葵屋まろん道 ~本通り~

葵屋まろん道 ~本通り~

☆☆



彼は、そこから何も変わっていないのかもしれない。
弱い自分を守る鎧を手に入れただけで、その内側で息を潜めている姿は
あの頃のままなのかもしれない。

13年前。

『裏切り』という言葉は、被害者ぶっていてあまり好きではない。
原因があって結果がある。たとえ裏切られたように感じても、
そこにはきっと、ちゃんとした理由があるのだ。

だけれど、当時の彼は若すぎた。
そんなことに気付かず、ただただ心を痛めることしかできなかった。
あまりにも信頼しすぎていた。あまりにも心を開きすぎていた相手だった。

それからの彼は、変わってしまった。
誰にも心を開かず、誰にも自分を見せることはなかった。
本当の友人なんて、できるはずもなかった。

誰かを求める感覚と、近付けばまたいなくなってしまうのではないかという感覚。
2つの心がいつも戦っていた。
いや、あれから10年以上の月日が流れた今でも…。彼はそこにいる。
過去に見た、たった一度の裏切りが…彼の歩みを止めている。

硬い、硬い。どんなものにも打ち破られない鎧を纏った。
彼にとって、大人になるとはそういうことだった。
本当の弱い自分。それを見せずに一定の距離を保つことで
泣き虫な心を守っていた。

だけど…だけど…
あなたの心の奥底からの言葉は、17の自分を目覚めさせてしまう。
どんなに硬い鎧に身を固めても、それは直接心に語りかけてくるから。

大事な人にはいつも傍にいて欲しくて。不安で…怖くて。
言いたい。でも言えなかった言葉。
堰を切ったように、溢れ出すかもしれない。

もしあなたがいつか、そんな彼に出会ったら。
そのときはどうか、彼の心を抱きしめてあげてください。
そして…笑顔でいてあげてください。

それだけで、彼は歩いていけるはずです。

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