旅先の食堂で、また言い合いがはじまった。
注文した料理にパイナップルがはいっていないことについて、
一方的にタイミルが、
「それはおかずじゃない。」
と言い放ったことにカチンときたクロッテスが、
「好きなんだからほっといてよ!」
とヘソをまげたのだ。
いきおいで、前回手に入れたクルスの文句をつける。
「あんた、あの首飾り、
ネコババするつもりだったんじゃないでしょうね?」
うっかり報告するのを忘れただけだ。
牡羊座のクルスは霧の森の中で、
木にひっかかっているのを見つけた。
現在所持しているのは、ちょうど三つづつ。
目標の12個まであと半分だ。
「人の背中で熟睡しといて、いい気なもんだぜ。」
ため息まじりにぼそりと言われたことが、
なんだか馬鹿にされているように感じて、
「なによ、ロリコン!」
テスの攻撃。
まだそんなこと言ってるのかと思わずタイミルも、
「なんだ!酢豚定食!」
思わず声を荒げてしまい、ふと我にかえる。
(まったく、なんでこんなやつに・・・。)
してしまったというんだろう、キスを。
本来、自分の理想はもっと、
穏やかで、おしとやかな女性だったはずなのに・・・。
「タイミル様。」
まだ皆が眠っているであろう早朝、
馬にまたがったままでタイミルは、
外からレナ姫の部屋の窓をたたいた。
おそらく夜通し彼をまっていたのであろう、
隣国からやってきたその姫は、少し眠そうな顔をして、
それでも彼の顔を見ると安心したようだった。
「すまなかった、待ってくれていたんだろ?」
穏やかでおしとやかな姫は、頷いてから寂しげに微笑んでいる。
「姫、国へ帰られよ。」
動く馬を、タズナを引いて落ち着かせながら、
一秒も見逃すまいと、
美しくたたずむ彼女の姿を目にやきつけていた。
「”好っきゃないのに、結婚してもしゃーないやんか?
あいつと一緒に幸せになりぃな。”」
タイミルの国の言葉は、姫には理解できないとは知りつつも、
彼の精一杯の気持ち。
あとのことは彼女の侍女に説明してあるので、
うまくやってくれるだろう。
「お待ちください。」
去ろうとしたタイミルに声をかけてから、
「これを・・・。」
姫は自分の首にかけていた牡牛座のクルスを、
彼の首にかけなおしてくれた。
「ありがとう。」
思わずその華奢な体を抱きしめてしまいそうになったが、
なんとか堪える。姫が好きなのは自分じゃないのだ。
罪作りで綺麗な顔は、
そのまま彼の頬に口付けをしてくれてから、
「お気をつけて。」
と微笑んだ。
全然たちなおれる気がしない、
王子という立場をもってしてもかなわなった恋。
もうなにもいらないとなげやりな気持ちになってしまう。
レナ姫の侍女マーシャはそんなタイミルに、
自分が姫だったなら絶対に、
恋をしていると言ってくれていたけれど。
「サラン!サラン!おやじを呼んでくれ!」
馬でかけながら、バルコニーのある広場までやってきたタイは、
親父の召使にそういった。
国王のくせにだらしないパジャマ姿で大きな枕をひきずって、
「こんなに早よぉからなんや、タイミル。」
目元をこすりながら高台に親父が登場したので、
「親父殿に申し上げる!」
わざとぶっきらぼうに大声でいいはなった。
「俺は自力で花嫁をさがしてくる。
レナ姫を国へもどされよ!」
「な、なに言うてんねん、式はもう明日やで?」
ぎりぎりまでそばにいたかったのだ、親父、許せ。
彼は背にかついでいた弓をとりだすと、
内側のロープに矢を射って、吊橋式の門をあけた。
ふりきるように駆け出す、
「ちょっとサラン!早よ門しめて!」
さらば我が国よ。
今は口実でしかないけれど、
この世界のどこかに、本当に俺の花嫁がいたら、
その時は帰ろう。妻を連れてこの国へ。
こんなに愛してる姫のこと、忘れられる日が来るのなら。
taurus-結接蘭・破接蘭-
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