醤油ラーメンとカツ丼

醤油ラーメンとカツ丼

2009.01.11
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カテゴリ: 雑記帖
昨年12月27日に 「燃やされた手紙」 といふのを書きました。

手紙以外にも自分の原稿などを燃やした、或は処分した人、といふのが
ゐるなあとおもひました。


谷川士清は死の前年草稿類を土中に埋めて塚を建てた。
これを反古塚といふ。


ゴーゴリは『ガンツ・キューヘリガルテン』の酷評を受け、
本を回収、焼却した。


ゴーゴリは『死せる魂』の第二部を焼いた。



森鴎外は『一夜』を焼き捨てた。


北村透谷は自費出版した『楚囚の詩』を回収し廃棄した。


ドストエフスキーは『罪と罰』を途中まで書いたところで
焼いて書き直した。


ドストエフスキーは1871年国外旅行から帰国する際、
『白痴』『永遠の夫』『悪霊』の原稿を妻に燃やさせた。
ロシア国境で没収されることをおそれて。


夏目漱石は二十三四の時に書いた小説十五六枚を
「馬鹿気てまづいもの」で「あまり恥かしいから」処分した。
(明治39年2月15日森田草平宛て書簡より)

内田百間は漱石の書斎に書き潰しの原稿が積み重ねてあるのを



谷崎潤一郎は秘書の末永泉に『細雪』の書き損じ原稿を渡し燃やさせた。
末永は風呂の竈で燃やしたといふ。
末永泉『谷崎潤一郎先生覚え書き』にあるはなし。


北條民雄は川端康成に送り返された原稿を破棄した。


吉村昭は『桜田門外ノ変』を二度廃棄した。

エッセイ『ひとり旅』に書いてある。


上田秋成は原稿を井戸に捨てた。
これはあとで誰かが拾ひだしてゐる。
現存する原稿に水で濡れた跡がある。


大江匡房は死ぬ前に日記(『江記』)を焼いた。


トルストイの妻ソフィア夫人は夫の日記を焼いてしまひたい、と
日記に書いた。
(焼かれずに済みましたが)


『風と共に去りぬ』のマーガレット・ミッチェル。
夫のジョンは彼女の遺志によってすべての原稿、日記などを
アパートの裏庭で焼いた。

一方、
樋口一葉の二つ年下の妹邦子は姉の遺言に反して、日記
草稿、全て姉の書き残したものを大切に保管した。
(一葉の日記のことは昨年 12月27日 にすこし書いた。)


カフカは死に際して友人のマックス・ブロートに自作の
一切を焼き捨ててくれるやうに頼んだ。
ブロートはこの遺言を守らず彼の書いた物を残した。


夏目漱石は正岡子規の『七草集』に付けた自分の漢詩は
「餘り大人気なく小児の手習」だといつて「一刀両断に切り棄てゝ」
くれるやうに頼んだ。
が、これは残つてゐる。

ちなみにこれは「漱石」と書いた最初の手紙に出てくるはなし。
(明治22年5月27日正岡子規宛書簡)


寺田寅彦は漱石から高等学校時代にもらつた手紙をみんな
燃やしてしまつた。
中谷宇吉郎の聞いたはなし。


江戸川乱歩は自分が書いた手紙の写しをとつて保存してゐたが
晩年になつて焼いた。


石原吉郎はシベリア抑留中につけてゐたノートをシカトール(左官)
として働いてゐた建築現場の建物の壁に塗り込め、後は焼却した。
日本に持ち帰れなかつたため。


プロ野球の野村克也監督は大学ノートにして50冊分もの
「野村メモ」をつけてゐた。
しかし南海の監督解任の際に、すべて燃やした。


太宰治の『東京八景』にはこんな描写がある。

「そのとしの晩秋に、私は、どうやら書き上げた。二十数篇の中、
 十四篇だけを選び出し、あとの作品は、書き損じの原稿と共に
 焼き捨てた。行李一杯ぶんは充分にあった。庭に持ち出して、
 きれいに燃やした。」

これは実際には焼いてないらしいですね。

同じく太宰の『乞食学生』は原稿をポストに投函する場面から始まるが、

「その下手くその作品を破り捨て、飄然どこか山の中にでも雲隠れ
 したいものだ、と思うのである。」
と書く。

太宰は実際にはやつてないけどさういふ衝動にかられる時が
あつたのかもしれない。


浅田次郎は司馬遼太郎の『韃靼疾風録』を読んで清代を描いた
自分の作品を燃やしてしまひたい衝動に襲はれたといふ。
『蒼穹の昴』のことだらう。



以下ご存じの方はご一報を。

永井荷風にも原稿を燃やした(或は処分した)はなしがあつた
と記憶するのですがいまちよつと見つかりません。

謡曲「鉢の木」と同じパターンの話で、薪の代りに紙(歌稿?)
を燃やして客人をもてなす話があつたと思ふのですが何の本に
あつたか思ひ出せません。







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Last updated  2009.01.11 19:25:39コメント(0) | コメントを書く
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