消してなんと『金メグル』にしてしまった。

そして改めてバッグから金色に光り輝くMeguruペンダントを取り出すと

「四ヶ月間お疲れさん」

と、俺に差し出したのだ。万事に渡って繊細な気配りの平田社長らしい、何とも憎い演出ではないか。



思えば様々な困難が襲った道中であった

峠道に配線が溶け、モーターが焼けついた

動かなくなったMeguruちゃんを一日中引っ張って歩き

曲がったフロントシャフトではブレーキもかけることができず

バッテリーも死にかけた

そして毎日の終わりに約束された充電ポイントなんか無かった

それらの困難に負けてこの旅を途中で投げ出していたら

俺はこの金Meguruを手にする事はなかっただろう

18金だというMeguruペンダントは

俺の生涯に燦然と輝く、最高の勲章だ


すっかり忘れていたけど、今日は9月9日だ


運命の5月9日、数々の不安要素に目を瞑る思いで


淀川製作所を飛び出したあの日から



ちょうど四ヶ月が、経過していた






八十六日目スタート/08時30分/2377.6km
サンクス神戸住吉浜店到着/17時30分/2377.6km

今日の充電回数0回
充電回数総計131回

今日の走行距離5.0km(自動牽引ー.ーkm/自力牽ー.ーkm)
走行距離合計2385.6m(自動牽引72.1km/自力牽引154.4km)



本日の支出

合計・・・・・・・・・・・・0円


支出合計・・・・・143121円

残高・・・・・・・・・・375円



■本日のグッズ販売
Meguruペンダント@0=・・・・0円

本日までのグッズ販売益・・・・0円
グッズ売り上げ合計・・25000円

本日のグッズ募金・・・・・・・0円
本日の宿泊募金・・・・・・100円
本日の充電募金・・・・・・100円
本日の缶コーヒー募金・・・・・0円
本日の串カツ募金・・・・・・・0円
本日の俺募金・・・・・・・・・0円
本日の募金合計・・・・・・200円


募金合計・・・・・・189883円
未募金額・・・・・・・・1200円
募金総額・・・・・・191083円






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Last updated  2011/09/14 12:26:49 PM
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